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水になればあなたに会えると
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貴方が銃声の鳴り響く地へ行くことになったと知ったあの日 私は思わず涙が出てましまいました。
貴方は私が 嬉しくて泣いてると思われたのでしょうね。
胸を張って言ったあなたに 私は本音が言えなかった
行かないで そばにいて 死んで欲しくない
ひとりにしないで
そんなこと言えません
この国じゃ 言ってはならなかったんです。
でも貴方の背に縋りたかった 。
貴方が私の全てだったから。
貴方と初めて出会ったのは寒い冬の日の事でしたね
私は母1人 子1人 また目も怪我で水晶を入れていたこともあり
よく 村の子等にいじめられ ていました。
その日も いじめられ 雪の積もる 村外れの 草むらで泣いておりました 。
『ヒック 、』
『なんで僕はいじめられるん?
母様だけやけぇ? 目が 水晶やけぇ?』
ガサガサ と 草むらから 音がし たので
貢 は 伏せ泣いていた 顔をあげ
また いじめっ子たちが来たのではないかと
頭に手を置き 縮こまった
『ん??誰やお前 ! !』
貢 より大きな声で 草むらから顔を出したのは 村の外れに住む 最近 越してきた 修三だ
『お前なんで泣いとるんや? 』
図々しく 近づいてきて 貢の 頬を 触る
修三は 貢の 義眼を見て 微笑むと
『お前綺麗な水晶を目に入れとるの! 綺麗や! 』
『ッ 、、本当に?? 綺麗??』
修三は嘘偽りない顔で 満面の笑みで
『あぁ!お前の目は 綺麗な水みたいや!』
そんなこと言われのは 生まれて初めての経験だった 貢は とても嬉しく とても嬉しくて また 泣いてしまった
『あ?! な、なんや どっか痛いんか? 嫌なこと言ってしまったか?すまん! 泣くな 、な?』
荒々しく 貢の目から流れる 涙を拭う と 貢は
『痛くなぃよ 嬉しぃ 嬉しぃ そんなん言われたの 初めてやぁ ありがとう 』
少し驚いた顔で貢の顔を見た 修三は 笑顔で
『あぁ、 お前は微笑むと 花が咲いたみたいやな!』
『フフッ、貴方は笑うと太陽みたい』
『お!そうか? 嬉しいのぉ 日の丸ってか?』
と笑い合い
名前を 教え合い それから短く長いあなたと過ごす 9年間が始まりました 。
夏の日差しが肌に当たりジリジリと暑い日も
冬の雪がちらほらと落ち土道を白く染めた日も
貴方は私の隣を歩き 私を守ってくれた
雨が酷く降った日は土道で転んではと私をおぶって笑いながら走ったこともありましたね
結局転びはしませんでしたが 私もあなたもびしょ濡れでしたね それでも何も嫌な気持ちにはなりませんでした 貴方と笑っていられたから 思い出すと今でも胸が締め付けられる 。
私は右目を閉じるとあの頃のあなたを思い浮かべます。
『貢 ! 見てくれお前のために海で魚ば取ってきたけん 焼いて食うぞ ! 』
そんな大きな魚2人で食べれるかなぁ、
私のために 色々と食べ物を持ってきてくれた貴方
『貢 すまん 風邪ばこじらせたみたいや さっきから震えが止まらんけん』
あまり病にならない貴方が珍しく 鼻声だった時
私あまりに心配で貴方につきっきりでした。
『貢 の手は本当に綺麗じゃなぁ 俺の手と大違いじゃ』
貴方は力仕事 軟弱な私はよく手仕事ばかりだったから、貴方が言うほど綺麗な手ではなかったよ
『貢のこと好きやけん他の奴のとこ言って欲しくないんちゃ』
突然言われた私の気持ちなんか わかってないんでしょうね 、 私だって貴方が他の女の方や可愛らしい男の方といると すごく 自分でも嫌になるほど歪んだ気持ちになったんですよ。
貴方が 本当に 好きだった 。
私を守ると言っていたのに 私を置いて行ってしまった 貴方 。
貴方の戦死の公報が届いたと貴方の母様から聞いた際 私は人目も憚らず 大泣きしてしまいました、
どうして私を置いて 永遠に守ると言ってくれたのに 2人で海の見える平屋でゆっくりと過ごそうと言ってくれていた 行く際も絶対に生きて戻ると 言ってくれていたのに どうしてどうして
それでも 貴方が戦死したと事実は変わらず 私の周りの時間は過ぎていきました 、何度もお見合いの話などが来ました そろそろ妻をとらないか と村の方々から言われました 私ついつい笑いが出てしまいました 皆さん私が貴方と関係があったことを公報があった日 知った筈なのに 私に女性を進めてきたのです 、 そりゃ 男性の方からも色々と小馬鹿にされましたよ しかし私が好きになったのは 貴方 私の目を見て 綺麗な水だと言ってくれた 貴方だから好きになったんです 面白いでしょ それだけの言葉があの頃の私にとっては救いだった
ねぇ 修三
貴方今どこを飛んでいるんですか?
青空は綺麗ですか?
他の隊員の方に変に絡んではいませんか?
少し落ち着いて話しかけないといけませんよ。
腹は空いていませんか?
迷子にはなっていませんか?
1人ではありませんか?
寂しくはありませんか?
私に会いたいと思っていませんか?
私は 貴方に 会いたい
会いたい 寂しい
貴方が亡くなったと聞いて3年目の命日
貴方に会いに行きます
私 寂しがり屋なんです
貴方以上に。
『『 今日正午 二十代男性 一人の水死体』
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