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戸惑う感情⑨
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どの位寝ていたのか…。
再び目を覚ますと
「おはようございます」
と、田中さんに声を掛けられた。
僕がその声に我に返って見上げると、田中さんが困った顔をして
「そろそろ起きたいのですが…」
って、困った顔で言われてしまう。
僕はきっと「?」って顔で、田中さんの顔を見ていたのかもしれない…。
「浴衣の合わせを掴んでいる手を、放して頂けるとありがたいのですが…」
と言われて、僕が田中さんの浴衣の合わせをがっちり掴んで寝ていたことに気付く。
慌てて手を放し
「ご…ごめんなさい!」
そう言うと、田中さんはクスクス笑っている。
(起こしてくれても…良かったのに…)
恥ずかしい気持ちを隠したくて、思わず布団を頭までかぶる。
昨日の夢といい、今といい…。
(どんだけ田中さんが好きなんだよ!)
自分にツッコミを入れながら、つきんと胸が痛む。
……好き?
僕は自分の気持ちに戸惑う。
まだ出会って間も無いのに?
そもそも、恋愛の好きと親愛の好きの違いって?
ふと考えてしまう。
すると
「赤地さん?そろそろ起きないと、朝食の時間ですよ」
と声を掛けられる。
ガバっと起き上がると、田中さんは浴衣のまま上着を羽織って時計を見た。
僕も慌てて布団から飛び出すと、あれ?何やら下半身がダルい。関節もギシギシしてる。
「?」
僕は慌てて田中さんを見上げる。
すると田中さんは笑いながら
「そんなに慌てなくても大丈夫ですよ。さ、これ着て下さい」
って、上着を僕に着やすいように広げて着せてくれた。
すると突然、浴衣の帯をスルスルっと引き抜いて、浴衣の合わせを直して帯を締め直した。そしてポンっと背中を叩くと
「これで大丈夫です。さっきのままだと、明らかに寝乱れてましたからね」
と、笑われてしまう。
「ありがとうございます」
真っ赤になって言うと、田中さんは僕の頭をくしゃりと撫でて
「どういたしまして」
と微笑んだ。
まだ、髪の毛は簡単に梳かしただけなので、前髪が下りたままのラフな田中さんの笑顔にドキリとする。
「さ、食事に行きましょう。お腹、空いていますよね?」
と聞かれて、そう言えば昨夜、夕飯を食べ逃した事を思い出した。
『グゥ』
その途端、僕のお腹が鳴る。
「プっ」っと田中さんに笑われてしまい、僕は首まで真っ赤にしながら
「すみません」
っと呟く。
すると田中さんは
「いえいえ。とても素直なお腹ですね」
と言いながら、クスクスと笑い続けている。
田中さんの後ろ姿を見つめて、ぼんやりと考える。
(あれは本当に夢?)
でも、軽い頭痛と節々の鈍い痛みもある。
風邪かな?
モヤモヤ考えていると
「どうしました?」
って顔を覗き込まれた。
「あ!いえ…。あの……昨夜…」
そう言い掛けて、唇を噛み締める。
もし、本当に抱かれていたとしたら…。
田中さんは、それを無かった事にしたいのかもしれない。
逆に、本当に夢だったとしら…
この鈍い痛みは、発熱の前兆の可能性もある。
昨日、あれだけ冷水を浴びたから、風邪を引いてしまったのかもしれない。
だとしたら…田中さんに又、心配を掛けてしまう。
どちらにしても、田中さんに迷惑を掛ける結果になるなら…口にしない方が良い……。
だったらせめて…夢だったかもしれないけど、あの熱は真実だったのだと。
僕の身体に刻まれた印は、田中さんが残してくれた印だと…。
そう考えようと思った。
「赤地さん?」
言い掛けて黙り込む僕を、田中さんが心配そうに見つめる。
そして僕の額に手を当てると
「熱…あるんじゃないんですか?」
って言われてしまう。
(あぁ…残念、やっぱりそっちか…)
ぼんやり考えて、くたりと田中さんの身体に倒れ込んだ。
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