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〜空夜side〜
慌ただしく日々がすぎていき、気がつけば明日から夏休みだ。
(野球応援の曲もコンクールの方も考えないと……)
学生指揮者の空夜はこの夏の練習について頭を悩ませていた。
コンクール曲の完成度はかなりあがってきているが、まだまだ荒削りなところもある。
それから野球応援の方は3年生でも参加するメンバーがいるため、調整も必要だ。
この学校の野球部は強い。それゆえ、吹奏楽部の応援にも力が入る。
本当なら吹奏楽部の人数が多く、コンクール組と野球応援組とで分かれたりするのだが、この学校の吹奏楽部はあまり人数が多くない。
1、2年生だけだと今年は50人だ。
コンクールは出場するクラスによって制限人数が決まっているが、毎年出場しているAというクラスでは55人まで。
全員出場しても枠が余る。
少数精鋭にするのであれば他のクラスに変えるのもいいが、茅野学園の吹奏楽部は全員出場を基本としていた。
野球応援の方は有志という形になっているが、毎年多くの部員が参加する。
またコンクールは1、2年生のみの参加だが、野球応援は3年生も参加することができる。もちろん受験があるため、無理のない程度ということにはなるが。
ひと夏に2つのイベントをこなし、それが終われば文化祭、続いて地区の音楽祭に定期演奏会と、吹奏楽部は通年で忙しい。
学生指揮者の空夜も多方面と相談を重ね、できる限りいいものを作ろうとしているため、なかなかハードなスケジュールをこなしていた。
(しかも今年は文化祭実行委員もあるからな。)
クラスの文化祭、とりあえず夏は個人練習、各グループのパート練習メインということになっているが、夏休み後半で1度、集まれるメンバーで全員集合するという話が出ている。
空夜が参加できるかはさておき、計画はしなければならない。
(間宮さんにも京くんにも負担かけてしまうな……)
空夜は来週から部活合宿があり、その間は連絡は取れるものの活動はほとんどできなくなる。
もしその期間になにかあれば琳におまかせ状態だ。
加えてダンス練習も個人で行う時間すらないだろうと予想され、光樹と空夜のことを考えながら練習スケジュールを考える京にも仕事を増やしてしまっている。
「はぁぁぁ……」
「くうちゃん大丈夫か?さっきからため息ばっかりだぞ?」
兼に心配そうに言われ、ごめん、と空夜は謝った。
「いやいや!謝ることはないけどさ!!なんか悩みごとか?」
「うーん、この夏やること多くて、すごく心配。」
「確かに、くうちゃんはお仕事多そうなんだぜ……」
「まあ、それもそうなんだけど……そのせいで皆に迷惑かけてしまうから……文化祭の練習とかも。」
「えぇ?!そんなことないと思うぜ!まあ皆いろいろ大変なことはあるけど、それはお互い様だしさ!俺バカだからなんも手伝えないかもしれないけど、できること頼まれればなんでもやるし!大変なのを助け合うのが友達だぜ。」
にぱーっと笑う兼を見ると、少し安心した。
「それに、くうちゃんたち吹奏楽部が夏が大変なのはわかりきってたんだ。それでも俺たち一緒に組むって決めたし、そこは女子グループもわかってて、吹奏楽部の皆が同じグループになるようにしたんだし。くうちゃんたちは一生懸命頑張って欲しい!!」
「ふふ、ありがと。かしけんは優しいね。」
「そうか?まあ俺たちも、なんだかんだ自分たちの試合とか練習とかいろいろあるしさー。野球部が甲子園もあるっていうんで、外部活皆で応援に行こうって話も出ててさ!きっと皆忙しい夏になるから……無理しない程度に、でもめちゃくちゃ楽しみたいじゃん!」
「そうだね。ふーっ、よし!俺も頑張る!」
「おー!」
「2人ともー、楽しそうなのはいいけど、掃除終わんなくなっちゃうぞ。」
「わーっほしちゃんごめん!」
「ごめん!ちゃんとやるね!!」
大掃除中だったことをすっかり忘れていた。
慌てて手を動かすのを再開すると、宏樹はクスクス笑った。
「なんか珍しいね。1学期中、2人とも掃除とかサボったの見たことないし。」
「いやー、くうちゃんがため息ばっかりつくから心配になっちゃって!ちょっと話しこんじゃった。」
「え、そうだったの?もう解決した?」
「うん!ひたすら頑張るのみ!!」
「あはは、なんかスッキリした顔してるね。」
悩んでいても仕方ない。
やるしかないと腹を括った。
「そういや、きのちゃんはどこ行ったんだ?」
「生徒会室に呼ばれてたよ。多分終業式のことじゃないかな。」
「会長はやっぱ大変だなぁ……」
「入学式サボるから呼び出されるんだよ。」
「……くーちゃんってたまに厳しいよね。」
「それな?」
「えっ、そう?」
宏樹も兼も苦笑しているが、空夜にはあまり自覚がない。
事実を述べたまでだ。
(……それが厳しいって思うのか。)
普段はあまり人に何か言うことがないから、余計にそう思われるのかもしれない。
(お母さんもそうだしなぁ。)
母、恋が怒るとその場の空気が凍るイメージがある。
普段声を荒らげることもなければ、叱ることさえあまりない恋だから、本気で怒らせた時がまずいというのは皆わかっている。
空夜も恋に似たのか、普段は割と温厚で、我慢ならない時に冷たく怒ることがある。
怒鳴り散らすだとか、叫ぶだとかではなく、プツン、と何かが切れた感じがするのだ。
昴流を平手打ちしたときはまだ冷静だったけれど。
「くうちゃんって、怒らせたらやべぇと思う。」
「同感だなぁ。昴流くんとかの100倍怖そう。」
「きのちゃんは怖そうに見えるだけでめちゃめちゃ優しいからな。」
「……なんか俺ディスられてる?」
「「そんなことない!」」
「おーいお前らー手が止まってるぞー!」
結局3人で話し込んでしまい、緋村に笑いながら注意された。
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