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〜空夜side〜
(……って思ってたのに。)
遠足の日、朝。
合唱コンクールの練習もかなり本格化し、皆の仲もかなり深まってきた頃の遠足ということもあり、大半の班は既に集合して話しながら緋村が点呼に来るのを待っていた。
ところが空夜たちの班はまだ女子が揃っていなかった。
優子からは連絡が宏樹に来ており、電車の遅延で点呼の時間より少し遅れてしまいそうだという。
これについては既に緋村に報告し、緋村にも連絡が来ていることがわかった。
もえかは羽田に到着はしているが仲のいい他の女子生徒と話をしている。今この場にいないとはいえ、点呼までには戻ってくるだろう。
問題はまだここにおらず、連絡も取れていない芳子だった。
「鈴本さん、来ないね……」
「そうだね。」
空夜と京は乗り換えの途中で遭遇し一緒にやってきた。
宏樹は2人が着いた時点で既におり、俊哉も宏樹と家が近いらしく一緒に来たと言っていた。
「宏樹くん、大丈夫かな。」
「星谷くん、今は班長で呼ばれてるんだっけ。」
「そうそう。……あれ、俊哉くんは?」
「村田くんも星谷くんと一緒に緋村先生のところに行ったよ。多分、鈴本さんの話じゃないかな。」
「そろそろ点呼だよね!」
そう言ってもえかが戻ってきた。
それとほぼ同時に宏樹と俊哉も帰ってくる。
「とりあえず先生が鈴本さんに連絡してくれてる。青原さんはあと5分くらいで着きそうだって。」
スマホを見ながら、宏樹がそう言うのに空夜と京は頷く。
「優子ちゃんの電車遅延してるんだっけ?」
「なんか地元の方の路線で人身事故があって、出発がかなり遅れたみたい。でもあと5分ってことは、点呼より少しすぎたら着くくらいだよね。」
「そうだね!緋村先生も知ってるんでしょ?」
「うん。」
「鈴本さんは星谷くんにはまだ何も連絡ないの?」
「そうだね、今のところ……」
「ふーん……」
もえかは不満そうで、芳子のことをあまりよく思っていないのだなと空夜は思った。
「ま、まあ!緋村先生からの指示を待とう。」
そうこうしているうちに点呼が始まり、順番に緋村が確認していっている。
そして空夜たちの班には最後にやってきた。
「鈴本と青原以外はいるな。全員で出発すると電車が混むから、時間差で出発することになってる。とりあえずここの班は1番最後にしてもらったから、それまでは鈴本のことを待ってみてくれ。その間に連絡もつかず、来る様子もないのであればお前らは出発して構わない。先生たちがここで待ってるからな。」
「わかりました。」
「星谷悪いな、色々大変なことをさせて。」
「いえ!青原さんは5分くらいで着くと先程連絡あったので、すぐにくると思います。」
「ああ、わかった。もし何かあったら、俺はあの辺にいるから声をかけてくれ。」
「はい。」
緋村は他の学年担任たちが指示を出している場所を指差し、そちらに向かっていった。
「みんなごめんっ!!」
「あ、青原さん!よかった、事故大丈夫だった?」
「うん!私はぜんっぜん関係ないとこだったから。それよりごめんね!皆のこと待たせちゃって……」
緋村が離れてすぐ、優子が慌ててやってきた。
申し訳なさそうに手を合わせる優子に、宏樹は気にしないで、と声をかける。
「一応先生に報告してくるから、みんなはここで待ってて。」
「あ、私も行く!」
優子と宏樹は緋村に報告を終えるとすぐに戻ってきた。
「……あれ?芳子来てないの?」
「そうなんだよね。連絡も来てないらしくて。」
「えっそうなの?!なんかあったとか?」
「普通に遅刻じゃない?朝練とかもよくあるじゃん。」
「えぇー、でもさすがに遠足は連絡くらいするでしょ。」
「……アルトで朝練する時、遅刻がよくあるの?」
優子ともえかの会話があまりに気になって、空夜が口を挟んだ。
「あー、うん、まあ……理央もちょっと困ってて……遅刻するのはいいから連絡して、って言ってるんだけど1回も連絡来たことなくて。」
優子が困ったようにそう言う。
これはあとで昴流や兼とも相談だな、と思った
「鈴本さんって、音程が不安な子だよね。」
「あ、うん。」
京がこっそり話しかけてきたので、空夜も小さな声で答える。
「もしかして、音程が心配で朝練嫌なのかな?」
「そっか、それもあるかもね……あとで昴流とかしけんとも話して、鈴本さんと個人的に練習する時間を作ったりとか、なにかできたらいいね。」
「そうだね……でも、連絡しないのは困るよね……これは俺と樫本くんから言ってみるようにする。」
「うん、お願い。」
と、決めてみても、目の前の問題は解決していないのだが。
「星谷!」
ため息をつきかけたとき、緋村がこちらに走ってきた。
「今鈴本から電話が来て、あと10分ほどで着くそうだ。色々と事情があったようだから、本人にはあまり聞かないように。みんなも頼むな。」
「はい、わかりました。」
「「はい。」」
「じゃ、うちのクラスの時間内で間に合うだろうから、クラスで最後の出発にしてもらうな。」
「はい、ありがとうございます!」
(ひとまず安心だ。)
合唱コンクールのことはあとで考えるとして、これで今日はなんとかなりそうだと空夜はほっとした。
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