アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
20
-
〜空夜side〜
「えーと、じゃあ早速……まずは指揮者と伴奏者かな?曲が、課題曲と自由曲があるので、指揮者は1人か2人、伴奏者も1人か2人で決めていきます。」
話をするのは京の方で、兼は板書をすることにしたようだ。
「まず、指揮者と伴奏者を1人にするか2人にするか、これ結構重要だと思うので、クラスみんなで決めたいと思います。」
「なんで?」
兼が後ろからツッコミを入れて、京がくすくす笑う。
「指揮者と伴奏者は曲を作っていく大事な人だから、2曲とも共通にすると、信頼が芽生えていいと思う。けど、その分負担も大きくなるから、考えた方がいいかなってだけ。去年うちのクラスは、どっちも2人だったよ。」
「ほーん、俺のクラスは指揮は1人、伴奏は2人だったや。」
「みんなはどう思う?」
「あのさ、俺のクラスは伴奏できる人があんまりいなくて、なかなか決まらなかったんだよね。伴奏やってもいいよって人があんまいなかったら、2人にしたら困るんじゃない?」
光樹の言うことはもっともだった。
ピアノの伴奏者は短期間で仕上げなければならないため、1人でも2人でも負担が大きい。
ピアノの力量がある程度ないと難しいのだ。
「うちのクラスで、ピアノができるよって人、どのくらいいますか?」
京がそう尋ねるも、クラスはシーンとしている。
「いや待て待て、それはない。誰かひとりはいるように、クラス分けされてるはずだ。」
緋村がそう言って介入してくれる。
しかし昨年の伴奏者はこのクラスには1人もいない。
(てことは、去年はやってないけど、ピアノできる人か。)
空夜はうーん、と考え込む。
楽器ができる人の話は吹奏楽部でも比較的あがるため、知っていることが多いのだが、このクラスには思い当たらなかった。
「……はぁ、じゃあ俺ってこと?」
嫌そうに声を上げたのは、昴流だった。
(あれっ?!昴流ってバイオリンやってたんじゃないっけ?!ピアノもやってたんだ?!)
心の中で驚きの声をあげてしまったが、よくよく考えてみれば、不思議なことではなかった。
昴流は昔からなんでも努力してきたのだから、ピアノもやっていてもおかしくはない。
「木之本ピアノできるのか!」
「いやセンセー知らんのかい……はぁ、まあいいや。誰もいねえんだったら俺がやる。」
「それじゃあ、伴奏は木之本くん1人でいいかな?」
「しゃぁねえだろ。お前ら2人は弾けねえんだよな?」
「ごめんきのちゃん、俺は楽器はてんでダメ!」
「ごめんね、俺も触ったことはあるけど、伴奏できるほどは弾けないんだ。」
「じゃあいいよ、俺が両方弾く。」
「指揮者はどうしようか……木之本くんに無理言って2つやってもらうわけだし、木之本くんの意見を聞きたいな。」
「まあ、1人だとやりやすくて助かる。クセとかもあるし、練習もいっぺんにやれるからな。」
「じゃあ、指揮者は1人の方向で行こう。ということで、指揮者、立候補してくれる人いる?」
京がクラスを見渡して訊ねる。
このクラスにいる指揮者経験者は数名。
しかし皆昨年の課題曲指揮者で、昨年の課題曲はアカペラだった。
そのためピアノと一緒に練習した経験のある人はいない。
「赤津やれば?」
トントン、と後ろから肩を叩かれ、理央にそう言われる。
「学生指揮者やってるんだし、できるでしょ?」
「ええっ……」
空夜はピアノ伴奏はできないまでも、ピアノに触れたことはある。
それと音感の良さもあって、吹奏楽部では学生指揮者になっていた。
コンクールや定期演奏会の一部の曲ではOBの先輩が指揮をやってくれるが、それ以外の曲は空夜が指揮を振る。
(確かに経験はあるけど……)
とはいえ昨年の合唱コンクールの指揮はやっていないし、合唱の指導などやったこともない。
「それってぇ、経験者じゃないとやっぱだめぇ?」
「えっと……鳥谷さん?経験はないけどやりたいってこと?」
「うん、私やって見たぁい。」
「うっそ、あの子がやるくらいならやっぱ赤津がやんなよ!」
「えっ、赤津できるの?できるならやってよ。」
理央から再び声をかけられ、その声が聞こえたらしい優子も振り返って声をかけてきた。
「えぇっ……でも指揮は俺自信ないし……」
「何言ってんの、吹部でめっちゃやれてるって!はいはーい!赤津くん推薦します!!」
理央は勢いよく手を挙げて、空夜の左手も掴んであげてしまった。
「ちょっ、猪田さんっ……!」
「赤津は吹奏楽部で学生指揮者やってるんで、まだ去年の2月になったばっかりとはいえ、指揮者経験はちゃんとあるし、音感もあるから私的にはバッチリだと思うんだけど。」
ニコニコ笑って、理央は空夜を推した。
(まじかっ……あんまり波風立てたくなかったんだけど……)
「えーっ、じゃあ昴流くんに決めてもらおー?」
(うわそう来たか……)
昴流はああ見えて優しい。
やりたいと言っている子を完全に切ることはできない。
「……どうする?木之本くん。」
「俺たちはきのちゃんの意見に従うぜ。無理言っちゃったし、俺は音楽のことさっぱりだしなぁ。」
「……はぁ、じゃあ、時間ねえけどオーディションするか?」
昴流はめんどくせえ、という様子でそう言った。
「自由曲決めたら、2人には練習してきてもらう。それからみんなで初めて歌う時に、どっちにもやってもらう。みんなの意見も含めて、どっちにやってもらうか決める、ってのは?」
「俺は賛成!やっぱ歌うの俺らだし、関係ない、って感じで木之本くんに任せっきりもよくないと思うしな!」
宏樹がそう声をあげれば、周りもそうだよな、と賛成の雰囲気が漂う。
「じゃあ、そういうことで。その曲決めに入ろうかな。」
そうしてその後で決まった、肝心の曲は。
「では、今年のB組の自由曲は『青鷺』にします。」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
22 / 189