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〜空夜side〜
7月27日
「え、そうなの?よかったじゃん。」
合宿への出発直前、珍しく昴流からの着信があり、少し話をすると翔也と仲直りしたという。
そもそも昴流と翔也の場合、2人とも明希のことが大好きだから喧嘩になるのであって、お互いが嫌いなわけではいからそのうちこうなるだろうとは思っていたが、意外にも早かった。
(昴流は素直になれないことが多いからなぁ。でもよかった、早くに仲直りできて。)
「くーちゃーん!バス来るって!」
「今行くー!ごめん、もうバス来ちゃった。あとはLINEで聞くね。」
昴流にLINEに変えることを伝えて電話を切る。
バスに乗りこんで、昴流とLINEをしていると隣の席に座っている航から視線を感じた。
「あっ、ごめん!スマホばっか弄ってて……」
「ううん!何してるのかなーってちょっと気になっただけだから!!」
「昴流とLINEしてたんだ。」
「やっぱ木之本くんとは仲良いね。」
「うん、そうだね。家も近いし、何かと相談し合ったりしてるからなぁ。」
「俺のこととかも?」
「えっ?!」
「ははっ、ごめん、ジョーダン。」
(びっくりした。)
実際昴流には相談している。
いつもなら陸玖にも話したりするのだが、陸玖と航は同じクラスだから、話しづらくてなんとなく隠していた。
「あ、そうだ。合宿中なんだけど、OBさんたちのスコアって用意してたよね?」
「うん、作ってあるよ。」
「それ配る時に……」
楽譜に関することを改めて確認する。
合宿にはOB・OGが来てくれるので、その対応も必要になるのだ。
「あ、そういえば今日野球部が試合だよね?」
「うん。」
甲子園に向けて予選に挑んでいる茅野学園高校野球部。
陸玖ももちろん行っていて、今日は先発だったはずだ。
「甲子園行ったら、俺たちも応援だもんなぁ。どう?兄弟が出るってなるとやっぱ心配?」
「うーん、まあ気になるけど……陸玖は陸玖で頑張ることだし。心配はしてないかな。怪我とか聞いたら心配するけど。」
「そっか。でも応援は行きたいよね。」
「うん。やっぱ勝って欲しいし!あとで連絡くれるって言ってたから、ちょっとドキドキはしてる。」
「そうなんだ!結果速報とか見られるかな?」
「調べれば出てくるかも……?でも第3試合だから昼の後なんだよね。」
「あー、俺たちも練習中か。」
ついてすぐ楽器を運び込んで、そのあとは早速練習だ。
昼食はパーキングエリアで早めの時間に各自で済ませ、宿に着いたら忙しくなる。
「まあでも、吹奏楽部にも野球部の勝敗は関係が深いからね……合宿中に地方予選の決勝までは終わるから、チェックはしておくつもりだけど。」
「だよね。俺たちもコンクール終われば応援に専念ってことになるし、コンクールと日程被らなければ甲子園は初戦から応援だからねー。」
「うん。本当は地方予選も応援出来たらよかったけど、今回合宿と日程丸かぶりだったからなぁ。」
「だね……まあ、うちの野球部、今年仕上がってるらしいし勝ってくれると信じたいね!」
陸玖と、1個上の3年生の先輩2人の投手陣の仕上がりが上々で、ここまでの試合成績もいい。
空夜も期待していた。
「俺ちも俺たちで頑張ろうね。」
「うん。」
にっこり笑う航に、空夜も頷く。
「はいそこー、いちゃつかないでくださァい。」
後ろから光樹にそう言われ、2人で肩をビクリと跳ねさせる。
「先輩たちマジで仲良いっすね。」
後輩の川島(かわしま)も後ろから覗き込んできてそう言った。
「まあ、去年はクラスも一緒だったしね!くーちゃんとは何かと相談したりすることも多いし。」
「うん、そうだよ。」
「はぁー、そういうもんっすかね。」
「いや、騙されちゃダメだよ川島。くーちゃんと航はまじで距離近いから。」
「光樹もパーソナルスペース無いに等しいくせに。」
「航はくーちゃんだけだから言ってるんでしょうが。」
光樹と航のやり取りに空夜と川島はくすくす笑ってしまう。
しかし、皆には『お付き合いを前提としたお友達』関係のことは内緒にしている。
この調子ではバレてしまいそうだ。
(まあ、光樹にならバレてもいいのかもしれないけど……やっぱ部活でバレると面倒だからな。)
女子が多い吹奏楽部は、恋愛系の噂はあっという間に広まり、気がつけば学年に知れ渡っていることも多い。
そうなると面倒なことも増える。
(まして航は女子からモテるし……)
空夜はよく知っている。
チャラチャラしているように見えても、航は優しくて気が利くので、女子から実はモテている。
本人は、恋愛じゃなくて友達にだと思っているようだが、女子はそうは思っていないだろう。
その点、男子とは本当に仲のいい友人であることも多いので、嫉妬したり焦ったりということはあまりないが。
(……ってなんか、もう航のこと好きみたいじゃん。)
まだ空夜は気持ちに答えを出せていない。
しかしこんなことを考えている時点で、好きという気持ちが全くないなんて言えるわけがなかった。
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