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〜空夜side〜
4月26日
パート練習を重ねながら、昴流とも指揮を合わせ、空夜の家で勉強をする毎日。
吹奏楽のコンクールに向けた練習も少しずつ厳しくなってきている中、事件は起きた。
「これぇ、霧谷くんにあげようと思ってぇ。」
昼休み、練習前のことだった。
空夜はいつも通り、兼、光樹、昴流と4人でお弁当を食べていた。
聞こえてきた亜美香の声に、4人で顔を見合わせて振り返ったところ、亜美香は京になにか渡そうとしていた。
「えっと……これ、何?」
「ナッツチョコだよぉ。美味しいやつだから食べてみて。」
亜美香の後ろに園原妃依(そのはらひより)と高橋心乃実(たかはしこのみ)もいる。
「ナッツ……ごめんね、俺ナッツアレルギーだから、食べられないんだ。せっかくだけど、それは貰えないよ。」
「えー?アレルギーとか嘘でしょ?」
クスクス笑いながらチョコレートの箱をゆらゆら揺らす亜美香は、わざとなのか本当に嘘だと思っているのか、気にする様子もない。
「なんかあれ、やばくない?」
光樹が心配そうにそう言うのに、空夜も頷く。
「ほしちゃんは?」
「今日の昼、級長呼ばれてた。先生呼んできた方がいいかな……?」
クラスでなにか揉めそうになると、いつもうまくやってくれる宏樹は不在。
かといって、何も起きていないのに忙しい緋村を呼びに行くのもどうなのだろう。
(いやでも、なんか起きたらまずいし。)
「俺先生読んでくる。」
「くうちゃん、もしかしたら緋村先生より夏目先生の方がいいかも。」
夏目は保健室の先生だ。
確かに、アレルギーに関することなら緋村より適任かもしれない。
「わかった、保健室行ってくる。光樹、兼なんかあったらスマホ鳴らして。」
「わかった!」
「おっけぃ!」
「昴流、なんか起きそうだったら止めてよ。」
「わかってる。」
亜美香と京のやり取りから目を逸らしていない昴流にその場を任せ、空夜は保健室に向かって走る。
1階の端、職員玄関の方に保健室はある。
(ちょっと遠いんだよな。)
職員室なら教室のある2階だったのだが。
「失礼しますっ、夏目先生いらっしゃいますか?」
保健室の扉は開いていたので、休んでいる生徒はいないと判断し、空夜は少し大きめの声で夏目を呼んだ。
「はい、どうしたの?」
「あっ、先生、あの、今教室で少し、揉め事が起きてて……」
「揉め事?緋村先生は職員室にいなかったの?」
「いえっ、アレルギーがあるって言ってる生徒に、アレルゲンが入ってるかもしれない食べ物を食べさせようとしてる子がいて、それで、先生の方がいいかもって……」
「っ、歩きながら話そう。」
夏目は保健室の扉を閉め、巡回中の札を書けると空夜と一緒に早歩きでクラスに向かう。
「どうしてそんなことに?」
「悪気は無いのかもしれないんですけど、ナッツのアレルギーがある子に、ナッツチョコを渡そうとしてて……その子が断っても、嘘でしょって言って信じてなくて……アレルギーだから、なにか起きてからじゃ遅いかと思って、先生を。」
「そっか、ありがとう。来てくれて助かったよ。」
夏目にそう言われた時、ポケットに入れていたスマホが震える。
(っ、嫌な予感……)
「はい、もしもし。」
『くうちゃん!!早くクラス戻ってきて!きのちゃんが!!』
「昴流?京くんじゃなくて?」
『仲裁に入ったんだけど、あーもー!とにかく!!緋村先生連れてきてー!』
慌てた様子の兼の声の後ろに、ガタガタとなにかがぶつかる音がする。
「夏目先生っ、緋村先生と一緒に教室に来てもらえますか?俺先に教室に戻ります。」
「なにがあったの?」
「昴流が、木之本くんが喧嘩してるみたいで……!」
「えっ?!わ、わかった!できるだけ急いで行くね!」
2階に上がったところで、夏目は職員室、空夜は教室に向かうため、1度別れる。
(なんっで喧嘩になったんだ?!もぉー!)
「くーちゃん、廊下走っちゃダメだぞー!」
「あっ、宏樹くんっ、ちょっ、今急いでて!」
「なに、どうした?」
たまたま廊下で遭遇した宏樹が顔色を変える。
「昴流が喧嘩してるっぽい。」
「えっ、なに、クラスでなんかあった?」
「ちょっと……説明してる時間ないから、急ごう!」
「わ、わかった!」
宏樹と共に廊下を走り、B組に駆け込む。
昴流は亜美香のブレザーを掴んでいて、床にチョコレートが散らばっている。
「昴流っ!!」
「くうちゃんっ!きのちゃん全然こっちの言うこと聞いてくれないんだけど!!」
「くーちゃんごめんっ!止めようとした裕貴が突き飛ばされちゃって、誰も近寄れなくなっちゃって!」
そう言われて視線をずらせば、床にしゃがみこむ裕貴を悠平が心配している。
「あいつ……」
「えっ、くうちゃんの空気変わった……?」
「やっばい、怒らせたかも……」
「……もしかして怒らせたらヤバい系?」
「くーちゃん、部活で滅多に怒らないけど、怒った時めちゃくちゃ怖いんだ……」
兼、光樹、宏樹の話し声は耳を通り過ぎるだけ。
空夜は一直線に昴流の元に歩いていき、思い切り平手打ちした。
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