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次の日の夜、秋人をバーに呼び出した。
あいつに声をかけられて始まった恋。同じ場所で終わらしてやる。
「秋人。俺と別れて。好きな男ができたんだ」
虚しい嘘。
俺から別れの言葉を伝えた。
「そうか。分かった……」
ほっとしたような顔の秋人に胸が痛む。
黙ったまま席を立つ。
それだけ。他には何も言わなかった。
「荷物は処分しといてくれ」
秋人の浮気について一言も責めなかった。
泣いたり騒いだりせず、淡々と伝える。
「今までありがとう」
手が震えてしまいそうになり、力を入れる。
合鍵を返し、背を向けた。
「……う……っ……」
店を出て、急ぎ歩きで路地に入る。
手で目を覆い声を殺した。流れ落ちた涙を拭って唇を噛む。
隠れて一人で泣いた。幸せだった頃を思い出しながら。
――――お前が好きだった。
一晩限りにするはずだったのに、その日の夜、男が家に来た。
「お前の体が気に入ったんだ」
ズカズカと家に入り込んでくる。
「正直、うんざりしてて。恋愛は面倒だからセフレを作るけど、すぐに相手が本気になる。その点、お前は泣く程、彼氏が大好きで絶対に俺の事を好きにならないから都合がいい」
本当に最低。そういう事、平気で言うなんて……
「セフレはいらん。一晩限りで十分。俺には、お前との関係を続ける利点がない」
俺も面倒事はごめんだ。
あっさりと断る。
「…………彼氏とレスだったんだろ? 中、キツかった」
耳元で囁かれてゾワッとする。
「次はお前の好きなように抱いてやるよ。優しくしてやろうか……?」
確かに上手かったし、体は満たされた。
『セフレ』か。少しだけなら……
俺もこいつを利用してやろう。
秋人を忘れるまで。
ちゃんと過去にできるまで……
バーで会う度、ホテルか俺の家に直行した。
「豹牙。会いたかった……」
それらしく言ってみせる。
「ふん。『ヤりたかった』の間違いだろ?」
楽しそうに豹牙が返す。
――――その逢瀬は嘘から始まった。
秋人を思い出して泣きたくなる夜。不意に寂しくなった時は豹牙に電話した。
「豹牙。ムシャクシャするから抱いてくれ」
『お前、朝から色気ねぇな』
「そんなもん、必要ない」
『まぁ、いいぜ。今から行くよ』
最初は夜だけだったけど、時間も都合もお構いなしに呼び出しをかける。
豹牙は我儘を聞くのが割と上手くて、俺の誘いはほとんど断らなかった。
ある日、指定された場所は高そうなマンション。
「お前の家は壁が薄すぎて、気が散るんだ」
セフレになって二ヶ月経った頃、奴の自宅へ初めて入った。
豹牙は性欲の強い男だ。
キッチンでも風呂でも盛ってくる。
でも、求められるのは悪くない。
自分にも価値があるような気がして……
最低絶倫男は思った以上に優しかった。
独りよがりなセックスじゃなくて、俺自身も必ず良くしてくれる。
一晩で三回も四回もヤるのは問題だけど、落ちたらシャワーにも連れて行ってくれるし、朝食も作ってある。
終わった後は……抱きしめられる。
最近、奴からの呼び出しも増えてきた。
抱かれる度に、心の隙間が埋まるような妙な気持ちになる。
豹牙は最初から言っていた。
『恋人はいらない』と。
…………そろそろ、やめなきゃ。
秋人の時みたいに本気になってからじゃ、手遅れになる。
俺はもう恋愛なんて……
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