アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
戸惑う感情⑧
-
「…ちさん、…あ……ち…ん」
誰かが僕を呼ぶ。
誰?今、幸せな気持ちで眠っているんだから、起こさないでよ。
僕は抱き締めている温もりに顔を埋め、再び眠りに落ちようとする。
「…か…さ…ん。赤地さん!」
身体を揺すられて、ゆっくりと目を開ける。
すると田中さんが困った顔で僕を見下ろし
「あの…トイレに行かせてもらえませんか?」
って言われた。
目覚めると、僕は田中さんの身体をガッチリホールドしていた。
「す…すみません!」
慌てて離れると、田中さんは起き上がってトイレへと向かった。
「あれ?」
思わず呟く。
浴衣も布団も、昨日、寝る前のままだ。
田中さんはトイレから戻ると
「昨日、ドライヤーを掛けていたら、そのまま眠ってしまったんですよ」
そう言われて、頭が混乱する。
そして微妙に頭が痛い。
「すみません。昨夜、ホットミルクに少しだけお酒を入れたんです。効きすぎちゃいましたね」
そう言って、田中さんが苦笑いしている。
「え!じゃあ、あれは夢?」
凄いリアルな夢に、顔が熱くなる。
田中さんは真っ赤になっている僕の顔を見て
「どんな夢を見たんですか?」
って、ニヤニヤしている。
(田中さんとエッチした夢なんて、言えるわけないでしょう!)
と心の中で呟いて
(なんだ…夢か…)
って、ちょっと残念だった。
残念って…別に…田中さんとしたいとか…そんなんじゃ無いけど…。
そう考えていると、隣で田中さんがクスクス笑っている。
「赤地さん、一人で百面相してますよ」
そう言われて、頬を突かれた。
「どんな夢だったのか、益々気になりますね」
そう言われて、僕は益々真っ赤になる。
「若いって良いですね〜」
悟られてような言葉を言われて、僕は布団を頭から被った。
「夢なんて見てません!」
そう叫ぶと、布団の向こうから田中さんの笑い声が聞こえる。
そして再び隣の布団に入る音が聞こえて
「まだ早いので、もう少し寝ましょう」
と言う声が聞こえた。
そっと布団から隣の田中さんを見ると、僕に背を向けて眠っている。
(やっぱり、夢だったんだ…)
触れてくれてた手の温もりや重ねた唇。
そして一つになったあの感覚。
『蒼介さん、愛しています』
あの囁きも……。
全部、夢だったんだ…。
そうだよね。
田中さんが僕なんか、好きになる筈がないじゃないか…。
そう思って苦笑いを浮かべ、もう一緒に眠ってはくれない温もりにがっかりして目を閉じた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
29 / 42