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〜昴流side〜
「ふぁ、ーーーっ。」
屋上の端。
非常階段のすぐ側で昴流は日向ぼっこしていた。
あくびをして体を起こす。
真っ赤な髪の毛。前髪がはらりと垂れ、それをかけた耳にはピアスがついている。
制服は少し気崩され、寝ていたせいか乱れていた。
「……さすがに行くか。」
入学式もそろそろ終わったことだろう。
昴流は立ち上がると教室に向かった。
*
「えー、じゃあ2年生はこれで解散……」
担任の緋村優樹(ひむらゆうき)が連絡事項を伝え終えたところで、昴流を捉える。
「……じゃあ来週から授業だからな。遅れるなよ!」
クラスを解散させ、再び視界に捉えられた。
その顔は困ったような呆れたような、そんな表情を浮かべている。
「木之本、ちょっとこい。」
「はいはい、挨拶行かなくてすいません。」
「感情がこもってないんだよ、感情が……まったく、副校長かなり怒ってるぞ。」
「……はぁ、めんどくせえな。」
「おいおい、早々に猫かぶるのをやめるな。」
「いや、センセーはもう知ってんじゃん、俺の本性。」
「ったくなぁ……お前、親と色々あるのかもしれないが、だからって今回みたいなのはよくないぞ。」
「……生徒会長なりたくてなったんじゃねえし。」
「でもなった。拒否できたけど、お前はやることにしたろ?」
生徒会長を打診された時、正直断ろうと思った。
というか、教師票が入ることなく落選だと思っていた。
しかし、この緋村と養護教諭の夏目智宏(なつめちひろ)が昴流に票を入れたため、当選。
この2人のことは、昴流もそれなりによく思っていて、自分が拒否することで2人の立場が悪くなるくらいなら、と結局引き受けた。
「やると決めたなら、仕事はちゃんとやれ。普段から生徒会長らしく、なんてことは言わない。でも生徒会長としての仕事はちゃんとこなせ。いいな?」
「……わかった。」
「よし。そんじゃご立腹の副校長がお呼びだから。一緒に行くぞ。」
「めんどくせえな……」
「今回はお前も悪いからな。ちゃんと謝るところは謝らせるぞ。」
「センセーほんと変わってんな。」
「……そうか?」
「そうだよ。髪色に一切触れねえし。」
「注意して欲しかったのか?でも別に校則違反ではないしな。」
「……ジジイならキレてる。」
「副校長は、お前にだけ厳しいってわけじゃない。若干、時代遅れだとは思うが、まあそういう教師も必要なときがあるんだよ。多分、な。」
"ジジイ"呼びについてもお咎めなし。
本当に変わった教師である。
「ところでお前、古典の課題は持ってきたんだろうな?さっき集めたぞ。」
「あー、持ってる持ってる。今渡す?」
「後ででいい。……お前、せめて敬語使え、敬語。」
「はいはーい、ごめんなさい。」
緋村と廊下を歩いていると、反対側から"ジジイ"もとい副校長が歩いてきた。
「げぇ。」
「こら、ピシッとしろ。」
副校長は昴流を捉えると顔を顰めて早足で向かってきた。
緋村がスっ、と昴流の前に立つ。
「副校長先生。」
「緋村先生、木之本と話したいのでいいですかな?」
「ああ、ええとですね、どうも体調が悪くて教室で寝ていたらしいんですよ。保健室に行く前に力尽きたみたいで。」
「……その割に、随分元気に見えるが。」
髪色をちらりと見た副校長は昴流を見やってそう言った。
「まあ、今回は許してやってください。少し無責任ですが、体調は仕方ないじゃないですか。報告や連絡に関しては、俺が言っておくので。」
「……ふん。まったく、甘やかすにもほどがありますぞ。そうして緋村先生が許すから、こいつがつけ上がるんです。同じクラスの優等生でも見習わせてください。」
「はは……あ、副校長、うちの高校に取材したいと、朝連絡があったので、折り返しお願いします。なんでも優秀な生徒ばかり輩出するここの校長と副校長の有能さについて記事にしたいんだとか。」
緋村がそう言うと、副校長は顔色を変えて、急にニコニコする。
わかりやすい男である。
「ふむ、そうですか。メモは職員室に?」
「ええ。」
緋村はニコリと笑って、副校長に職員室に向かうよう促す。
副校長は満更でもなさそうな顔で職員室に歩いていった。
「……ご機嫌取り?」
「ん?嘘は言ってない。本当に記者がそう言ってたんだよ。お前についても取材したいって言ってたぞ、スケート。」
昴流はフィギアスケートをずっと続けていた。
この高校は私立なだけあって、近くにスケートリンクを持っていて、フィギアスケートだけでなく、スピードスケートやアイスホッケーなどの部活も存在する。
「……めんどくせ。」
「まあそう言うと思って、それは私の一存では決められませんって言っといた。」
「ありがと、センセー。で、もう帰っていい?」
「ったく……持ってきた課題出したら帰っていい。」
緋村に課題を渡し、昴流は帰路に着く。
1度帰宅してからランニングにでも出ようと思いながら、昴流は大きくあくびした。
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