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〜陸玖side〜
「それで、帰ってきたの?」
「……いや、父さん呼んだよ。」
「明希さんは、翔也さんと一緒に?」
「そ。先に帰ってもらった。少し、2人きりの方がいいかと思って。」
「……にしても、ひどい言い草だな。」
「センセーと鳥谷が止めてくれなかったら、俺もう1発やってた自信があるわ。」
「俺も母さんに同じこと言われたらキレてる。」
今や同性婚は当たり前。その家庭に子どもがいるのもなんらおかしなことではなかった。
それを馬鹿にするような言い方はいただけない。
「はぁーあ……鳥谷にも悪いことした。」
「鳥谷さんって、なんか、俺のイメージとちょっと違ったな……?」
「うーん、俺も今朝までは陸玖と同じイメージを持ってたと思うんだけど……元は悪いヤツじゃないと思うわ。」
「まあ、そうだよね?今の話聞いてると。」
鳥谷亜美香というと、学年事情に疎い陸玖でも、あまりいい噂は聞かなかったのだが。
「あの親に気使って、ストレス溜まってたんじゃねえの。」
「なるほどな……でもそれなら、今回止めてくれたのって、鳥谷さんにとってはかなり勇気いることだったんじゃ?」
「そうかもな。憶測だし、わかんねえけどさ。」
「……それで、昴流は平気?」
「なにが?」
本当の子どもではないことは知られていないとはいえ、今回昴流には、養子だからこうなのだ、と言われているように聞こえてしまっただろう。
「別に。今更だろ。親に似てねぇとか、散々言われてきたし。」
「……ねえ、もしかしてだけど、少しでも似せたくてその髪色にしてんの?」
「っ、はぁ?!ちっげえし!誰があんなクソ親父のことなんか……っ!」
「やっぱそうなんだ!!」
「うっ、うるせぇっ!もう帰る!!」
「あ、ちょっと昴流ー!」
昴流の髪色は、1年ごとに順番に変化した。
その髪色に、まさか理由があったとは思わなかったが、陸玖は気づいてしまった。
「なんだよー、可愛いとこあるじゃんお前!翔也さんが舞台とか映画で染めた髪色に順番にしてるなんてさ!」
「ーーーーッ、言うな!!!」
髪色みたいに真っ赤になった昴流の顔は、プイッ、と背けられて、隣を歩く陸玖には見えなくなってしまった。
(早く仲直りしたらいいのに。)
未だ喧嘩を拗らせている翔也と昴流の仲が、早く元に戻ったらいいのにな、と陸玖は思う。
「……てか、昴流ってなんで翔也さんと喧嘩になったんだっけ?」
「あァ?あー……それは、完全に俺が悪いんだけどな。」
「そうだったっけ?」
「まあ……母さんに酷いこと言ったから。」
「ふーん……?お前が、明希さんに?珍しいな。」
「……ちょっと、中学で色々あってイライラしててな。当たっちゃったんだけど……まあ、最低だったわな。今日の鳥谷のお母さんくらい。」
「ええ?!そんなに?!」
「……って言っても、あのクソ親父のことは許してねえけど。」
「ええ?!なんで?!」
「……ふん。」
それ以上は聞いても教えてくれなくなってしまった昴流だが、翔也の髪色を真似ているあたりを考えると、大したことではないのかもしれないな、と思った。
*
〜明希side〜
「落ち着いた?」
翔也と先に家に帰ってきてすぐ、明希は久しぶりに泣いた。
「うん……」
「で、なにがあったの?」
「それが……」
涙や鼻水を拭いながら、明希は起きたことを翔也に伝えた。
正直なところ、明希は昴流が悪いとはこれっぽっちも思っていなかった。
正当なことをしたと思っている。
女の子の顔を叩いてしまったのは、少しやりすぎてはいると思うが。
それでも悪い事をしたとは思っていない。
アレルギーがどれほど危険か考えれば、昴流が彼女を止めたのは当然のことだ。
「なのにっ、昴流が悪く言われるのが悔しくて、悔しくてっ……だって、おかしくない?!昴流は悪くないし、俺が男だからなんなわけ?!大体、お腹痛めて産んだかどうかなんて関係ある?!今どきそんなの時代古すぎじゃないっ?!養子の何が悪いの?自分の子どもだもん、愛してるのに……ちゃんと、愛してる、のにっ……」
また溢れてきた涙。
悔しかった。
悲しかった。
養子でもたくさん愛してきたつもりだった。
けれど、まだあんなことを言われるなんて。
昴流にも、愛は伝わっていないのかもしれない。
だからあんな風に、距離を置くようになってしまったのかも。
「っ、もぉぉぉ!!腹立つ!!」
「よしよし、落ち着いて。ほら、深呼吸ー。昴流が帰ってくるまでに泣き止まないと、また俺が嫌われちゃうから、ね?」
翔也にぎゅーっと抱きしめられて、ゆらゆら揺らされる。
「大丈夫、昴流もわかってるよ。もし分かってなくても、俺たちは変わらない。ずっと昴流の味方でいる。でしょ?」
「……うん。」
「大丈夫、大丈夫。俺たちは家族だから。一緒に少しずつ、進んでいこう?」
「うん……」
昴流を引き取って11年。まだまだだなぁと明希は思った。
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