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〜俊哉side〜
6月2日
合唱コンが週末に迫った日。
俊哉たちバスパートは最終調整のパート練習を行おうとしていた。
もう今は部活前にあるクラスでの放課後練習では合わせ練習ばかりで、パートで細かい練習はできない。
今週いっぱいは部活後の居残り練習も申請すれば認められていて、それを狙って昴流が計画したパート練習だった。
(音楽室借りたって言ってたよな。)
茅野学園高校は音楽室が2つあり、1つは授業でよく使っている大きい第1音楽室、もう1つは吹奏楽部が使う打楽器も置いてある小さめの第2音楽室だ。
第2音楽室の方を借りたと聞いていたので、俊哉はそこを目指す。
(まだみんな来てねえのかな。)
いつもなら合唱練習の時は外に荷物が置いてあるのだが、今日はない。
ちらりと第2音楽室を覗くと、空夜がいた。
(えっ、ラッキー……?)
もう少し覗き込んで気がついた。
空夜1人ではない。
グランドピアノ側に昴流がいる。
身を乗り出し、2人でピアノの上に置いてある何か、おそらく楽譜を見ている。
(距離ちっか……幼馴染ってこんなもんなのかな。)
指揮者と伴奏者であることもあり、あの2人が一緒になにかしていることは多い。
兼と光樹も入れた4人組はすっかりイツメンになっている。
昴流は空夜よりもクラスメイトに対して壁があるように感じるが、そんな昴流も空夜には気を許しているように見える。
(幼馴染っていいな。)
小さな頃から知っている、なんてもし恋敵になったら勝てっこない。
空夜はともかく、昴流の方は空夜に恋心がないなんて言いきれない。
「はぁ……」
「なにしてんだー?」
「うぉわ?!」
「あ、ごめんな?驚かせた?」
「いや……って、樫本……と京?なんでいんの?」
「俺ら実行委員だからさ!今日の練習にも付き合うことになってんだ。」
「他の皆はまだ来てないの?」
「あ、うん……」
「てかなんでむらちゃんは入らないんだ?」
(むらちゃん……?まあいいか。)
「あー、いや……」
「ん?あ!くうちゃんときのちゃんが練習してんのかー!そりゃ入りにくいよなぁ。あの2人、練習始めると性格変わるっていうか……かっこよくなるけど、邪魔しちゃいけない感じするよな。」
「確かにね。でもそろそろ時間だし、入っていいんじゃない?」
「だねー!」
兼と京はすんなり扉を開けて入っていってしまった。
俊哉もここで立ち尽くしているわけにもいかないので、後を追った。
「お、悪ぃ、もう時間か。」
「そっか、バスのパート練習だったね。」
「きのちゃんとくうちゃん、部活終わってからずっとやってたの?」
「あーまあな。今日俺らは基礎練で、吹奏楽部もここ借りてるからか少し早く終わって、30分くらい時間あったから、細かい調整してた。」
「へー!お疲れさんだよ。外の運動部、さっき終わってたとこ多かったから、もうすぐ来ると思うぜ!」
「体育館組はもう少しかかりそうだったよ。」
「ん、ありがと。村田は早かったな。」
「ん?お、おぉ……まあな。」
なんとなく、昴流に対してそっけなくなってしまう。
我ながら心の狭い男だ。
「おっすー!遅くなってすまん!!」
津野直哉の声を皮切りに、野球部などの外部活メンバーがぞろぞろ入ってきた。
「あーっ!みんなまって!それ荷物は外に置いてきて!!ここ狭いから、その荷物おけない!」
空夜がそっちにスタスタと向かっていって、つい目でおってしまう。
「ごめんー!!間に合った?!」
体育館組も合流し、バスパートが全員揃った。
「じゃあ始めるか。空夜とかしけんと京はなんか気になったことあったら言ってくれ。」
「わかった。」
「おっけぃ!」
「うん。」
(……いつの間に京のこと呼び捨てにするようになったんだ?)
昴流の呼び方が変わっていることが気になる。
しかし最近はよく一緒に練習計画を立てているし、苗字より名前の方が都合がよかったのかもしれない。
単純に友人として仲良くなった可能性もある。
(はぁ、気にしすぎだな。)
頭を切りかえて、練習にしっかり取り組むことにした。
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