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~空夜side~
「で?結論は?」
ダンス練習の後、ファミレスでご飯を食べながらの会議。
昴流は注文を終えるなり、いきなり本題に入ってきた。
「あー……えーと、とりあえず保留ということに。」
「ふーん……じゃあ、一応許すの?」
「まあそういうことに、なるかな。」
「えっと、話の内容は詳しく聞いてもいいのかな?」
京に聞かれ、空夜は頷く。
それから、航と話したことについて、詳細の説明をした。
*
「まずは、ごめん。」
航と話を始めてすぐ、謝られた。
「どんな理由があっても、俺が隠したせいでくーちゃんは嫌な思いしたよね……真剣に考えてくれてたくーちゃんに、酷いことした。ごめん。」
「うん……まあ、それはもう、いいよ。なんでそんなことしたのか、教えて欲しい。」
「俺がくーちゃんを好きなのは本当だよ。嘘じゃない。くーちゃんのことを弄びたかったわけでもないし、本当に、本気で恋人になりたいと思ってる。」
そう言う航は真剣で、嘘をついているようには見えなかった。
「……でも、俺には、婚約者がいる。家の都合で決められた婚約者だけど、いるのは事実だ。」
「……うん。」
「婚約を解消してから、くーちゃんに告白するべきだった。でも、くーちゃんのことを好きだって気持ちが、どんどん大きくなって、どんどん我慢できなくなって……それで、あの日……」
航は俯く。
「その後で、くーちゃんが真剣に考えてくれるって、返事をくれたでしょ?」
「うん。」
「その時、言おうと思ったんだ。告白しちゃったけど、俺には婚約者がいて、それを解消するまで待っててくれるかって。」
そう言ってくれたら、空夜だって事情があるんだと考えた。
「でも……もし、くーちゃんが、そのことがきっかけで、俺のことを恋愛対象に見てくれなくなったら嫌だなって思っちゃって……くーちゃんは優しいから、俺の婚約者にも、気を使ったりしたら嫌だなって……」
その線もなかったとは言いきれなかった。
「言わなきゃ、言わなきゃって思って、でも言えなくて……結果的にくーちゃんを傷つけることになって、本当にごめん……」
「……その、婚約者が古森さん?」
「うん……昴流くんのことだから、くーちゃんももうとっくに知ってるよね……?俺は、天条家の次男で、美紅は古森財団代表の孫娘。俺には、決定権はない。解消するのも、続けるのも、決定権は美紅にあるんだ。」
「うん。」
「美紅に、婚約解消の話を今すぐにでもしたいけど……それは、できない。」
「どうしてか、聞いてもいい?」
「……詳しいことは話せないんだけど、美紅は今、少し不安定で……俺は、美紅を傷つけたいわけじゃないから、せめて美紅が落ち着いて、話をしっかりできるようになってからがいいと思ってる。そうやって迷ってるうちに、まさかうちに転校してくるとは思ってなかったけど……」
不安定な理由は、美紅本人が話してくれたことのせいだろうと空夜は思った。
「美紅とちゃんと話をしたら、改めてくーちゃんに告白させて欲しい。その時、くーちゃんの答えを聞かせて欲しい。それまでは、俺と今まで通り……部活が同じ、友達として仲良くして欲しい……全部俺のワガママだから、もう嫌だってくーちゃんが思ったら、今、伝えて欲しい。」
空夜は航が嫌いになったわけではない。
そして美紅を傷つけたいわけでもない。
「……うん、わかった。俺は、航と今まで通りの友達でいる。古森さんとの話が終わるまで、待ってる。それまでの間に、もっと航への気持ちを考える。それで、整理しておく。」
「くーちゃん……ありがとうっ……」
「航の答えが出たら、またちゃんと話そう。それまで、この話は保留で。」
「うん、わかった。」
*
「と、いう感じで……」
「まあ……ちゃんと話してからってことになったならいいか。」
「そうだね……空夜くんはそれで納得できてるんだよね?」
「うん。待ってる間に心変わりしたり、考えが変わるかもしれないけど……今のところ、航がもう一度告白してくる時まで待ってるつもり。その時の答えは、これから考えようかなって。」
「そうだな。今後の野田航の行動次第で決めた方がいいと俺も思う。」
「それは、俺もそう思うな。」
「だよね。俺自身も、もっとちゃんと航のことを見て、知って、決めた方がいいなって思ったんだ。」
航のことを、空夜はまだ全然知らない。
「あの、一つ気になったんだけど……今まで通り、ってどんな感じなの?告白される前までってこと?」
「うーん、そこら辺は俺も分からないんだけど、2人きりで出かけたり、スキンシップしたりはよくないかなって思ってるよ。古森さんと話がついてないのに、そういうのってよくないと思うし、古森さんも嫌な気持ちになるかもしれないし。」
「そうだな。まあ、複数名で遊びに行ったり、個人で連絡取り合ったりくらいはセーフだろ。恋人じゃなくても、普通に俺らもやるし、な?」
「へっ?!あ、うんっ、そうだね。」
京は昴流のことが好きなんだなぁ、と空夜は改めて感じる。
特別なんだとわかる。
「2人きりってのも、まあダメじゃないんだろうけどな。お互い恋愛感情らしきものがあると分かっててはまずいかもな。」
「そうだよね。」
「とりあえずこれで解決は解決だな。」
「うん。昴流も京くんもありがとう。小野くんにもお礼言っておいて?」
「おー、言っとくわ。」
黎にもあとで報告しなくてはいけない。
それから、春陽にも、夏紀にも改めてお礼と報告をしなくてはいけないだろう。
「おまたせいたしました。」
料理が運ばれてきて、お腹が鳴る。
「ふはっ、食うか。」
「ふふ、そうだね。」
その後は食事をしながら、文化祭の話をして、3人で楽しい時間を過ごして、別れた。
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