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~空夜side~
「えっと、お父さんに聞いてみたらいいのかな?」
「いや、そこまでしなくてもいい。父親と仕事の話してるって言ってたよな?」
「うん、お父さんの話聞いてるだけだけど……中身もある程度覚えてるよ。」
「なにか気になることがあったらなんでも教えて欲しい。」
(随分仲良くなったんだな、この2人……)
空夜はそんなことを思いながら、まるで他人事のように会話を聞いている。
「んー……そういえば、最近取引してる会社が業績不振で、このままだと打ち切りになりそうって言ってたかな……?確か、新しい美容品の開発に失敗したとか……」
「それだ、それが古森財団が支援してる会社だ。」
「古森って、飲食店も経営してなかったっけ?」
黎がそう口を挟んできた。
そこで昴流はスマホを取り出す。
「ナイスタイミング。」
「……翔也さんから?」
「そう。貰ったことある招待状の客はリストにしてんだよ、父さん。仕事現場で会った時にちゃんと話せるように。」
「なるほど?そのリストの中に古森がいると。」
「そ。まあ新から傑さんに聞いてもらってもよかったんだけど……こっちのが早いかと思って。」
「それはそうだな。で、飲食店やってるの?」
「……ん、あった。古森財団の代表は……古森美紅の祖父だな。息子が飲食店経営ってなってる。」
丁寧に写真や説明までついたリストを拡大して見せてくれる。
「で、ここまではわかったけど、昴流はここからどうしたいの?僕や京くん、空夜くんは会社とはほとんど無関係だし、昴流や黎、新くんも会社に口出しできる立場ではないよね。」
「もちろん、それは智陽の言う通りだけど、ここまで情報があれば、絶対に手助けしてくれる人がいる。」
「誰?」
「お前の兄貴だよ。」
きょとん、としていた空夜に、昴流がそう言った。
「お兄?お兄に何ができるの……?」
我ながら失礼な言い方である。
「俺たちの目的は、別に会社をどうこうしたいんじゃないだろ?古森美紅と野田航の関係性が知りたいだけだ。俺たちの手持ちのカードが会社絡みが多いから、それを利用しただけ。」
「そっか。航くんが天条家の人なのかどうか、古森さんとの婚約は航くんの意思なのか、それさえ知れればいいってことなんだね。」
「そういうこと。」
「なんでそんなこと知りたいんだよ?それ、空夜と関係あんのか?」
「空夜くんの好きな人とか?」
新と智陽にはこれまでの話をしていないので、2人はこの流れがよくわかっていないようだった。
「これ言っていいの?」
ここまで大々的にしておいて、今更隠すのは無理ではないかと思いつつ、昴流に頷く。
「婚約者がいるくせにそれを隠して空夜に告白してきた。」
「は?」
「ん??」
「どうして……?」
明らかに怒る新、理解できないとばかりにぽかんとする智陽、そして純粋な感情だけをぶつけてきた黎。
空夜は苦笑するしかない。
「パターン1は、空夜のことがまじで好き。だけど無理やり家の都合で婚約させられていて、それが空夜に知られたら絶対に付き合えないので隠していた。パターン2は、空夜のことを弄んだ。」
「パターン2なら3発くらい殴るけどな?陸玖が。」
「俺も1発いく。」
「うわぁ昴流物騒だね。」
「でも、弄んでたんだったら許せないよね。人の気持ちをなんだと思ってるのかな……」
「昴流、僕にもその人殴らせてー?」
目を潤ませた黎を見て、智陽がにっこり笑った。
「えっと、パターン1の場合は?」
京がそう言って話を戻す。
「その場合は俺はもう口出さねえわ。あと決めるのは空夜と野田航、古森だろ。野田航に同情の余地もあるしな。」
「なるほどな。とりあえず陸玖にバレねぇように気をつけろよ。今すぐ1発いくぞ。」
「お兄に協力頼むのに無理じゃない……?」
「春陽くんなら上手く隠してくれるだろ。」
「俺も昴流に同感。」
確かに春陽はそういったことは上手そうだけれど。
「とりあえず僕にやれそうなことはあまりないけど……話に首突っ込んだからには、何かあったらやるよ。いつでも言って。」
「ま、お前には王子様の立場を存分に利用してもらうわ。」
「俺はクラスで航の様子探る。」
「頼む。」
空夜がほとんど口を出さないまま、話はさらにまとまっていく。
本当に大事になってしまった。
「もし何かあったら、相談して。俺も力になるよ。連絡先交換しよ?」
黎がそう言ってLINEの友達登録画面を差し出してきた。
「あっ、ありがとう。ごめんね、俺の個人的な話に巻き込んで……」
「ううん。俺、人見知りのせいで、仲良い友達って少ないから……こういうきっかけでも仲良くなれたら嬉しい。」
微笑んだ黎はまるで聖母。まさにマリア様である。
「えっと、京、くん?」
「うんっ、俺も交換したいな。」
「!ありがとう。すぐわかるのすごいね。」
「あはは、今の流れはそうかなって思って。」
連絡先を交換し、3人のトークグループを作成しておく。
「俺だけ学校違うけど……本当にいつでも連絡して。」
「ありがとう。そう言ってくれる人がいるだけで嬉しいな。」
「よかった。京くんも、関係ないことでもいいんだよ。京くんの恋バナとか。」
「おっ、俺はいいよ!」
くすくす笑う黎だが、京はこの場に昴流がいるためか、あわあわと慌てている。
(なんかちょっと元気出たな。)
正直いろいろな感情が混ざって、かなり凹んだ。
けれど、航にも航の事情があったのかもしれないし、もう少し様子を見てから、気持ちを整理しようと思えた。
あまり黎の家に長居するのも悪いので、智陽以外の皆で帰宅し、昴流だけはそのまま空夜と一緒に1度赤津家によることになった。
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