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戸惑う感情④
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目を覚ますと、額に冷えピタ。
わきの下に保冷剤を入れられ、浴衣を着た僕を田中さんが心配そうにうちわであおいでいる。
「あれ?」
呟くと
「気が付きました?」
と声を掛けられて頷く。
「お水、少し飲めそうですか?」
そう聞かれて、ゆっくりと身体を起こした。
「全く…。あなたは今日、何回気を失えば気が済むんですか!」
田中さんに怒られて僕は小さくなる。
そしてガラスのコップに入れられたお水を手渡され、ゆっくりと口に含んだ。
冷たい水が身体に染み渡り、とても美味しく感じる。
一息ついてから
「今日は…本当にごめんなさい」
落ち込んで呟くと、田中さんの大きな手が僕の頭を撫でて
「赤地さんは、一見しっかりしてそうなのに…本当に目が離せない人ですね…」
そう言って苦笑する。
「ほら、お水を飲んだら横になって下さい。まだ、のぼせてるんですから…」
田中さんがあおぐ風が心地よい。
ふと部屋を見ると、田中さんのスーツのシャツが濡れた状態でハンガーに掛かっているのが見える。
(あれって…もしかして僕が抱き付いて濡らしちゃったんだ…)
穴が有ったら入りたいと思っていると、田中さんのスマホが鳴る。
「すみません。ちょっと失礼します」
そう言うと、スマホの画面を見てから外へと行ってしまった。
静かになった部屋で、僕はぼんやりと考えていた。
なんだか…田中さんには情けない姿ばっかり見せてるな~って溜息を吐く。
そしてぐるりと身体の向きを返ると、隣に布団がもう一つあるのに気付く。
(え?…田中さんと一緒に寝るの?)
反対側に向き直し、ドキドキする心臓を押える。
思い出すのは…浴室で見た田中さんの裸体。
抱き留められた肌の感触。
身体の奥が熱くなって、異変が起こる筈の無いモノが異変を起こしている事に気付く。
田中さんが居ないのを確認して、僕は浴室へこっそり入って冷水を頭から被った。
僕はどちらかというと、人より性への興味が薄い。自分がそういう対象にされて来たからなんだと思うけど…。
よって、自慰の経験も無かった。
今日、田中さんの手でイカされたのが初めてという情けなさ…。
だから、自分の身体に起こっている事が理解出来なかった。
しばらく冷水を浴びていると、身体も気持ちも落ち着いて来る。
ホッと溜息を吐いていると、浴室のドアが開いた。
「赤地さん…何してるんですか?」
驚いた声で田中さんに声を掛けられる。
僕はビクっとして、身体を縮めたまま
「こうすれば…のぼせたのが治るかな…って」
空笑いしてそう答えると、田中さんは呆れた顔をすると僕の頭にバスタオルを被せて
「逆に風邪引きますよ!」
って怒られてしまう。
確かに…今度は身体が冷えている気がする。
浴衣に袖を通すと、布の温かさにホッとした。
すると、いつの間にか脱衣所に浴衣用の上着も置いてある。
ふと、脳裏に秋月の声が蘇る。
『田中ってさ、母ちゃんみたいなんだよ…』
苦笑いしてそう呟いていたっけ…。
用意されていた上着にも袖を通し、部屋へと戻る。
すると田中さんはいつの間に用意したのか、ホットミルクを僕に差し出した。
「赤地さんのお母様から、あなたは身体が弱い方だと聞きました。良いですか。今、何ともないからと言って油断すると、後で痛い目に遭いますよ!」
座椅子に座るや否や、いきなり説教が始まった。
『田中ってさ、説教ジジイなんだよ』
再び秋月の苦々しい表情と一緒に、この言葉が蘇る。
(本当だ…)
思わず小さく笑うと
「赤地さん?何笑ってるんですか?笑うような話をしていませんが!」
って、益々怒られてしまう。
「すみません。つい、嬉しくて…」
「嬉しい?」
僕の言葉に、田中さんが怪訝な顔をする。
「はい。うちの両親、僕が身体が弱かった事もありますし、色々その…あるので…。あまり僕を怒らないんです。」
僕の言葉に、田中さんが一瞬言葉を失っている。
「あ!でも、それを悲しいとか思った事は無いですよ。ただ、こんなに色々言われたのが初めてで、ちょっと嬉しくなってしまいました」
ホットミルクのカップを両手で包み、僕はぽつりと呟いた。
そして思わず思い出し笑いをしながら
「でも、似てますよね。秋月と田中さん」
そう呟と
「え?」
って、田中さんが驚いた顔をする。
「そうやって、すぐ注意する所」
っと僕が言うと、田中さんは困った顔をして僕の頭を小突くと
「大人をからかうんじゃありません!」
そう言って口をへの字にした。
その顔は、いつもの大人大人した顔では無くて、素の田中さんの顔のような気がした。
僕はそれが見られた事が、本当に嬉しくて嬉しくて…。
「そんなに嬉しそうに笑わないで下さい」
困った顔をした田中さんを見て、自分がそんなに嬉しそうな顔をしたのかと反省する。
そんな僕を見て、田中さんは苦笑いしながら
「それで…そんな悲しそうな顔をされると…意地悪したみたなんですが…」
そう言いながら、僕の頭をグリグリと撫でまわす。
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