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その日の夜、奈美夜は自分の部屋に閉じ籠り。鏡の前で一人泣いていた。暗がりに彼のすすり泣く声が響いた。
「ああ、きっと聖様は私が男の娘だと知ったら軽蔑するわ。だってずっと、私のことを女の子と思い込んでいるから、きっと私が本当は男の娘だと知ったら傷つくわね。もっと早く自分が男だと言えば良かったあの時に…――!」
奈美夜はスンスン泣くと、自分の性別に酷く落ち込んでいた。
「お父様も、お母様も、私が本当は女の子で生まれてきて欲しかったに違いないわ。私は生まれた時から女の子のようにして育てられた。この喋り方も、長い髪も、女の子らしくしなくちゃいけない生き方も、本当は窮屈で嫌だった。男の子のように振る舞えば、お父様やお母様に怒られた。私は一体、どっちなの? 本当のわたくしは…――」
このまま、聖様に嘘を隠していたらきっと良くないのは解っている。でも、私にそんな勇気があるのかしら? 私が男の子だと知った時どんな顔をするかしら?
「聖様…――」
奈美夜は悲しみの余りに涙を流すと、鏡の前でうつ伏せになって泣き伏せた。そして、わんわんと大声で泣いたのだった。
翌日、聖矢は学校で一人落ち込んでる奈美夜の姿を見かけた。後ろから何気無く声をかけると、そのまま逃げるように廊下を走って彼の前から突然消えた。その次の日も学校で声をかけると、奈美夜は何も言わずに彼の目の前から走り去った。急に態度がおかしくなった彼女(?)の態度に聖矢は首を傾げると次会ったら掴まえてやろうと心に誓った。
雨が降ったその日、学校帰りに奈美夜は暗い顔で傘をさしながら一人で下校した。その時、急に腕を誰かに掴まれた。グイっと腕を掴まれると咄嗟に後ろを振り返った。すると聖矢は奈美夜の顔をじっと見てきた。
「なんで急に俺のこと避けるんだよ!?」
「――ッ! せ、聖様……」
「俺、ナミヤちゃんに気に触ることした!? どうしていきなり無視するだ!?」
「聖様……わっ、わたくし…――」
奈美夜は彼の視線から目を外すと下を俯いた。すると、いきなり大胆に抱き締めてきた。
「せ、聖様……! だっ、だめですわ、こんなところ人に見られたら……!」
「構うものか! 教えてくれ、この気持ちを! どうして俺の心はこんなに痛い!? キミに無視されてると思ったら、息も出来ないほど苦しい……! 頼むから目を反らさないで俺のことをちゃんと見てくれ!」
その言葉に涙が溢れると、奈美夜は自分が本当は男の子であることを彼に打ち明ける事に声を震わせた。
「わっ、わたくし……聖様に本当のことを言ってなくて」
「本当のこと――?」
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