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~春陽side~
「まだ見つからないのか。」
「……紘さん。」
事務所にいた春陽の元に紘がやってきた。
春陽は『おばあちゃんの家のホコリ取り』ではなく、よるの親を探していた。
「赤津家なら大丈夫というわけでもないだろう。」
「そりゃまあ、そうですけど……紘さんも隣にいるし、事務所よりは安全でしょう。」
先日、事務所にFAXが送られてきた。
この時代にFAXを送る人なんてなかなかいない。何かの仕事の依頼かと思ったが、そうではなかった。
よる
むかえにいくよ
それだけ書かれていた。
麗亜や千燈世もよるを預かろうかと言ってくれたが、2人は一人暮らし。何かあった時に誰も気が付かず助けて貰えない可能性もある。
その点、赤津家なら元々恋はほとんどを家で過ごしているし、春陽もできるだけ家にいるという選択をとることができる。
紘と千秋は仕事の都合上家を空けてしまうので、赤津家が1番いいだろうと結論づけた。
「よるの両親、今はどこで何してるんですかね……」
「よるがここに来た時に聞いた話では、父親は企業の会社員、母親は専業主婦のようだったな。」
「今も同じ会社で続けてるのかな……」
「そこまでは分からない……一応、こちらでもツテを当たってみる。人探しが得意な人を知っているからな。」
「じゃあ、親探しは紘さんに任せますね。1日で何も収穫なかったし……」
「ああ。よるの方は大丈夫か?」
「うーん……今のところは特に何も……でも少し心配です。」
「そうだな……」
事務所に初めて来た時、よるは終始周りを警戒していて、話もまともにできる状態ではなかった。
「もしよるに異変があれば、鈴と会わせよう。」
鈴(りん)も過去に親から虐待を受けていた男性だ。
虐待のせいで人より拙い語彙力とふわふわした態度は、母親の恋と同い年とは思えない。
彼はとても純粋で、優しく、心の機微に聡い。そのためよるがここに来たばかりの時に1度事務所に来て話してもらったことがあった。
「そうですね。鈴さんならよるも怯えたり警戒したりしなさそうだし、母も知り合いなんで。」
「そうだったな。鈴は俺より恋との方が仲がいいだろう。」
鈴のパートナーと恋が古い知り合いなのだと聞いたことがある。
琉も知り合いのようだし、翔也や洸大とも仲が良さそうだった。
(うちの親たちの交友関係って繋がりすぎだよな。)
大抵の情報は筒抜けである。
「それじゃ、俺はそろそろ帰りますね。よるを先に家に行かせちゃったんで……」
「そうか、俺も帰るから送っていこう。」
紘の言葉に甘え、車に乗せてもらう。
家に着き、紘にお礼を言って中に入る。
「ただいまー。」
声をかけるとリビングから恋が顔を出した。
「おかえり。遅かったね。ホコリ取り大変だったの?」
「いや、事務所に寄って報告書書いてきたから。紘さんに会って送ってもらったよ。」
「あ、そうなの?ちゃんとお礼言った?」
「うん。」
「じゃ、手洗っておいで。その後よるちゃんに色々教えてあげて。部屋の場所とか。」
「うん、わかった。」
チラッとリビングを覗くと、よるは瑠梨にもう懐かれていて、昂とも話が弾んでいる。
(大丈夫そうだな。)
ひとまず安心して、春陽は手を洗い、荷物を置いてからリビングに戻ってきた。
「お兄おかえり。」
「春陽兄さんおかえり!」
「ただいま。よる、ごめんね、一人で行かせて。」
「いえ、皆さん優しくて……お疲れ様でした。」
「ありがと。じゃ、とりあえず部屋とか案内するね。瑠梨、ちょっとお姉ちゃん貸して?」
「はぁーい!」
「そっちの扉が書斎ね。よるが寝泊まりする部屋。」
まずはリビングと隣接している書斎を教え、リビングから出る。
「あっちが洗面所とお風呂。そこの扉はトイレ。もう一個隣は物置。1階はこんなもんかな。」
「はい。」
「2階は、上がって1番右から父さんと母さん、瑠梨の部屋、空夜と陸玖の部屋、俺と昂の部屋、あとは空き部屋。空き部屋にもベッドあるから、もし書斎が寝にくかったり、俺が使う時はそっちかな。」
「わかりました。」
「物の場所はおいおいかな……冷蔵庫は好きに使って。自分で買ったもの入れとくなら名前書いといて。陸玖に取られるよ。」
「ふふっ、はい。」
「お茶とか、飲み物は好きに飲んで。コップとか茶碗は母さんに教えてもらって……あとは……あっ、これを俺が言うの、ちょっと嫌かもしれないけど……生理用品とか、化粧品とか、そういうの母さんが用意してくれてるから、後で場所聞いてみて。」
「えっ、用意してくださったんですか……?」
「うん、生理用品は、一応母さんも使うからね。」
「そっか、投薬されてる方なんですよね。」
「そうそう。でも少し違うからって、よるには別の用意したらしいから、俺場所わかんないから……ごめんね。」
「いえっ!お気遣いありがとうございます。」
「もし他に必要なものあったら、まず母さんに言ってみて。うちにあるものなら使ってもらっていいし、なくても買うし、自分で買うにしても場所とか用意してくれると思うからさ。」
「はいっ、ありがとうございます。」
「じゃ、なんかあったら遠慮なく言ってください。」
「これからよろしくお願いします。」
大体の説明を終えると、2人でリビングに戻った。
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