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~紘side~
「何したんだ、夏紀。」
「……紘さん。」
苦笑しながら訪れた夏紀のオフィス。
既に仕事を終えていたというのに、夏紀はぼけーっと椅子に座っていた。
「春陽と喧嘩したんだろ?」
「喧嘩というか、なんというか……機嫌を損ねた……?」
「春陽を怒らせるなんて、よっぽど地雷をぶち抜いたな?」
「俺もわかんないですよ……どこがアウトだったのか。」
探偵事務所で毎日ため息をついている春陽を見かねて、紘は夏紀の方に事情を探りにきていた。
怒っているのもそうだが、春陽は落ち込んでいた。
だから喧嘩をしたのかと思っていたが、夏紀の認識ではそうではないようだ。
「差し支えなければ、少し話を聞かせてもらえないか?」
そう言うと、かいつまんで事情を説明してくれた。
「……うーん、それは夏紀の態度の問題じゃないか?」
「態度?」
「春陽は恋人のお前に突き放されたように感じたのかもなぁ。」
「……え、なんで?どこが?どうして?!」
「落ち着けよ。」
立ち上がった夏紀を宥めて座らせる。
「共感して欲しかったんじゃないのか?弟が傷つけられて怒ってることに。」
「……なるほど?」
「お前は春陽と婚約しているんだろ?結婚すれば、春陽の家族はお前の家族になる。」
「……確かに、航を庇うにしても、春陽の気持ちには共感するべきだったかも。」
「そういうことだな。それは良くないことだと思う、とか、傷つけられたら怒るよな、とか……そういう共感があって、でも今回は協力できないな、と言っていれば少しは違ったんじゃないか?」
「そうかもしれない……」
「春陽は優しい子だからなぁ。夏紀が、自分の家族のことはどうでもいいと思っているように感じて、ムカついたのかもな。」
春陽が落ち込んでいるのは、夏紀に当たってしまったからかもしれないと紘は思った。
春陽も感情が先行して夏紀に怒ったが、冷静になってみると、というところだろう。
「まあ、ほとぼりが冷めるまで待つんだな。まだ解決してないんだろう、弟たちの方。」
「……そうらしいです。話できる状態じゃないって言ってました。」
「そうなのか。」
「いろいろあるみたいで……1ヶ月くらいしたら文化祭って聞いてるんですけど、それまでに何とかなればいいけど……」
「せめて春陽と仲直りできたらいいな。」
そう言うと、泣きそうな顔でこちらを見上げてくる。
あまりに悲壮な顔に、早く仲直りしてやれ、と春陽に思うのだった。
*
~春陽side~
「はぁぁぁぁ……」
「さっきからため息ばっかり……春陽どうしたの?」
久しぶりにカラオケで会ったのは幼い頃から仲良くしている吉田龍久(よしだたつひさ)。
同い年で、龍久は大学に通っている。
夏紀とのことを相談するのは、いつも龍久だった。
「たっくん……」
「うわ、何その顔……」
「夏紀さんに嫌われたかも……」
「え、なんで?この前帰国したばっかりだったよね?喧嘩したの?」
「喧嘩じゃない……俺が一方的に怒っただけ……」
「あー……そうなんだ……」
「後で思い返してみれば、言ってること意味不明だし、とっちらかってるし、頭悪すぎ!俺のバカー!」
べたっと机に突っ伏すと、龍久がよしよしと頭を撫でてくれる。
「空夜があんな顔してるの初めてで、ちょっと冷静じゃなかったかも……」
「空夜くんに何かあったんだ。」
「ちょっとね……まあ、知りたいことは知れたからいいけど……夏紀さんと喧嘩したかったわけじゃないのに、夏紀さんが俺のことどうでもいいみたいな言い方するから、イラッとしちゃって、思わずしばらく会いませんとか言っちゃって……」
「春陽は夏紀さんの前でいい子でいようとし過ぎなんだよ。だから甘えられないし、爆発しちゃった時に仲直りしにくくなるんだよ。」
「……だって、あんまりベタベタしたら嫌がられるかもしれないし。それに夏紀さん、元カノがしつこくて嫌がってたし。」
「今の恋人からは甘えられた方が嬉しいでしょ。別にいい子でいる必要ないじゃない。」
「だって、わかんないんだもん……甘え方……」
大きくなるにつれて、甘えるということが極端に苦手になってきた。
どうしたらいいか分からないのだ。
「普通にギュッて抱きついたり、キスしてっておねだりしたり?あとはくっついたり、膝枕とかもかな?」
「そんなことしたら即刻セックスコースだよ。」
「あはは……まあそれはそれでいいんじゃないの?」
「よくないわっ!俺の体力底なしじゃないんだから。」
「じゃあ素直にいえばいいじゃん?イチャイチャしたいからセックスなしでって。」
「うっ……」
「まあ今はそれより、謝る方が先だけどね。思ったこと伝えれば、夏紀さんも謝ってくれそうじゃない?」
「そう、かもしれないけど……」
「ギューって抱きついて、言いすぎてごめんなさい、って言ったらすぐ許されると思うけどな?」
「それじゃ夏紀さんに甘えてるだけじゃん……ちゃんと謝らなきゃ。」
「じゃあちゃんと謝りなよ。」
「……うわーーー!もう考えるのやめやめ!!今はたっくんと遊ぶのー!」
「……はいはい。俺に見せてる春陽の1割でも見せてあげればいいのに。」
やけくそだー!と曲を入れまくる春陽を見て、龍久は苦笑していた。
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