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〜明希side〜
「えっ?俺も行っていいの?」
「はい。千秋に言ったらOK貰えたから。」
「ほんと?やった!それで、話に出てた星くんっていうのはどんな子?」
「……それが、その子とは会えないかも。」
「何かあったの?」
翔也に話すのは少し躊躇われたが、先日あったことを教えた。
あれから完全に避けられていて、手紙は渡しているが読んでくれているかわからない。
千秋曰く、受け取ることは受け取るらしいのだが、その後どうしているかはわからないようだ。
「……そっかぁ。その子は男の人に嫌な思い出があるのかなぁ?」
「うーん、そうなのかも……まだそこまでは話を聞けるほどじゃないし、千秋たちも詳しくは知らないみたいで……」
「そうなんだ……俺が行ったら逆効果とかない?大丈夫?」
「わからないけど……会ってみたら変わるかもしれないし、いずれは会わないといけないから……」
「まあ、そうだよね……それに明希ちゃんがいいって1度は言ってくれてるわけだし、俺もその子に歩み寄らないとな。もし俺の努力でその子の嫌な気持ちが少しでも変わるなら、俺も頑張るし!身長縮めるとかは無理だけど。」
そう言って苦笑する翔也を見ていると、少し安心した。
翔也が優しい人だと分かってもらえれば、もう一度心を開いてくれるかもしれない。
「じゃあ、早速明日かな?」
「はい。千秋には明日って言ってあります。」
「うん、OK!不安だけど、楽しみだなぁ。話に聞くばっかりで会えなかったから。」
「ふふ、そうですよね。やっぱり会いたくなりますよね。」
「うんうん。でも嫌われたらどうしよっか……?」
「地道に仲良くなりましょ?」
「……それもそうだね!」
翔也が一緒に行ってくれるというだけで、心強い部分がある。
1度は自分を選ぼうとしてくれたあの子と、もう一度きちんと話せたらいいなと明希は思った。
*
「あらら……?」
困ったように笑う翔也と、足にぴったりと張り付いて離れない男の子を見比べて、明希はどうするべきか悩んでいた。
昨日まではまったく近寄ってきてくれなかったのだが、翔也の姿を見た途端、ダダダッと走ってきて明希の足にぎゅっと抱きついた。
それからはずっと翔也を睨みつけていて、明希から離れる気配はない。
「もしかして、俺嫌われたかな……?」
「そ、そうかもしれないです……」
無理矢理引きはがすわけにもいかないが、このままというわけにもいかないので、千秋も困っていた。
「星くん、明希さんにくっついてたら、明希さん困っちゃうでしょう?」
千秋がそう話しかけても、男の子は無視している。
「翔也さんが嫌いなら、明希さんとだけお話してもいいんだから、1回離れよう?」
「……やだ。」
「どうして?」
「あきは、おれのおかあさんになるの。」
どうやら明希を嫌いになったわけではないらしい。
それは少し嬉しい。
「それなら、翔也さんともお話してみないといけないね。」
「やだ。あきだけでいいもん。」
(なるほど、俺から離れないのは、翔也さんに取られたくないからか。)
「おっとぉ……これは俺かなり嫌われてるな……」
「あきからはなれろっ!」
「ううーん、お近付きにもなれないかぁ。」
翔也は怒る様子は全くないが、やはり困っている。
「……星くん。俺とお話してくれる?」
「……あきと?」
「そう。2人だけで。お話してくれる?」
「うん、いいよ……」
(よし、話す時間さえあれば、きちんとこの子のことをわかってあげられるチャンスがある……)
「じゃあ、いつものお部屋に行こう?俺の足離してくれる?」
不安そうにする男の子を見て、明希は手を差し出した。
「代わりに手をつなごう。それでどう?」
いつものように、できるだけ優しく微笑みかける。
すると男の子は手を握ってくれた。
「よし。じゃあ行こう!千秋、部屋借りるね。」
「あ、うんっ!」
翔也には目で待ってて、と合図する。
翔也はすぐに分かってくれたようで、笑顔で頷いてくれた。
「星くん。」
「……なに。」
「俺と、家族になりたい?」
「……うん。あきがいい。」
「じゃあ、きちんとお話をしよう?」
「おはなし……」
「そう。もし、星くんが不安なこととか嫌なことがあったら、それをまず教えて?それから考えよう。ね?」
部屋に行くまでにそう言う。
頷いてはくれなかった。けれど、明希の手を握る小さな手に、ぎゅうっと力が入った。
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