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〜空夜side〜
まだ部活がある陸玖より先に、空夜は帰ることになった。
陸玖は野球部で、茅野学園はそれなりに強く、今年は甲子園出場を狙っているためか、熱が入っている。
吹奏楽部もコンクールにむけて練習があるのだが、本格的な活動は明日からだ。今日は個人練習だけで解散になった。
(今日はみんな遅くなるんだっけ。)
琉は瑠梨の入園式に出たあと、夜の収録があるから夕飯は遅くなりそうだと昼頃にLINEがきていた。
(さてはそれで今朝、洸大さんの店を提案したな?)
春陽は大きな案件を抱えているらしく、今日は泊まりになるらしい。春陽は今、探偵事務所に所属していて、烏沢グループから支援を受けている。
昂からは先程LINEが来ていて、友達とカラオケにいるのだそうだ。もう新しいクラスで友人ができている、早すぎである。
ということで、必然的に瑠梨のお迎えには空夜が行くことになった。
瑠梨は入園式のあと、登坂家に預けられているはずだった。
1度家に荷物を置いてから行こうと、帰宅し、家の鍵を開ける。
誰もいないはずの家で、テレビの音が聞こえた。
子供向け番組らしい内容がうっすら聞き取れる。それから、玄関まで漂ういい匂い。
空夜はいつもはきちんと揃える靴を脱ぎ捨て、バックも放り出してリビングに小走りで入った。
「あ、おかえり。」
そう言いながらにっこり笑って振り返るより早く、空夜は抱きつく。
「こらこら、手洗ってきなさい。」
「お母さん、いつ帰ってきたの?まだかかる予定じゃなかった?」
「ふふ、新くんが、あとはこっちでやりますって。圭吾さんは不安そうにしてたけど、いいから帰っちゃってくださいって言われて、お言葉に甘えて帰ってきたよ。」
2週間ほど前から、傑の出産のために笹倉家に言っていた母、恋。
圭吾1人では子どもの面倒を見きれないと判断した傑からお願いされたことと、傑の出産に圭吾が立ち会いたいと言ったことから、しばらく笹倉家で寝泊まりしていたのだ。
「どうした?寂しかった?」
「……うん、ちょっと。」
「なんだなんだー、素直な空夜可愛いな。」
うりうり、とむぎゅむぎゅされて、ああやっぱり母親は特別だ、と思う。
「瑠梨、迎えに行ってくれたんだね。」
「うん、新くんから聞いたかと思ったけど、言い忘れたのかな?朝、学校に行く前に、今日帰っていいですって言われたんだけど。」
「あー……新、生徒会の副会長だから。」
キッチンのところで手を洗いながら、料理に戻った恋と話す。
「昴流が朝からいなくて、ちょっと大変だったみたいだし。」
「昴流くんが?」
「うん。生徒会長の挨拶バックれてた。」
「ええ?!」
「まあ、担任の先生に見つかって怒られてたし、次は平気じゃないかな。」
「そっかぁ。」
「あ、明希さんに言わないでよ?絶対心配するだろうし、昴流の機嫌悪くなるから。」
「はいはい、お母さんも明希の性格はよくわかってます。ところで、今日はみんな遅いの?」
「うん、陸玖は部活。お兄は大事な案件あるから泊まり込みだって。」
「そう、お父さんは仕事だよね。」
「うん。俺挨拶してくるね。」
「うん。」
仏壇の前で手を合わせる。
古めの写真には、恋の両親、空夜の祖父母の姿が写っている。
「なにか手伝う?」
「ううん、大丈夫。瑠梨と遊んでてあげて。」
「うん。」
キッチンに恋の姿があるだけで、家が温かい。
琉には悪いが、空夜は恋がいる空間が1番好きだし、落ち着いた。
「瑠梨、なにしてるの?」
「あんぱんみてるの!!まぁまがね、おふろまでみてていいって!」
にぱーっと笑う瑠梨も、やはり恋がいることが嬉しいようだった。
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