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〜春陽side〜
「夢見てんのかなぁ……」
「陸玖ー?いつまでやってんの?」
春陽に苦笑された陸玖だが、話は耳に入っていない。
「決勝明後日でしょう?明日も練習あるんだから寝たら?」
「んー……」
ぽわーんとしたままの陸玖は春陽に生返事した。
「かあさーん。陸玖がお花畑行ってるー。」
「ほっときな。そうなったらもうどうにもならないんだから。」
「じゃあとうさーん。」
「じゃあで頼られる父さんは悲しいぞ……陸玖、明日も早いんだろ?そろそろ寝なさい。」
「父さんはさぁ……」
「うん?」
「母さんが告白OKしてくれた時どんな気持ちだった?」
「……どうした急に。そりゃまあ、嬉しかったけど。」
「えへへ、俺もぉ……」
「恋、どうしたんだ陸玖は。」
「告白したらOK貰えたんじゃない?知らないけど。」
「そうなのか?誰に告白したんだ?どんな子だ?」
質問責めし始める琉だが、陸玖はニマニマ笑うだけで何も答えない。
春陽はもう知らないとばかりに洗い物を終えた恋の方に向かう。
「母さん紅茶飲む?」
「うん、飲もうかな。春陽も飲むの?」
「うん。父さんにコーヒーいるかな。」
「そうだね。一応いれてあげて。」
電気ケトルでお湯を沸かして、コーヒーの粉末と紅茶のティーバックを用意する。
恋がコップを用意してくれた。
「ありがとう。父さんには俺が持っていくよ。」
氷をたくさん入れたアイスコーヒー。
琉のところにそっと置いてきた恋が戻ってきた。
「春陽、仕事は落ち着いたの?」
「うん。春からの依頼が片付いてさ。少しゆっくりできそうだよ。今ある依頼は、おばあちゃんの家のホコリ取り。」
「ふふふっ、確かにそれならゆっくりできそう。」
「母さんこそ休んでる?たまにはお友達と遊んできたら?」
「いいのいいの。千秋がお隣さんだからランチとかはよく行くし。明希とか楓とも定期的に会ってるから。傑はちょっと忙しそうで会えてないけど……」
「まあ、母さんがいいならいいけど、あんまり無理しないでよね。」
「大丈夫です。春陽の方がずっと働き詰めだったんだから、しっかり休んで。家の事たくさんやってくれるのは嬉しいけど、顔が疲れてて心配。」
「そうかなぁ?母さんが言うならそうなんだろうなぁ……明日から2連休だから、お言葉に甘えて休ませてもらうね。」
「うん、そうして。」
にっこり笑う母、恋は春陽にとっても大きな存在だ。
まだ陸玖に質問責めしている父、琉とは少し違う。
安心感というか、温かみというか、言葉にしにくい何かがあるような気がするのだ。
決して琉が悪いとかではない。
そしてそんな母に、春陽は言わなければならないことがあった。
「……ねえ、母さん。」
「うん?」
「ちょっと大事な話があるんだけど。」
「書斎行こうか。」
春陽の顔を見た恋は、すぐにそう言った。
こういうところはさすがだと思う。
まだ琉には言えない段階の相談なのだが、それをすぐに理解してくれた。
「それで、どんな話?」
「んっと……どんな話って言ったらいいのかな……」
「話しにくいこと?」
「うーん、そういうわけではない、けど……」
「そっか、ゆっくり聞くよ。春陽の話したいことから話して。」
「前提になる事情はいろいろあるんだけど、結論から言うね。」
「うん。」
「女の子を1人、うちで預かりたい。」
「……うちって、ここ?」
「そう。」
「……うちで、いいの?女の子を、こんな男だらけの家に入れて。さすがに気にしない?」
「それは本人に聞く、けど先にうちの方を聞きたいなって。本人に言ってから、やっぱダメでしたは可哀想だから。」
「そっか、それは確かにそうだね。そうなると、事情にもよるけど……それはプライバシーの問題もあるもんね。どんな女の子なの?」
「事務所にいる女の子、覚えてる?高校生の。」
「えっと、よるちゃんだよね。覚えてるよ。」
「その子。」
よるが親から虐待されていたのは紘と春陽以外は知らない。
もちろん、恋も知らない。
「元々事務所に寝泊まりしてた子だよね。訳あって事務所が使えなくなった、だから家に泊めたい、そういう解釈でいかな?」
「うん。」
「そう……なら、みんなで話そう。母さんは賛成だけど、よるちゃんも含めてみんなが納得したら、連れておいで。」
「……うん、ありがとう。」
何も聞かず、問い詰めず、けれど春陽の言いたいことはきちんと理解してくれる。
そんな母がいるからこそ、春陽はよるをここで『保護』したかった。
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