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〜昴流side〜
車が走り始めてすぐは皆で話の続きをしていたのだが、少し走ると兼がうとうとし始めた。
人の車のためか寝ないようにしているのだが、首がかくん、かくん、と揺れ、話している最中も瞼が落ちそうになっている。
「……かしけん、寝てもいいぞ。」
「いやいやっ!おくってもらってるのに……ねむる、わけには……」
話しながらもうと、うと、と船を漕ぐ兼の様子はまるで赤子である。
「あはは、気にしないで寝て構わないよ。送るって言い出したのは俺だしね。」
翔也からミラー越しにそう言われると、兼はむむむ、と迷ったあとで、お言葉に甘えて、と言った。
その後眠るまでは3秒だったと思う。
「空夜くんも京くんも、昴流も眠かったら寝てていいよ。起こすから。」
「俺は大丈夫です。ありがとうございます。」
空夜はすぐそう返したのだが、京の返事がない。
礼儀正しい男だから珍しいなと思い隣を見ると、京も眠たそうな顔をしている。
まだ眠りについてはいないものの、あまり思考が働いていないのかもしれない。
「……寝れば。」
「ん……」
かろうじて反応は返ってくるが、とろんとした瞳に眠たそうにぱちぱちされる瞼。
(ガキみてぇ。)
ピアノの先生の吉田の息子とよく遊ぶ昴流にしてみれば、兼や京の反応は本当に子どもみたいだった。
京の頭を自分の肩に寄りかからせて、頭をポンポンと撫でる。
子どもは大抵これで眠るからだ。
「……本当に俺の息子……?」
「いや、完全にこれは翔也さんの行動と同じでしょう。」
「うそぉ、俺はこんなにたらしじゃありませんっ!」
翔也と空夜の会話はかなり謎だが、あえて突っ込むのも面倒なので放っておく。
京は間もなくスヤスヤと寝息を立て始めた。
「2人のお家どの辺だろう……」
「かしけんのお家はわかんないけど、京くんは駅から少し住宅街に入るみたいでした。」
「ふぅむ……でも細かい場所が分からないとさすがに住宅街入るのは怖いなぁ。とりあえず駅でいいか。」
2人が眠っているため、車内は無言になる。
しばらく走ると、兼の最寄り駅に到着した。
「かしけんー、駅着いたよ。」
「んっ、ぅぅ……あとごふん……」
「ふふ、帰って好きなだけ寝な?」
「ん、はっ……!ごめんくうちゃん!」
空夜の腕に巻きついた兼が、布団の柔らかさと違ったからか目を覚まし、慌てて離れる。
「大丈夫だよ。けど、京くんも寝てるから静かにね。かしけんの最寄り駅ここだよね?」
「あ、うん、そう。きのちゃんのお父さん、ありがとうございました。」
「いえいえ、気をつけて帰ってね。」
「はいっ。」
昴流と空夜に手を振って、兼が車を降りる。
京の最寄り駅もここからすぐだ。
「京。京……着くぞ。」
「ん……ぇ、あっ、ごめんっ!寄りかかってた。」
「平気。疲れてた?」
「うーん、そうかも……こんな時間まで友達と過ごすことってなかなかないから……それこそこの前のお泊まり会くらいで。」
京の家は親が忙しかったりするのだろうか。
それとも親がいないのだろうか。
家庭事情は人それぞれだ。
昴流はそういったことは問い詰めないようにしている。
自分が聞かれたくないからだ。
「この前赤津家にお泊まりしたんだってね?もしよかったら家にも遊びにおいで。赤津家ほど広くはないけどね。」
「ありがとうございます。」
「無視していいから。」
クスクス笑って答えた京に、昴流は翔也への呆れを滲ませながらそう言った。
「でもまた遊びたいね。4人で。」
「そうだね。俺も楽しかったし、またお泊まりもしたいな。」
「ま、普通に飯食いに行ったりしてもいいしな。」
「そうだね。LINEグループもあるからいつでも企画できるし……今度京くんのダンス大会もあるよね!」
「あ、うん。今月末に。」
「その日部活午前だけで、午後は間に合いそうだからみにいくね!」
「ほんとに?ありがとう!」
「俺もその日は自主練だったから、ダンス行くわ。俺の勉強にもなるし。」
「俺も昴流くんのフィギア見てみたいんだよね。今度大会とかあったら教えて。」
「おー。」
「さて、駅に着きましたよーっと。あれ?もしかしてあれ京くんのお父さんかな?」
駅前に周囲を見回している男性がいた。
「あっ、そうかも。さっき送ってもらうって連絡したから……」
翔也はその辺に車を寄せて停めた。
男性はこちらに気がつき、少し見てから近づいてきた。
「あっ、お父さんだ。」
「お、じゃあちょっと挨拶しとかないと。俺不審者じゃないですって。」
翔也がおどけたようにそう言って車の窓を開ける。
「こんばんは。すみません、時間が時間だったので、息子さんを車に乗せてしまいました。」
「あっ、こんばんは……!こちらこそすみません、お手数をお掛けしまして……」
「いえいえ。息子を迎えに行ったついでですから。いつも息子がお世話になってます。」
「とんでもないです。」
「お父さん、この子だよ。この前俺を庇ってくれたの。」
車を降りた京が、昴流の方を見ながら父親にそう話している。
(庇った?もしやアレルギーの話か……?!)
「そうだったのか!どうもありがとう。」
「いや……その、たまたま、近くにいただけなんで……」
京の父はにっこり笑った。
「遅くにありがとうございました。」
「いえいえ、お気をつけて。」
「はい。」
「2人ともまたね。」
「またね!おやすみ。」
「おー、おやすみ。」
京が歩き出すのを見送り、翔也が窓を閉めてまた車を走らせる。
空夜を家に送り届けたあと、翔也と昴流も帰宅した。
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