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〜明希side〜
「俺も星くんって呼んでいい?」
「……うん。」
「他の呼び方がよかったらそれでもいいよ。」
「ほか……いい。ほしで。」
「そう?じゃあ星くんって呼ぶね。星くんは何するのが好きなの?」
「おはな、そだてる。」
「へぇー!お花のお世話できるんだ!すごいね。明希ちゃんにもプレゼントしてくれたやつかな?」
「……そう。」
「そっかぁ。あれとても綺麗だったよ。俺も少しだけ見せてもらったんだ。」
「……あき、みせたの?」
「うん。すごく綺麗だったから嬉しくて。翔也さんに自慢しちゃった。」
「あき、うれしかった?」
「うん、とっても。」
「俺も欲しくなっちゃってさー?ちょうだいって言ったけど大事だからダメって言われちゃったんだよ。」
「だいじ……」
「そうだよー?せっかく星くんからもらったんだもん。大事だよ。」
翔也も明希もできるだけ優しく、柔らかい雰囲気になるよう気をつけた。
怯えさせないように、怖がらせないように。
嫌な気持ちにならないように。
「しょうやも、はなすき?」
初めて、翔也に質問をしてくれた。
翔也はそれが嬉しかったのか頬が緩んでいる。
「うん、好きだよ。俺の2番目のお母さんがよくお花を買ってきてくれてたんだ。」
「にばんめ……しょうや、おかあさんふたりいるの?」
「うん、そうなんだ。1番目のお母さんはもう死んじゃったんだ。」
「そうなんだ……あきと、おなじだね。」
この子とはいろいろな話をした。
明希のお母さんはどんな人だったのかと聞かれた時、お母さんが2人いる、という話もしている。
翔也はそれを知っていたから、わざと言ったのだろう。
探るように、翔也の反応を窺っている。
自分のことを嫌がっていないか、疎んでいないか。
「しょうやは、あきがすき?」
「うん、大好きだよ。」
「……あきが、おれにとられたらどうする?」
「うーん!とられないように頑張りたいなぁ。それにできることなら、星くんに俺のことも好きになって欲しいし、2人とも大切にできたらいいなぁって思うよ。」
「なんで?なんでおれも?」
「星くんが、明希ちゃんを選んでくれたから。明希ちゃんがお母さんがいいって思ってくれたんでしょう?俺も星くんにお父さんになって欲しいって思ってほしいし、星くんに選んでほしい。明希ちゃんからお話たくさん聞いてたんだよ。会ったこともないのに、君のことがとっても好きになった。優しくて、温かい心をもってる君のことをね。」
「……おれがやさしくなくなったら?つめたいひとに、なったら?きらいになるんだ。そしたら、おれのことじゃまだって、おいだす。」
「そんなことないよ。人は優しくなれない時もあるし、冷たくなる時もあるよ。でも家族になったら、ずーっとそばにいる。悪いことして叱ることがあっても、ずっと離れないよ。」
「……わるいことしても、おいださないの?」
「うん。もちろん悪いことだよって怒ったりすることはあるかもしれない。ダメなことはダメだよって言うよ。でもずっと一緒にいるよ。星くんがただいまって帰ってくる場所をつくってあげたいから。」
翔也にそう言われて、男の子が明希を振り返る。
明希はニッコリ微笑んだ。
「まあ、いきなりは信じられないよねぇ。俺のこと好きになるのも難しいよね。」
男の子は迷った様子だったけれど、小さく頷いた。
「うん。でも、また会いに来てもいい?お話したりしてくれる?」
「……それなら、いいよ。」
「ほんとに?嬉しい!お話したり遊んだりして、仲良くできたらいいなぁ。嫌なことがあったら教えて?俺、それ気をつけるから。」
「……あきといっしょじゃなきゃ、やだ。」
「うん、わかった。必ず2人で来るね。」
「しょうやは、おれいがいと、はなさないで。」
「他の子と?」
「……そう。」
「うん、わかった。星くんにだけ話しに来るね。話しかけられたら返してあげるのはいいかな?」
「うん、それは、いいよ。たくさんはおはなししちゃだめ。」
「OK!任せといて。」
他の子と話して、翔也が他の子を先に気に入ってしまうのが怖いのだろうかと明希は思った。
まだ翔也を信じられない。けれど明希とは家族になりたい。
しかし翔也が他の子を気に入ってしまえばそれができなくなる。
この子はそう考えているのかもしれない。
「今思いつかなくても、思った時に言っていいからね。」
「……うん。あき。」
「うん?どうしたの?」
「ぎゅーする。」
「ふふ、いいよ、おいで。」
膝に乗ったまま、男の子が振り返って抱きついてくる。
こうして甘えることもしばらくの間はなかなかできずにいたのだろう。
少しずつ、少しずつ歩み寄っていけばいい。
少しずつ、この子の家族になっていけたらもっといい。
翔也と明希が、父と母になれたら。
この子の唯一になることができたら。
小さな体を抱きしめながら、翔也と視線を合わせる。
時間をかけて、じっくり向き合っていこう。
そう、2人で決意した。
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