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~陸玖side~
(びっっっっくりしたぁぁぁ……)
突然扉をあけられた時、陸玖と悠平は座っていただけだった。
けれど、それはまさにキスをしようとしていた瞬間だったのだ。
「……ご、ごめん。空夜が誰か連れてくると思わなくて。」
「別に……つーか霧谷だったな……」
「同じクラスの子?」
「そう。まああの2人、割と仲いいイメージはあるけどな。」
「そうなんだ。」
まだ心臓がドッ、ドッ、と音を立てている。
恋に連絡したら、家に連れてきていいと言われたので悠平を連れて帰ってきた。
それから野球のことや学校のこと、くだらない話もしていたのだが、話題が途切れて沈黙になった。
その時陸玖が、床につかれていた悠平の手に自分の手を重ねた。
悠平がその手を握ってくれたので、顔を向け、無言のまま見つめ合うこと数秒。
"そういうムード"だったので顔を近づけたところ、扉が開いたのだった。
(どうしよっ……完全に雰囲気は壊れたし、でもなんか気まずくて何話したらいいのかわかんない……!)
陸玖は内心テンパっていた。
悠平も何も言ってこない。
けれど床についている手は、握りっぱなしだった。
入口からは手が見えない。陸玖が扉側だったからだ。
解こうとした悠平の手を咄嗟に陸玖が掴んでしまったのだが、今は悠平も手を離そうとはしていない。
「……しねぇの。」
「へぁっ?!」
驚きで声が裏返る。
「キス……」
悠平の顔はほんのり赤く、目は恥ずかしそうに伏せられている。
「……していいの?」
「ん……」
こく、と小さく頷いた悠平の手を握りなおす。
それから、頬に空いた手を添えた。
悠平のまぶたが閉じ、陸玖も目を瞑る。
唇が、そっと触れ合った。
外で鳴く蝉の声が遠くに聞こえた気がした。
*
~空夜side~
「あの、空夜くんの話したいことって?」
京にそう聞かれて、空夜は他人のことばかり考えていられないことを思い出した。
「あー……その……野田航ってわかる?」
「うん、隣のクラスの、吹奏楽部の子だよね。確か合唱コンで指揮者やってた……」
「そうそう、そいつ。その、航とお付き合いするかどうかを考える前提で、2人で遊びに行ったり、よく連絡とったりしてて……」
自分が航を好きかもしれないこと、どんな風に感じているか、京に素直に話した。
「空夜くんの中で、その野田くんは特別なんだね。」
「そうかも、ってだけ……でも、航と恋人になったら楽しそうだな、いいなって考えるんだ。」
恋愛感情があるんだろうとは思う。
けれど確信はいつまでももてないでいる。
だから、こんな中途半端な気持ちで答えを出すのはどうなんだろうという迷いがあった。
「その気持ちだけでも十分じゃないかなぁ。恋人になってみたいなって、その気持ちだけで。」
「そうかな。」
「うん。失敗したり、すれ違うこともあるかもしれないけど、それって友達でもあることだし。空夜くんが野田くんに対して思ってることや考えてることを、野田くんにも素直に言ったらいいんじゃないかなって、俺は思うよ。でも俺は恋愛経験ないから、あまり参考にしないでもらって……」
京はそう言って苦笑する。
なんだか背中を押されたみたいで、安心した。
航に話してみて、2人で話し合ってどうするか決めるのもいいのかもしれない。
素直に航と向き合うことが1番の解決策だろう。
「ありがとう。なんかすっきりしたよ。ひとりで考えたりするよりずっと。」
「少しでも力になれたならよかった。」
「実は、昴流にもこの話は相談してるんだけど……昴流は幼馴染だから、もっと客観的な意見が欲しかったんだ。だから京くんにも話せてよかった。」
「そうだったんだ!俺も空夜くんに話してる間に少し頭が整理できたよ。」
「定期的に話し合いたいね。」
「そうだね!LINEとかで話してもいいかも。俺結構電話とかもできるから、空夜くんが都合のいい方法でいいよ。」
「じゃあ、とりあえずLINEとか電話使いながらこまめに話そう!大事な話したいときは直接会えたらいいね。」
「うん、そうだね!なんか嬉しいな。」
京はそう言ってニコニコしている。
「なにが?」
「友達と恋バナとか、ちょっと憧れてたから。」
「ふふっ、そうなんだ。でも、実は俺もこういうことするの初めて。」
恋愛に関しては来る者拒まず去るもの追わずだった。
だからこんな風に悩んだりしないので、当然相談もしたことがなかったのだ。
「うっかり昴流に話さないかが1番心配だよ……」
「2人とも仲良いもんね。」
京がくすくす笑う。
「でも、しばらくは2人の秘密だね。」
「そうだね。」
その後は少しだけ話をして、京を駅まで送って別れた。
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