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〜空夜side〜
6月5日
いよいよ合唱コン当日。
B組はグレーのスーツに青いシャツが男子の衣装で、昼休みにそれに着替える。
陸玖たちのクラス、A組は空夜たちの3つ後で、恐らくB組が出番を終えて着替えて戻ってきたらちょうど始まるくらいだ。
A組の指揮者、野田航とは一緒に練習をしたり、お互いの指揮に対して指摘しあったりした。
今日はライバルになるが、昨日も夜にLINEして、お互い頑張ろうという話になった。
「くーちゃーん!」
光樹がパタパタと走ってくる。
既に着替えが終わったようで、スマホ片手に何人かと写真を撮っていたようだ。
「くーちゃんも写真撮ろ!航も着替えてたから呼んできたから!」
「航も?ってことは新と陸玖も終わってるかな。お母さんから写真撮ったら送ってって言われててさ。」
「あ、そうなん?木之本も?もしそうなら俺撮るよ!」
「助かる!昴流たちも呼んでくるからちょっと待ってて。」
「りょー!」
まだ更衣室にいた昴流に声をかけ、新と陸玖にはLINEを送る。
A組の衣装は確か真っ白い王子様の服みたいなものだ。
自由曲が「空駆ける天馬」で、天馬とかけたとかなんとか、陸玖が言っていた気がする。
衣装の全ては、恋が作っていたけれど。
「お、くーちゃんやっほー。」
「航。クラスの仕上がりはどう?」
「完璧。そっちは?」
「もちろん完璧。楽しみにしてるよ。」
「俺も楽しみー。とりま写真1枚撮らん?光樹も。」
「うんうん、撮ろー!」
「……撮ろっか。」
「あ、昴流、お願いしていい?」
「ん。」
航が昴流にスマホを預け、3人で写真を撮る。
「あ、空夜くーん!やっと見つけた、写真撮ろ!」
同じく昼休みに着替えていた3年生の吹奏楽部の先輩に声をかけられて振り返る。
学生指揮者の先輩で、入学式はこの先輩が指揮を振っていた。
今は受験のため一時的に部活から離れているが、空夜は年明けからよくお世話になっていた。
「ちょっと行ってくる。陸玖たち来たら待ってて。」
「ん、わかった。」
昴流に声をかけ、先輩たちの方に行って写真を撮る。
後で送るね、と手を振られてぺこりと挨拶をしてから帰ってくると、陸玖と新も揃っていた。
「おーし撮ろうぜ。」
「新、お母さん来るの?」
「どうかなぁ。まだ産休中とはいえ仕事の関係で忙しそうでさ。正直無理して欲しくないから、来なくていいって言ったんだけどさぁ。」
「張り切ってるんだって。」
同じクラスの陸玖は既に話を聞いていたようで苦笑している。
新の母、傑は子どもの行事は何としても見に行ってあげたい、と新たちが小さな頃から言っていたようで、それは高校生になった今も変わらないらしい。
「自分が見に来てもらえなくて寂しかったから、そういう思いさせたくないって、そりゃ嬉しいんだけどさ。それより体いたわれっつーの。」
「……おい、さっさと撮ろうぜ。」
昴流が呆れたように声をかけ、やっとスマホを構える光樹の方を向く。
4人で写真を撮るのはなんだかんだで久しぶりだ。
「空夜兄さーん!陸玖兄さーん!」
「「あ。」」
「お、昂じゃん。元気そうだな。」
「あー!新くんがいる!!」
「俺はいちゃ悪ぃのかっ!恋さん、この前はどうも。」
「いえいえ、あれから傑大丈夫?しばらく会えてなくて。連絡は取ってるんだけど。」
恋と瑠梨、昂が会場に到着していて、話が盛り上がり始めてしまったので、光樹と航にはまた後で、と声をかけた。
「すーくん、かみ、あかいねぇ。」
「ん、触る?」
昴流が瑠梨の相手をしてくれて、その様子を見ていると見かけとは全く違った優しさが感じられる。
「木之本ん家は来ねえの?」
「さー?来ても目立つしやめて欲しいけど。」
「翔也さんはお仕事ないって聞いてるけど……」
「げぇ。」
恋の発言に昴流は顔を顰める。
確かに、ここに翔也が来たらひと騒ぎありそうだ。
「まあ変装してくるんじゃない?」
「……変装したっていちゃついてたらバレんだろ。」
陸玖に対しても昴流は顔を顰めたままそう答えた。
「まあ、そんなこと言ったら、俺んとこも来たら即バレな気はするけどな。」
「あー。新んとこ、テレビ露出多いもんな。」
「そーそー。母さん来たら即バレだよ。昴流、お互い様ってことで諦めようぜ。」
「うげぇ……やだ……」
べぇ、と舌を出す昴流に恋がくすくす笑う。
その時トントン、と後ろから肩を叩かれて振り返る。
「あっ、ごめんね、お話中だった?」
「ううん、平気……って、あ?!もうこんな時間か!」
B組は午後3番目で、もう点呼の時間だった。
まだ来ない昴流と空夜を京が迎えに来てくれたようだ。
「今行くわ、京先行ってて。」
「うん、わかった。」
「お母さん、俺たち行くね。」
「うん、行ってらっしゃい。頑張ってね!」
「くうにいちゃん、すーくん、がんばぇー!」
「おっ、瑠梨贔屓かー?俺たちも応援してよ。」
「りくにいちゃんとあーくんもがんばぇー!」
瑠梨に応援してもらって、すっかり頬が緩んでしまった。
「空夜兄さんも陸玖兄さんも頑張ってね!!」
昂にも手を振って、昴流と空夜は一足先に一度ホールに戻る。
陸玖と新もクラスのほかのメンバーと合流した。
(よし、いよいよ本番だ。)
悔いの残らないよう、一生懸命頑張ろうと自分に言い聞かせ、昴流と目を合わせて頷きあった。
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