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〜空夜side〜
5月6日
「みんな合唱コンクールの練習でいろいろ忙しいだろうが、先月も話したように5月の28日に遠足がある。」
すっかり忘れていたが、そんなこともあった。
月末のLHRで班わけをしたのだった。
(うちの班は確か……)
男女合同の6人か7人の班で、くじ引きで決めたのだ。
昴流と光樹、兼が同じ班になっていて、兼が空夜がいないことを寂しがっていたのは覚えているが、肝心の自分の班のメンバーが思い出せない。
(宏樹くんがいたような。)
級長の宏樹が班長になったのだけはかろうじて覚えている。
「この前も話したが、2年生は秋に修学旅行がある。その時に羽田空港を使うから、今回は集合練習を兼ねて、羽田空港に集合だ。その後で指定の交通費範囲で好きなところに行ってもらって構わない。ただし最後の集合場所も羽田空港だから注意するように。それから少し急で悪いんだが、明日までにどこに行くか大体のルートを決めて俺に提出して欲しい。班長は少し大変だと思うが、よろしく頼む!」
遠足のルートを記入する紙が配られ、昼のSHRは終わった。
「くーちゃん。遠足の話したいから、一緒にご飯食べない?」
「あ、うん、今行く。」
「えぇー!今日くうちゃんいないの!」
「かしけんー、俺たちも中身決めなきゃ行けないからあっちで女子と一緒に食べるぞー。」
「えっえっ、せとっち待って!」
わちゃわちゃとしながら行く2人を、呆れた様子の昴流が追いかける。
それを見送り、宏樹と2人で既に集まっている他の班のメンバーの元に向かった。
「よし、じゃあみんな揃ったよね。」
宏樹以外のメンバーは、京、俊哉、優子、芳子、もえかだ。
(あれ、京くん一緒だったんだ。)
「赤津くん、同じだったんだね。よろしく。」
「うん、よろしく。俺も忘れてたよ。」
(あとは、俊哉くんか……喋ったこと、ないな。)
「みんな行きたいとこある?って言っても、羽田周辺で楽しめそうなとこって言ったら、中華街とかになっちゃうかな。」
「横浜?いいじゃん!食べ歩きとか楽しそう。」
副班長になった優子とは咳が近いのもあってそれなりに話す。
女の子と仲良くなるまでに時間がかかる空夜にとって、優子の存在はありがたかった。
「でも食べ歩きって結構お金かかるよね。」
「鈴本さんはどこか行きたいところあるの?」
あまり乗り気ではなさそうな芳子に宏樹が尋ねる。
空夜と京は黙って弁当を食べながらその様子を見守った。
「赤レンガ倉庫とか?」
「……見るだけ?」
「じゃあ、もえかちゃんは行きたいところあるの?」
「うーん、普通に横浜中華街でいいと思うんだけど。周辺にいろんなものあるし、食べ歩きに限らなくてもいいし……どっちみち昼ご飯はみんなで食べるわけでしょ?7人でお店入るより、食べ歩きの方がいいと思うんだよね。」
もえかの言う通り、7人で飲食店に入り、一緒に座って食べるというのはかなり難しい。
昼食時はどこも混む。
「じゃあ、赤レンガ倉庫通って、中華街行くのは?赤レンガ倉庫は中華街行くまでに通れると思うし、気になるお店あったら入ればいいし。」
宏樹がうまく3人の間を取り持ってくれた。
しかし、俊哉や京はそれでいいのだろうか、と空夜は思った。
空夜自身はあまり希望がないので、皆の行きたいところで構わなかった。
「としと京は、他に行きたいとこある?」
「ううん、俺は大丈夫。」
「俺も別に。中華街ちらっと見れればいいかなって感じ。」
「OK!じゃうちの班は、赤レンガ倉庫に行って、横浜中華街まわって、羽田に戻る感じで。」
宏樹は提出用の紙にサラサラと記入して、まだ教室にいた緋村に渡しにいった。
「じゃあもう、話終わりでいいよね?私ちょっと用事あるから、ごめん。」
芳子はそう言っていなくなってしまい、もえかも選挙管理委員の集まりがあるらしく早々に弁当を食べ終えいなくなった。
優子も1人は気まずかったのか元の席に帰る。
(なんか、大丈夫かな。)
微妙に女子の雰囲気が悪いような、そんな感じがする。
そういえば、芳子はアルトの中で音程が不安な子だったな、と空夜は思った。
「あれ大丈夫なの。」
俊哉が戻ってきた宏樹にそう聞く。
「なにが?」
「女子3人。なんか空気悪くね。」
「そう?少し意見が違うだけだと思うよ。大丈夫、ルートは時間的にも無理ないし、途中で寄りたいところできたら寄れるし。先生にもこれは大まかなルートでいいって言われたから。なんとなく空気読んでうまくやるよ。」
「……ふーん。宏樹がいいならいいけど。」
「まあでも、俺らだけは仲良くしときたいっていうか……としも京も去年同じクラスだったし、くーちゃんも良いやつだから心配はしてないんだけどさ!」
「そっか、3人は去年も同じクラスか。」
「うん、そうなんだよ。くーちゃん居心地悪かったらごめんね?」
「いやいや、そんなことないよ。京くんとは合唱コンのこともあってよく話すし。」
「……話したことないの俺だけか。村田俊哉、宏樹と同じサッカー部。なんか、ちょっと愛想悪いけど怒ってないから。」
「よろしくね。俺は赤津空夜。みんなはくーちゃんって呼ぶけど、なんでも好きに呼んで。」
「……じゃあ、空夜。」
「うんうん!!俺たちはギスギスしないようにしような。」
苦笑する宏樹は、いつもクラスの空気をいい雰囲気に保ってくれていて、その分苦労も多いだろう。
せめて遠足くらい、楽しませてあげたいなと空夜は思った。
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