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~春陽side~
ふっ、と意識が浮上したのは、もう太陽がかなり高くなってからだった。
(あれ……夏紀さん……)
広いベッドには自分しか寝ておらず、部屋にも夏紀の姿はない。
「んっ……ったぁぁぁ……」
腰と腹筋が痛い。
なんとか体を起こして、落ちていたバスローブを羽織る。
昨晩、最後の方の記憶が曖昧だが体は綺麗になっていた。
夏紀の手を借りてシャワールームに行ったような気もするが、その後のことはほとんど思い出せないので、そこで寝てしまったのだろう。
テーブルに置いてあった自分のスマホを開くと、恋からのメッセージと夏紀からのメッセージが入っていた。
恋からは、たまには夏紀とゆっくりしなさいという旨の内容と、今日も泊まるなら連絡が欲しいというメッセージ。
一方の夏紀のメッセージは、朝9時頃に入ったものだった。
「仕事かぁ。」
今泊まっているホテルの支配人と急遽打ち合わせが入ったようだ。
帰るなと念押しが3回ほどされていて、12時頃には戻るという内容だった。
(12時ってことは……あと30分くらいかな。)
現在時刻は11時半をまわったくらい。
シャワーを浴びたらちょうどいいくらいかもしれないと思い、春陽は改めてシャワーを浴びることにした。
(さっぱりした。)
まだ体はだるいが、気分はさっぱりした。
軽く髪を拭いて、新しいバスローブを着て部屋に戻る。
「あ、おかえりなさい。」
「ん、ただいま。シャワー浴びてたの?」
「はい。」
「体平気?」
「んー、多分……」
「ははっ、ごめんな。ちょっと無理させた。」
苦笑する夏紀の隣に行って腰掛ける。
「……その格好で行ったの?」
「え?あぁ、ジャケット羽織って行かなかったよ。暑いし、急遽だったしね。」
半袖のシャツで、第2ボタンまで開けられている。
「今度はちゃんとボタン閉めて行ってくださいね。」
「……え、嫉妬?嬉しい。」
「そういうんじゃないですけど……」
「次はちゃんとして行く。」
ちゅっと額に口付けられて、それ以上は何も言えなくなった。
「てか春陽、ちゃんと髪乾かさないとダメじゃん。夏とはいえ風邪ひくよ。」
そう言った夏紀に連れられて、洗面所に逆戻りする。
「はい、座って。」
椅子に座らされて、夏紀が髪の毛を乾かしてくれた。
人の髪を乾かすことは多いけれど、自分が乾かしてもらうことは滅多にない。
なんだか心地よくて、眠たくなってきた。
「……はい、終わった。眠い?」
「んー……」
「ふは、まだ眠そうだな。まあ、寝たのもう4時とかだったしな。お腹すいてる?」
「空いてない……」
「じゃあ少し寝てたら?早い時間に夕食にしよう。レストラン予約しておくから。」
「んー……」
「くくっ、聞いてないなこれは。」
聞いている。きちんと頭には入っている。
ただ、返事を返すのが億劫なだけだ。
「ベッドにはちゃんと行くぞー。」
夏紀に連れられて部屋に戻ってくる。
春陽をベッドに座らせると、夏紀はソファの方に座った。
「俺、少しだけ仕事するから。春陽寝てな。」
(せっかく一緒にいるのにな……)
1年ぶりの再会は、今になってやっと実感が湧いてきた。
離れていた分、春陽は夏紀に甘えたい気持ちがあった。
しかし仕事の邪魔をするのは嫌だし、春陽は子どもではない。
けれどやっぱり1人は寂しい。
考えた結果、春陽は夏紀の隣に座った。
「どうした?」
ぽすん、と夏紀に体を預ける。
「ここで寝る……」
夏紀からの返事がなく、これは思った以上に恥ずかしいことなのではないかと思い始め、春陽はやっぱりやめようと体を起こした。
「待って、寝るならこっち。」
グイッと体を倒されて、夏紀の太ももの上に頭が乗る。
「いいよ、ここで寝てな。」
優しくそう言われて、頭を撫でられるとほわほわした気持ちになった。
夏紀の腹の方に顔を向けて、お腹に顔を埋めると夏紀の匂いがする。
(これいいかも……)
夏紀がここでいいと言ったのだから、きっと邪魔はしない。
これなら夏紀は仕事を続けられるし、春陽は甘えている気分になれる。
その温もりと安心する匂いに、春陽は眠気に抗うことなく目を閉じた。
「いやいや、可愛すぎるだろ……」
長身の体を丸めて、自分の膝の上で眠る春陽に、夏紀がそんなことを呟いて頭を抱えたのは、すでに眠っている春陽は知らないことなのであった。
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