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戸惑う感情⑪
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すると田中さんは突然僕を抱き上げて膝に乗せると、布団を身体に巻いて
「盗み聞きしていた人には、お仕置きしないといけませんね」
そう言って、僕の頭を撫でた。
「あなたは人に対して気にしすぎです。ですので、考えました。此処にいる間、我が儘言って下さい。して欲しい事。して欲しくない事。色々あるでしょう?我が儘言わなかったら…そうですねえ…」
わざとらしく考えるフリをして
「お肉を食べさせます!」
って言って、にっこり微笑んだ。
僕はきょとんとした顔をしてから、思わず笑ってしまう。
「病気の時は、甘えて良いんです。我が儘言って良いんです。わかりましたか?」
そう言われて、僕は小さく笑って頷いた。
すると田中さんは無意識なんだろう。
僕の頭にキスをして
「よく出来ました」
って微笑んだ。
そっと抱き寄せられて、田中さんの胸に身体を預けて目を閉じる。
恋人でもなんでもない、ただのお世話している人の友達で、勉強を教えてあげている人というだけの僕。
どうして田中さんは、ここまで優しくしてくれるんだろう。
翔と離れたら、終わってしまう関係。
それは脆くて、すぐに壊れてしまう関係。
それなのに…どうして此処まで優しくしてくれるんだろう?
目を閉じたまま、ずっと考えていた。
すると
「赤地さん?」
って、声を掛けられる。
でも、返事したら布団に戻されそうで、もう少しこのままで居たいって思って黙っていた。
「寝たんですか?」
優しい、温かい声。
田中さんの心音が子守唄みたいで、段々と意識が遠退いて行く。
すると田中さんの手が僕の髪の毛を撫でて、そっと頭にキスを落とす。
「俺が…あなたを守るのに相応しい人が現れるまで、ずっと守ります」
そう囁いて抱き締めた。
「だから…全て忘れて下さい。あなたが何にも囚われず、伸び伸びと生きていく為に…」
と囁く。
(どういう…意味……?)
ぼんやりとした頭で考える。
「その為になら、俺は夢の中の恋人で構いません」
と呟いて、僕の手の指にキスをした。
やっぱり田中さんはキス魔なんだ…。
そう思いながら、今、大事な事を言っていたような気がする。
そう思って、意識を元に戻そうとした。
でも、僕を抱き締める田中さんの強い腕と、お布団に包まれてヌクヌクしたこの空間が幸せ過ぎて、意識が遠退いて行く。
「愛しています…蒼介」
また…夢?
ぼんやりと薄く開いた目に、切なそうな、苦しそうな田中さんの顔が見える。
田中さんの手が頬に触れて、そっと唇に唇が触れた。
何か言わなくちゃ…。
僕もですって…。
僕も田中さんが大好きですって…。
声が出ない。
瞼が重い。
伸ばそうとした手が少しピクリと動いただけで、僕は眠りの中へと落ちて行った。
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