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〜空夜side〜
「なんか増えてねぇか。」
兼の一言で企画された勉強会。
教室を使って、昴流が先生の代わりに皆に教えるというものなのだが、その生徒側の人間が今日は増えていた。
「だって、空夜がそういうことやってるって家で話すから……なら俺も教えてもらいたいなって思って。」
「陸玖が行くって言うから、俺も興味が湧いた。お前は学年でもいつも優秀な成績だからな。」
「……陸玖と篠田はまだいい。なんでお前がいるんだ、智陽。」
企画された時のメンバー、宏樹、俊哉、兼、空夜に加えて、クラスで話していたらやりたいと言い出した光樹と京、それから家で話した陸玖に誘われてやってきた悠平、さらになぜかいるのが智陽だ。
「お前は成績いいだろうが。」
「ダメなの?光樹からも京からも聞いて、面白そうだなぁって思って。それに、昴流が教えるなら僕も聞いてみたかったから。」
にこ、と爽やかな笑顔を浮かべる智陽に対し、昴流はため息をついた。
「それに京や赤津くん、えっと空夜くんの方だって勉強できるのにここにいるじゃない。」
それは確かにその通りなのだ。
京はテストの合計点の順位で10番以内に入ることもあるし、空夜も自力でできないわけではない。
どちらかというと順位も毎回上のほうになる。
定期テストに限らず、模試などもそうなので、トップクラス、と言ってもいいだろう。
もちろん、昴流や智陽と比べれば全く及ばないのだけれど。
「空夜と京は手伝う名目もあるんだよ。得意科目に関しては他のやつらの面倒みるっていう。」
「なるほど。じゃあ僕も教える側になればいい?」
「……まあ、それならいいけど。」
「やった。」
「はぁ、じゃあ空夜と京には、いつも通り任せたぞ。」
「うん、光樹頑張ろうね。」
「お願いしますっ!!」
「樫本くんも最近いい感じだよ。」
「きりちゃん神様っ……!」
「宏樹と俊哉は、分かんないとこあったら。」
「ん、おっけー!」
「うん。」
この勉強会の間に名前の呼び方が変わって、なんだか友達らしくなってきた。
空夜は昴流がそういう人を増やせるのはいいことだと思っていた。
「篠田……ってどんくらいわかる?」
「理数は問題ない。歴史が苦手だ。」
「……じゃあ、今日はまず世界史やるから、智陽、篠田に詰まってるところ教えて。」
「はーい。よろしくね。」
「……っす。」
「俺は……?」
1人何も言われなかった陸玖が首を傾げる。
「お前は歴史そんなに苦手じゃないだろ。とりあえず聞いて、理解できなきゃそこで言え。お前がボーダーラインだから。」
陸玖がわからないということは、多分誰も分からない。
空夜と京は歴史に強いし、智陽と昴流はまんべんなくできる。
理解の基準にするのに、陸玖はちょうどよかった。
「なるほど!わかった!」
「あとついていけなさそうなところは、個別に説明も入れながらな。陸玖がわかんねぇとこは集中的に。んじゃやるぞ。」
「「お願いしまーすっ!」」
30分後。
「わ、わかってきた……!!」
目をキラキラさせる兼を見て、昴流も満足そうに頷く。
「ダメだ俺にはまだわからねぇ。」
「篠田くんは単語で覚えようとしすぎかな。歴史は流れだから……」
ノートを順を追って説明する智陽は、さすがに教え方がうまい。
宏樹や俊哉、光樹、陸玖は問題なく理解できているようだ。
「……そういうことか。」
「うん、簡単でしょ?」
「覚えるのはまだ難しいけど、理解はした。」
悠平も理解出来たところで世界史は終了。
次にやるのは兼が1番苦手な数学だ。
「どわぁぁ、出たー!!」
「怪物が出たみたいな言い方すんな。順番に1個ずつやってくぞ。」
昴流が数式を黒板に書き出した途端、兼は泣きそうな顔で京を見る。
「ふふ、大丈夫だよ。一緒に頑張ろうね。」
「ううぅぅぅ、きりちゃん……」
「篠田くん、理数は得意って言ってたよね。」
「あぁ、そうだな。特に理解できないところはないし、テストも毎回8割は取れてる。」
「じゃあ問題なさそう。京の方手伝った方がいい?」
「いや、陸玖につけ。」
「彼、成績は中の中くらいじゃなかった?」
「それは合計点だからだ。こいつの数学の理解力は底辺レベル。数1を教えるのに一体どれほど苦労したか……」
「あ、そうなんだ……?」
「1度理解すればスラスラとけるから、ここで理解させろ。」
「わかった。」
智陽が陸玖の隣に座ると、陸玖はにこーっと笑った。
あの顔は本当に何も分かっていないだろう。
陸玖の場合、理論を理解するまでに相当な時間を要する。そのため授業では理解しないまま終わってしまうのだ。
(計算なんかは早いんだけどな。)
公式があるものは問題ないが、その公式の理由なんかを聞かれたらもう終わりだ。
証明問題や図形問題も、その構造を理解しなければ全く解けない。
「じゃあ数学、やってくぞ!」
「っしゃオラァ!!」
「ばっちこいオラァ!」
なぜかオラつく兼と陸玖に、昴流は若干呆れながら最初の数式に取り掛かった。
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