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戸惑う感情⑤
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「ほら、こんなに冷たい髪の毛して…」
そう言いながら、席を立って脱衣所へと歩き出した。僕が疑問の視線を投げると、背後でカチっと音が鳴る。
「?」
不思議に思って振り返ろうとしたら
「そのまま、じっとしてて下さい」
と言いながら、ドライヤーの風が髪の毛に触れた。田中さんの大きな手が、僕の髪の毛に触れて乾かしてくれている。
僕が小さく笑っていると
「又、何ですか?」
田中さんが髪の毛を乾かしながら、怪訝そうに聞いてくる。
「嫌、秋月から聞いていたけど、本当にお母さんみたいだな~って」
クスクスと笑いながら答えた僕に、田中さんは嫌そうな顔で
「せめて美容師さん位にしてくれませんか?」
そう言いながらも、髪の毛を乾かす手を止めずにいる。
人の手で髪の毛を乾かしてもらうと、安心して眠くなる。
小さくあくびをかみ殺すと
「眠くなりましたか?もう少しで乾きますから、我慢してくださいね」
と、田中さんの声が聞こえた。
しばらくして、うとうとしていたらしく
「赤地さん、乾きましたよ」
と、声を掛けられて、眠い目を擦りながら頷く。
すると今度は田中さんが吹き出して
「そうしていると、子供みたいですね」
って言いながら笑っている。
その笑顔は本当に楽しそうで、僕も嬉しくなる。
「ふふふ…」
って笑いながら、僕は田中さんに抱き付いて
「今日はありがとうございます。夢みたいな時間を過ごしてます」
そう言って胸に顔を埋めた。
ふわりと、いつものコロンの香りでは無くて、同じシャンプーと石鹸の香りがする。
「田中さんと僕、今日は同じ香りですね~」
ふわふわした気持ちになって、そのまま僕は眠りたい気持ちになる。
「赤地さん?寝るなら布団に行ってください」
田中さんが僕の背中を何回か軽く叩いた。
抱き付いた感触が気持ち良くて、僕はご機嫌でそのまま目を閉じる。
何か田中さんが言っている声がするけど…その声も子守唄みたいだった。
どの位ぶりだろう?
こんなに安心した気持ちで眠れるのは…。
田中さんの背中に回した手を、ぎゅっと抱き締めて僕は深い眠りに着いた。
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