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〜空夜side〜
「みんな帰ったの?」
「うん。急にごめんね、ご飯いらないとかいって。」
昴流たちを見送ったあと、恋の家事を手伝いながら話をする。
「大丈夫大丈夫。でも珍しいね、空夜が家に連れてくるの。」
確かに、普段は昔から交流のある昴流や新以外を家に誘うことはない。
赤津琉の家、というと必要以上に気にする人が多いからだ。
けれど兼や京はそういうタイプには見えないし、最終的には泊まりこみで色々な話を詰めていく目的がある。
「たまにはね。」
「ふふ、陸玖は昔からよく友達連れてきてたけど、空夜は連れてこないから我慢してるのかと思った。お母さん嬉しいなぁ。」
「別に我慢してたわけじゃないよ。友達の家には言ってたし。」
「そうだけどねぇ、気でも使ってるのかと思って。」
「そんなことないけど……また連れてくるかも。」
「うんうん、いつでもどうぞ。まあその日でもいいから、事前に言ってくれると助かるかな。掃除もしておいてあげたいし、おやつも用意しておくし。言ってくれれば夕飯だって用意したのに。」
「いやいや!さすがにそこまでお母さんにやってもらうのは……」
「そう?いいのに。お母さんみんなでお泊まりの時とかご飯作ってたし。そういうの好きだから。」
「お泊まり、かぁ。」
話題が出たところで反応してみる。
「したいの?」
「えっ、いや、あの。」
すぐにそう聞かれると焦ってしまって、そんなことは、と口ごもった。
「お泊まりしてもいいよ。うちの兄弟はそういうことでゴチャゴチャ言う子たちじゃないし。まあ、さすがにお泊まりするなら前からいつするのか教えて欲しいな。空き部屋掃除したり、お布団干したりしなきゃ。」
「していいの?」
「いいよー。そういうのって学生のうちの楽しみじゃん。お母さんは同級生とお泊まりなんて、高校の時したこと無かったけど……今思うとしたかったなぁって。だから、空夜がしたいなら、していいんだよ。あ、でも家以外にお泊まりするなら色々条件もつくけど……」
逆に家ならいいのか、と笑ってしまう。
恋は空夜にしてみれば、子ども思いのとてもいい母親だ。
無駄な干渉はせず、必要ならば手を差し伸べ、やりたいことは基本的にやらせてもらえる。
恋愛や友人関係についても何か言われたことは無いし、空夜はそんな恋が大好きだった。
「お母さん、ありがと。」
「なぁに、急に。」
「いや、いつも思ってるんだけど。」
「どういたしまして。さ、あとはお母さんやるから、もう休みな?」
「うん、おやすみ。」
「おやすみ。」
(……昴流も、早く仲直りしたらいいのに。)
自分が両親と上手くいっているだけに、空夜は言わなくとも、ずっとそう思っていた。
昴流も不安が勝ってしまっているだけで、本当は上手くやりたいと思っている。
しかしこればかりは、空夜に口出しできるようなことではなかった。
*
〜昴流side〜
「おかえり。」
「……ただいま。」
赤津家を出た後、兼と京を駅まで送った昴流は、少し遅く帰宅した。
「お風呂温かいよ。」
「ん。」
「恋に渡してくれた?」
「ん。」
「昴流、ゴールデンウィークのうち、1日だけ空けておける?」
「……なんで?」
「おじいちゃんが昴流に会いたいんだって。もし忙しかったらいいんだけど。」
「部活の予定次第。」
「そう……わかった。じゃあ、部活の予定わかったらお母さんに教えてくれる?」
「……ん。」
そっけない返事だけで、部屋に入る。
「……はぁ。」
いつまでもこんな態度でいいとは思っていない。
けれど、優しくしてくれる明希に甘えていた。
(こんなんじゃ、いつか愛想つかされる。)
そう思い、またため息をつく。
昴流は、両親が嫌いなわけでは無い。
義理の親とはいえ、小さな頃から愛情を注いでくれたと記憶している。
でも昴流にはトラウマがあった。
他人に心を開けない、決定的なトラウマが。
翔也との喧嘩と、思春期が重なり、昴流は後戻り出来なくなってしまっている。
自分にもどうしたらいいかわからない。
ただ今は、学校で行事に集中し、部活に熱中し、仕事に忙しくすることで、目を背けたかった。
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