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〜新side〜
「新、お待たせ。」
空夜に声をかけられて振り返る。
「おー。なんかさっき電話来てさ。母さん今日もお前ん家いるらしいから、俺も行くわ。」
「あ、そうなの?」
「うん、今日は颯と澄もいるって言うから。」
傑が恋と買い物に行った後、そのまま赤津家に戻り、颯と澄を傑が迎えに行ったらしい。
「そっか。宏樹くんと俊哉くんも部活お疲れ様。」
「くーちゃんもお疲れ!」
「お疲れ様。」
「2人も誰か待ってるの?」
「ううん!新がくーちゃん待つって言うからちょっと話してただけだよ。これから帰るところ。」
「そうだったんだ、なんかごめんね。」
「いや、俺たちが勝手に新と残ってただけだから。気にすんな。」
「んじゃ、空夜も来たことだし帰るか。」
「そうだね!」
駅までは全員一緒なのでそろって歩き出す。
(……気まずいな。)
空夜と航が一緒にやってきてしまったことにより、三角関係の当事者が揃ってしまった。
そしてそれを知っている自分。
何も知らない空夜は仲良さげに宏樹や航と話している。
(いや、しんど。)
俊哉はさっきから一言も喋っていない。
元々寡黙な方だとはいえ、新としては気になって仕方ない。
いつもなら宏樹が何か話を振ってくれたりするのだが、朝のことがあったからなのか宏樹は航といろいろ話していてこちらの様子に気がついてくれない。
「2人とも大丈夫?疲れてる?」
辛い沈黙を破ってくれたのは空夜だ。
「いや、平気。」
「俺も別に疲れてはない。いや、疲れてるけど……」
「ふふ、どっち。」
俊哉がテンパったのか謎の発言をして、空夜がくすくす笑う。
「あ、そういえば、今度ダンス部の友達が社交ダンスの大会に出るんだって。昴流とかと見に行くんだけど、みんなもどう?結構大きい大会みたいで、人たくさん入れるって聞いてるんだけど。」
「え、もしかしてそれって京?」
「うん。やっぱり宏樹くんは知ってたんだね。」
(やっぱりってなんだ?)
不思議に思ったがわざわざ聞くほどのことでもないので、口には出さなかった。
「26日の土曜日なんだけど、サッカー部は部活あるのかな?」
「14時くらいまでだったよな。」
「確かそう。宏樹行くのか?」
「んー、見に行きたいけど間に合うかな……」
「準決勝くらいからなら間に合うかも?」
「じゃあ行く!京が勝ち残ってくれると信じて。」
「……なら俺も行く。」
「としも?珍しいな。」
「たまにはな。」
「悪ぃ、俺はパス。その日夕方バイトあるんだわ。」
「俺も午後からバイトだー。」
航もアルバイトがあるようで行かないと言うと、俊哉がちらりと空夜の方を見る。
わかりやすい。
その後は新だけが俊哉と航の様子が気になるだけで、特に何事もなく駅に到着した。
駅からは宏樹と俊哉とは逆方向のため、ホームで別れた。
電車に乗って数駅は航と空夜と他愛ない話をしていたが、航が降りていって、いよいよ空夜に本題の話を切り出すことにした。
「……航と付き合ってんの?」
「えっ?!」
直球すぎたかと思ったが、幼馴染だ。今更である。
なんならセックスについての価値観だとかまで掘り下げて恋愛相談をしあうこともあるくらいだ。
「いや、付き合っては、ない……」
「……でもヤった?」
「ヤってません。」
空夜が苦笑する。
「じゃあ好きなん?」
「うーん、ちょっとわかんない、かな。」
「わかんねぇから保留にしてる的な?」
「まあ、そうかな……」
(やっぱ告白はされてんのか。)
「なんか珍しくね?結論すぐ出さねぇの。」
「だよね……俺らしくないというか。」
「いや、別にいいと思うけどな。」
「なんか、わかんないなぁって思ったの初めてでさ。そのまま断るのも違うかなぁって思って、付き合うかどうかを考える前提で、遊びに行ったり連絡とったりしてる。」
「ふーん?じゃあ空夜も少なからず航のこと好きなんだな。」
「そうなのかな?」
「好きじゃなきゃ、最初から断るだろ。」
「確かに……」
思ったよりも空夜が航に対して思いを寄せているようで、俊哉の望みは薄そうだなと新は思った。
「……ていうか話ってこれ?」
「そう。ちょっと気になって。」
「もしかして、わかりやすい?」
まさか俊哉から相談を受けたから気になったなどと言えるわけがない。
しかし他の人は気がついていないだろう。
「いや、わかりやすくはない。普段の空夜にしては珍しいなって俺が思っただけだから。」
「そっか……」
空夜は納得してくれたようで安心する。
「……実は、キスされたからさ。」
(嘘だろそれ言うんかい。)
「もしかして見られたりしたのかと思って。」
あはは、と笑う空夜だが、まさに俊哉には見られている。
「そ、そうか。航って意外と積極的なんだな。」
(見られてるよ、なんて言えるわけねぇだろ……!)
新は何も知らないフリをして、笑って誤魔化した。
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