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〜空夜side〜
「ついた……」
「なんか、宏樹くん疲れてない……?」
「えっ?!そ、そんなことないよ!ちょっと息苦しかったかな!」
(大丈夫かな?顔も赤いけど……)
「空夜、行こ。」
「えっ、あ、うん。」
俊哉に呼ばれ、先に女子たちが歩き出しているのを追う。
(京くんもそばにいるし、大丈夫か。)
あまり並んで歩くのも邪魔だと思い、空夜は俊哉の隣を、京と宏樹が後ろを歩く。
優子ともえかが地図を見ながら、出口や駅を出たあとの道を調べてくれていた。
芳子も一応会話には入っていて、なんとかなりそうである。
「空夜は中華好き?」
「うん。家でも出てくるし好きだよ。」
「餃子とか?」
「うん。あと小籠包とか?お母さんが作ってくれるんだ。」
「手作り?!」
「えっ?あ、うん。」
「空夜のお母さん、料理上手いんだ。」
「あー……うまい、かな、多分。小さい頃から当たり前だったからちょっと感覚麻痺してるかも。」
「空夜も料理できんの?」
「いや、俺は全然。弟の方がめちゃくちゃ上手で、お菓子とかも可愛いの作ったりしてる。」
昂は恋に教わった料理や裁縫などが趣味になりつつある。
中学生の腕前とは思えないほどだ。
「へぇ……空夜が作ったの食べてみたいかも。」
「え?!俺はほんとに作れないからね!いつも持ってきてる弁当もお母さんが作ってくれるやつだし……洗い物とかは手伝うけど、料理はかんっぜんに甘えてるから。」
「くくっ、苦手なの?」
「うっ、どちらかというと苦手かもしれない……」
俊哉がクスクス笑う。
(笑ったとこ、初めて見たかも。)
思わずじーっと見つめてしまって、その視線に俊哉が気がつく。
「……どうかした?」
「あっ、ごめん。笑ったところ初めて見たなって思って。」
「そうだっけ。」
「俊哉くんって、すごくクールだなって思ってた。」
「……そう?まあ、冷たいってよく言われるけど。」
最初の目的地、赤レンガ倉庫まではまだ距離がある。
この機会にたくさん話してみたいなと空夜は思った。
「冷たくはないんじゃない?宏樹くんのことよく手伝ってるよね。」
「……まあ、級長に宏樹を推薦したの俺だし。」
「それでも優しいなって思うよ。」
「……ありがと。」
少し照れたのか、ふい、と視線を逸らされた。
「俺の方が冷たいと思うよ。俺、自分と関わらない人のこと全然覚えないんだ。」
「それは普通じゃね?」
「いやぁ……昴流にも陸玖にも、空夜はドライって言われるんだ……あの2人も人のこと言えないと思うんだけどね!」
「ドライ、ねぇ。まあ、お前らには媚び売るやつとか、必要以上に話しかけるやつも多いし、仕方ないんじゃね。うちの学園では芸能人の子どもは珍しくもないから少ないかもしんないけど。」
「まあ、そうだね……そういうところは、原因の一つかもな。特に昴流は……」
「あいつなんでもできるもんな。いいやつだし、人望もあるんだとは思う。」
昴流は素行があまりいいとは言えないが、テストの成績は常に1位、行事にも真面目に参加するし、友人思いだ。
空夜たちのような幼馴染以外からも人気があるのは事実だった。
「あんまベタベタしてる女子がいるのを見ると、可哀想だなって同情するけど。」
「あはは……あれでもマシなんだよ。中学生のときはもっと酷くて。」
「へぇ……空夜は?」
「え、俺?俺は全然。まあ、告白されたりは何度かあったし、恋人もいたことはあるけど……」
「恋人、いたんだ。」
「うん、人並みにはね。」
「女子?」
「どっちもいたことあるよ。女の子の方が多かったけど。」
俊哉が恋愛の話にこんなに食いついてきたのは意外だった。
「空夜から告ったりもしたの?」
「いや、1回もない。」
「……1回も。」
「うん、1回も。」
すぱっ、と遠慮なく言い切る。
事実は事実である。
「じゃあ、全部向こうからか。」
「うん。なんか、告白されないと好きになれないというか……あんまり恋愛がわかんないというか?自分から好きだなぁって思ったことなくて。でも、付き合い始めると確かにその子のこと好きにはなるから、恋愛感情がないわけではないんだよね。」
「……ふーん。」
「さすがに急に告白してきた人には引いたけど。」
「へぇ、まあそりゃそうだよな。」
その後もどんなものが好きかとか、趣味は何かとか、そんな話をしながら歩いていくと、赤レンガ倉庫が見えてきた。
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