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~空夜side~
「えっと、話って何かな。」
「あの、皆には言わないで欲しいんだけど……」
「うん。」
「私、男の人に誘拐されかけたことがあるの……」
思ってもみない話に、空夜は驚いて声が出せなかった。
「その時に、乱暴なことをされて、今も男の人があまり好きじゃないの。」
「そ、そうなんだ……それなら俺とも話さない方がいいんじゃないのかな……」
「ううん、同級生の子は大丈夫だよ。急に触られたりしなければ。」
「そう……」
「でも、登下校の時とか、大人の男の人とかはすごく苦手で……航くんにそばにいて欲しいの。」
「そうなんだ……えっと、俺にできることなくない?」
「部活、同じなんだよね?」
「あ、うん、まあ……」
「航くんが部活してる間、音楽室の近くで待つことってできたりするかな?部活を早退してもらうのは無理だし、でも1人で待つのも少し怖くて……だから、どこかで待たせてもらえないかなって……」
「航の近くで、ってことだよね?それなら俺じゃなくて、部長に言わないと……」
「でもっ、あんまり知られたくないの、この話。緋村先生は知ってるけど、他の先生にもあまり知られたくないし……」
しかしどうしたらいいのか空夜にもわからない。
空夜は学生指揮者で、曲に関する権限は比較的あるが、その他の部活に関することは部長が決めている。
もし準備室で待ったりするのであれば先生からの許可がいる。
顧問の先生である音楽の先生は厳しい先生ではないから、ダメだと言われることは無いだろうが、理由は聞かれるだろう。
「夏目先生には、話してないの?」
「話してないよ。」
夏目が知っているのであれば保健室で待っていてもらい、部活が終わりそうな時間になったら空夜が連絡することもできると思ったが、それは無理そうだ。
「空夜くんから、部長さんや先生にうまく言ってくれない?」
「……やってみるよ。」
「ほんとにっ?ありがとう!すっごく嬉しい。」
ニコッと笑う美紅は安心した顔をしている。
正直どうしたらいいのか分からない。
「空夜くんに相談してよかった。」
美紅はそう言うと先に屋上からいなくなった。
その美紅と入れ違いで、宏樹と俊哉が屋上に上がってきた。
「あれ、くーちゃん。どうかしたの?」
「……さっき、古森と一緒に教室出ていったよな。話してたのか?」
「あ、うん……ちょっとね。」
2人に心配をかけないように笑ってみせる。
「……空夜、あのさ。」
「うん?」
俊哉は黙っている。
言いにくい話なのかなと思ったが、ちらりと宏樹の方を見ると口を開いた。
「俺ら今週から、ダンスの練習を部活後に公園でしようと思ってて……」
「そうなんだ!」
「空夜も一緒にどう。」
「えっ、俺も?」
「うん。かしけんにも声かけようと思ってて、空夜から瀬戸にも声かけてくれない?昴流や京に見てもらう前に、基礎は練習しないとなって、思ってるから。」
「うん、もちろんだよ!声かけてみるね。」
「……ん。とりあえず今日もやるから、あとでLINEするな。」
「うん、わかった!」
宏樹と俊哉に、戻るね、と言って空夜は屋上を後にする。
教室に戻ると、京からこっそり何を話したか聞かれた。
兼と光樹が少し席を離れると、昴流にも同じように聞かれる。
「はぁ?なんだそれ。空夜にいうことじゃないだろ。」
「でも断りにくくて……」
「野田航と一緒に帰りたいだけなら、近くで待つ必要も無いだろ。」
理由をぼかしたので、昴流は不思議そうだ。
「引き受けちゃったんだよね……?どうするの?」
「元の学校で吹奏楽部だったって聞いてるから、部活に入りたいけど、文化祭が終わるまでは……ってことにしようかなと思ってる。」
「確かに、それなら先生は許してくれそうだね。」
「うん。」
「でも、それ空夜くんは平気なの?」
「えっ?」
「俺もそれ心配。お前、野田航のこと好きなんだろ。」
確かに、好きかもしれない。
けれど空夜もどうしたらいいのかわからないのだ。
「わかんない……どうしたらいいのか、わかんない。」
「……はー、ったく。こんなんだから野田航と話させたくないんだよ。」
「あっ、そうだ。今朝妨害してきたでしょ?ああいうのはよくないよ?」
「よくないってお前なぁ……じゃあ野田航と話せるメンタルしてんのか?」
「うぅ……」
「まあまあ、昴流くんも、あまり邪魔はしすぎずに……空夜くんも、無理しすぎずに、ね?」
京がそう言ってくれて、空夜は頷く。
「でも、今月末には文化祭、来月頭には体育祭、11月頭にはテストがあって、その後には修学旅行もあるから、野田くんとは早めに話さないと、時間なくなっちゃうよね?」
「それもそうなんだよな……」
「文化祭までに話すよ。航にも、自分からそう言う。」
「……そっか。まあ、空夜がそう言うなら、俺も邪魔しねぇ。」
「何かあったら遠慮なく言ってね。」
「うん、2人ともありがとう。」
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