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〜新side〜
(やっば、ねみぃ……)
話が盛り上がってしまって、寝るのが遅くなった新は大きなあくびをした。
野球部が隣のグラウンドで朝練をしているが、陸玖は誰かに怒られている。
(あれは……噂のゆうくんかな。)
遠目だとなんとなくしか顔が分からない上、その男はキャッチャーマスクを被っていて余計に見にくい。
恐らく篠田悠平だろうという見当かたつだけだった。
「新?ぼーっとしてるけど大丈夫?」
「んぁ、悪ぃ。」
同じサッカー部の星谷宏樹が心配そうに声をかけてくる。
宏樹は空夜のクラスの級長だったな、とふと思った。
「宏樹、次だぞ。」
「お、今行くー!」
同じく空夜のクラスで、宏樹とは幼馴染だという村田俊哉に呼ばれ、宏樹は走っていく。
俊哉は寡黙で、仲良くなるまでに少々時間がかかったが、真面目ないいやつである。
「新ー、俺ら次ー。」
「あーい。」
同じクラスのサッカー部、栗山巽(くりやまたつみ)に呼ばれて新もグラウンドの中央に走っていった。
朝練を終え、巽と向かった更衣室で宏樹と俊哉と一緒になった。
「おっつー。」
「お疲れ様。ね、巽か新さ、樋野(ひの)さんと仲良い?」
「「樋野?」」
宏樹からの問に、思わず新と巽の声がハモる。
「なんで急に?」
「俺あんま話したことねぇわ。」
「うーん、実はさ、先週の級長会で樋野さんと一緒に仕事するのが決まったんだけど、その時連絡先交換できなくてさ……すごく早く帰っちゃって。」
「なるほどねぇ。俺もあんま話したことないなぁ。」
「巽と新が話したことないんじゃ、俺じゃ無理だなぁ。」
新も巽も比較的女子と話せる方だ。
宏樹は話しかけられれば、という感じで、自ら話しかけに行くのは苦手らしい。
「まあ、一緒にクラスに行って、宏樹が話あるって、くらいは言えんじゃね?」
「あー確かに。それなら。」
「マジで?お願いしたい……」
「今から行く?樋野さん来てるかな?」
巽が着替えを終えてそう言う。
先程から俊哉が一言も発していないのが新は気になった。
大丈夫だろうか。
「行ってみて、もしいなかったら昼休みにまたA組行くわ。」
「おっけー。新、今日は昼休みいたよな?」
「ん?おー、いる。」
「樋野さんってちょっと怖くてさ……俺1人で話しかけに行くのきっついわ。」
新は正直、樋野についてのイメージがあまりない。
「としは先教室行ってる?」
「いや、ついてく。」
4人でA組に向かう途中、廊下で同じクラスの野田航と会った。
「お、航おはよーっ。」
「巽おはよ。新もおはよ。」
「おー。今日遅くね?」
「んー、ちょっと朝寝坊した。昨日遅くまでLINEしててさ。」
新が言えたことではないが、航は返信がマメなタイプではないので珍しい。
(そういえば空夜も昨日、やけにスマホ見てたな。)
空夜はメッセージがくれば返信をするというタイプだから、メッセージがこなければLINEなど1度も開かない。
「てかみんなでどうしたの?」
「宏樹が樋野さんに用事あるんだって。」
「樋野さん?さっきB組の方入っていったけど……」
「まじか?!」
「うわ、びっくりした。」
急に項垂れた宏樹に、航がびくっと跳ねる。
「とし……助けてくれ……」
泣きつく相手を間違えているような気がするが、仕方あるまい。
「……とし?」
全く返事をしてくれない俊哉に宏樹が首を傾げる。
「……あ、え?なんか言ったか?」
「ええ?!なに、とし寝ぼけてんの?」
「寝ぼけてないわ。」
「樋野さん呼んだげよっか?」
「えぇっまじで?!野田くん神ー!」
見かねた航が苦笑しながらそう言ってくれて、宏樹は抱きついている。
航がB組のドアのところから樋野を呼ぶとすぐに本人が出てくる。
宏樹はそこで会話を済ませ、連絡先を交換し始めた。
「……俊哉、なんか機嫌悪い?」
巽がそう問いかけると、俊哉は無表情のままこちらを向いた。
「別に。」
「めっちゃ悪いじゃねぇかよ。」
「……はぁぁぁぁ、俺は心の狭い男だ。」
「え、なに、急にどうした。」
「こんなんだから俺は……」
「ネガティブモード?」
新と巽が話しかけてもそれには答えず、俊哉はため息をつく。
「……なんかよくわかんねぇけど、話なら聞いてやるよ。」
「言ったな?」
「え?」
急に顔を上げた俊哉が、新の肩をがっしりと掴む。
「昼休み、空けとけよ。」
「お、おう?」
「巽もな。」
「えっ俺も?」
満足した様子の俊哉はB組に入っていってしまい、新と巽は取り残されて顔を見合せた。
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