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〜空夜side〜
4月21日
「どうぞ。」
部活が終わったあと、みんなで集まって古典の次の授業のノート作りをすることにした。
「お邪魔しまーっす!」
「お邪魔します……」
「あ、空夜のお母さん、これ、母さんから。」
「わざわざごめんね、ありがとう。みんないらっしゃい。」
「陸玖今日遅くなるらしいから、俺たちの部屋使うね。」
「書斎も掃除してあるけど、いいの?」
「うん。あと、LINEした通り、みんなでご飯買ってきてるから。」
「うん、わかった。あとでお茶だけ持って行ってあげるから。」
「ありがと。」
恋と話を終えて、みんなを連れて部屋がある2階に上がる。
「はい、ここ。そっちは陸玖のベッドだから、あんま触んないで。その真ん中のテーブルでやろ。」
「おっけぃ!くうちゃんの部屋広いな!」
「まあ、陸玖と2人で使ってるし、陸玖の野球道具とか、俺の楽器関連のものとかもここに置いてるから。」
「そっかそっか!てかお腹すいたな!!」
「先飯にするか?そんで課題やる?」
「そうだね。京くんもその辺適当に座って。」
勝手知ったる様子で昴流はラグの上に座り、兼もその隣にぱっぱと座ってしまった。
迷っている様子の京にも声をかけ、空夜は勉強机の方にリュックを置き、古典の教科書とノート、筆箱だけを取り出して座った。
「京くん緊張してる?」
「えっ?あ、うん。友達の家って行ったことなくて。」
「えぇっ?!?!嘘だろ?!ゲームとかしなかった?」
「こら、かしけん。人には人の事情ってもんがあるんだよ。」
昴流にぺしっ、と軽く頭を叩かれ、兼はごめんっ、と言った。
「ううん!いいんだ。でもゲームとかはやったことないなぁ。楽しそうだよね。」
「え、じゃあやろうぜ!!」
「いやいや、課題しに来たんだろうが。」
「じゃあ、ゲームは今度ね。お兄がいろいろ持ってると思うし。」
「いえーい!!」
「なんでかしけんの方が喜んでんだ……」
昴流と兼のやり取りに、京はくすくす笑う。
ちょうどそのタイミングで扉がノックされた。
「はーい。」
「邪魔してごめんね。これお茶ね。あと小雪さんがくれたロールケーキ、良かったら食べて。」
「すげぇー!ふわっふわだ!うまそう!!」
「ふふっ、まだあるから、おかわりしたかったら空夜に言って。また持ってきてあげる。」
「空夜のお母さんあざっす!」
ガバッ、と頭を下げた兼に笑いながら、恋はすぐに部屋を出ていった。
きっと気を使ってくれているのだろう。
「かしけん甘いもの好きなの?パンもいつも甘いの食べてるよね。」
「うん。くうちゃん嫌いなら俺もらうけど。」
にっこにこしながらそう言う兼に、3人で笑ってしまった。
「いや食べるけどさ。てかほんとにおかわりしたかったらしていいよ。小雪さんってお母さんの友達なんだけど、他にもお菓子大量に持ってきたから。」
「え、まじで?ほんとにおかわりしていいの?」
「その前に課題な。てか早く飯食おうぜ。俺もお腹空いたわ。」
昴流がそう言って買ってきたおにぎりを開ける。
ロールケーキは端に置いておいて、みんなにお茶の入ったコップを渡し、空夜もスパゲティを開けた。
「ん、あのさ、きのちゃんさ、作るクラスの雰囲気統一したい、みたいなこと言ってたじゃん?あれってどういうことなん?」
「あー、まあクラスの雰囲気っつか、クラスの歌い方っつか?丁寧に歌うところを大事にするのか、盛り上がりを大事にするのか、迫力つけるのかとか。」
「なるほど……わからん!」
「要は、楽譜をどう読み解くか、ってことかなぁ。クレッシェンド(*)ひとつ取っても、どんな風にクレッシェンドしていくかっていうのは、指揮者の裁量だったりするから。それを、俺と昴流だけで決めちゃうより、2人の意見も聞いた方が幅が出るし、練習計画立てるのは2人だからね。パート練と、全員練、あと特別教室使った練習をどう使うかとかがあるから。」
「ほぇえ……難しいんだなぁ。」
「金賞取りに行くなら、ってことだけどね。だから最初に、どのくらい本気でやりたい?って昴流は聞いたわけだけど。」
「なるほどな!!」
「特別教室での練習はグランドピアノが使えるし、音の跳ね返りとかも聞けたりするから、やっぱり全員練がいいよね……1週間に1回、グランドピアノある部屋での練習があるから、そこは確認練習にしたいよね。」
「そうだね。そうできたら指揮者としては嬉しいけど……」
「音取りはパートに任せて、毎日1回は合唱してえな。俺も伴奏を毎回合わせてみたいし。」
「本番の出番の時間によって、朝練で合唱してみた方がいいかも。俺と昴流のコンディションは何時でもあんまり変わんないけど、歌はそうはいかないから。」
「なるほど、時間によって声の出方違うもんね。」
「きりちゃんすげぇな?俺全然わかんねぇぞ。」
「かしけんみたいに、わかんないやつの意見も聞きたい。俺たちの熱量ばっかあげてもどうしようもねえし。かしけんはいい意味で普通だからな。」
「そっか!!俺で役に立てるならなんでもやるぜ。」
「まあ、金曜に課題曲発表されるし、話はそれからだけどな。」
「そうだね。あんまり難しいのじゃないといいけど……」
「2人には負担かかっちゃうもんね……俺たちでやれることはなんでも手伝うからね!」
「俺も俺も!!」
早くも団結を感じられる。
空夜もより一層頑張ろうと思えた。
*クレッシェンド:だんだん大きくという音楽用語。【<】こういうやつ。
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