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~空夜side~
「まじ?!あれめっちゃ良かったよな!他校の友達にも言ったんだけど、そこ見てないとか言われてさー。やっぱ京とは合うわー。」
2列になって並んでいるため、京と昴流、空夜と俊哉で前後になった。
昴流が珍しくテンションが上がっていて、京との話が盛り上がっている。
一方、空夜と俊哉には会話のネタが見つからず、黙り込んでしまっていた。
(どうしよう……なにか話さないとまずいよね……)
「……なぁ。」
「な、なに?!」
「ごめん、びっくりさせた?」
話さないとと考えている時だったために、過剰な反応をしてしまった。
「あ、ううん!なんか話さないとって思ってた。」
「ふはっ、そんなの気にしなくていいのに。空夜が居心地悪くなければ、無言でいいよ。」
(いいんだ、それで……)
周りに気を使って話をしてきた空夜にとって、それは新鮮なことだった。
「あ、話したいことあったんだよね?」
「あ、うん。」
ちらりと前を見てから、俊哉がこちらに顔を寄せてくる。
「あの2人って、付き合ってんの?」
そういえば、俊哉は宏樹が京に片思いしていることを知っていて、告白を応援しているのだった。
「あー……いや、付き合ってはない、かな。」
「付き合ってはない、ってことは、両思いではある?」
「うーん……ちょっと微妙な感じ……宏樹くんだよね……?」
「あー、まあ……恋愛って気持ちの問題だし、仕方ないと思う。けど、告白くらいは、させてやりたいなって。」
「それは大丈夫だと思う。恋人になれるかはわからないけど、告白しちゃダメっていうような関係ではない。」
「そっか。ならいいんだ。」
「……やっぱり、宏樹くんと上手くいって欲しい?」
「うーん、まあ上手くいけば応援するし、告白だけはしてほしいなって思ってるけど、京も友達だしな。京の気持ちに従って欲しいと思ってる。」
「俊哉くんは、優しいね。」
「そうか?昴流も友達だしな。この2人が上手くいったらいったで、俺は応援する。……もし空夜が、別の人のこと好きで、そいつと付き合っても、応援するよ。ただ、俺は、空夜のこと好きってだけ。空夜が別の人と付き合い始めたら気持ちの整理するし、ちゃんと吹っ切る。」
俊哉の方を向くと、真剣な表情をしていた。
「だから、空夜も自分の気持ちに従って欲しい。まあ、誰とも付き合いたくないっていうのも、それはそれだと思うしな。何も言わずに終わりたくなかっただけだから。どんなのでもいいから、返事だけは、いつか聞かせて欲しい。」
「……うん。」
優しくて、温かい人なのだと知った。
人の気持ちを尊重できる人なのだ。
俊哉は、表情に出にくいだけで、人を思いやることのできる人なのだ。
誰かを知ろうとすることは、そう多くない。
見える範囲だけで判断しようとしてしまうし、実際そういう上辺だけの関係が多かった。
けれどこうして知ろうとすれば、新しい一面を見つけて、そこに好意を抱く。
(航のことが好きかもって思ったのも、そういうことなのかな。)
航の知らない一面を見て、自分に好意を向けてくれていることが嬉しくて、気になって、その結果好意になった。
もっと航を知ろうとして、より好きになるかもしれないし、恋人とは違うなと思うかもしれない。
それでも、やはり、知らないままにはしておけないのだと改めて思った。
それは、俊哉のことも同じだ。
俊哉のことをもっと知って、俊哉への返事を決めないといけない。
「……ねぇ、俊哉くん。」
「ん?」
「俺、もっと俊哉くんと仲良くなってみたい。それから、ちゃんと考えて返事したいよ。……それでも、いい?」
「……うん。いいよ。俺は、それで好きになってもらえれば万々歳だしな。まあ、普通に今も友達なわけだし、空夜が知りたいなって思ったことがあれば、聞いてくれれば答えるし。みんなで遊びに行ったりしよう。」
「うん。」
俊哉はあくまで、空夜のペースを尊重してくれているように感じた。
遊びに行く時はみんなで、と空夜への逃げ道を用意してくれている。
「2人と一緒でもいいな。」
そう言って昴流と京の方を見る。
俊哉と昴流はダンス練習を通して、かなり仲良くなっていた。
「ん?なんか呼んだ?」
「あ、ごめんね?ずっと2人で話しちゃってた!」
昴流と京が振り向いた。
「4人で遊びに行きたいなって話。」
「ほーん、いいんじゃん?」
「え?!」
軽い気持ちなのか、あっさり同意してしまった昴流に、京は驚いている。
「俊哉とは俺も1回遊びに行ってみたい。」
「なんなら振替休日で行くか?」
「明後日なら空いてる。俺明日はバイト。京も明後日暇って言ってたよな?ゲーム教える約束してたし。」
(そんな約束してたの?!)
驚いて京の方を見ると、助けを求めているような顔をされた。
(もしかして、後で相談する感じだった?)
「あ、まぁ……予定は空いてるよ。」
「空夜は?」
昴流がこちらを向いて、俊哉も視線を送ってくる。
振替休日は2日とも部活が休みだ。予定は無い。
「あー、うん。明後日大丈夫だよ。」
「じゃ、決まりな。」
「……空夜、本当に平気か?」
ぽんぽんと昴流が決めてしまったが、京がアワアワしているのを心配した俊哉がもう一度聞いた。
「う、うん、平気!」
「ならいいけど……どこ行くんだ?」
「急だし、近場がよくね?」
「それならカラオケとか?」
「いいよ。俊哉カラオケ好きなの?」
「んー、空夜の歌が聞いてみたいだけだな。」
「あー、合唱コンは歌ってないもんな。空夜普通に上手いし、いいんじゃん?俺も京の歌ゆっくり聞きたいわ。」
「え?!俺はそんなに上手くないよ!」
「合唱はめっちゃ良かったけどな。」
「確かに。京の声は去年も綺麗だった。」
「カラオケ好きだからいいけど……」
「俺も別にいいよ。上手さは期待しないで欲しいけどね。」
空夜は歌に自信がある訳では無いので、そう言っておく。
「じゃあカラオケにしよ。LINEで詳しいこと決めてこうぜ。なんかそろそろ店入れそうだし。」
昴流がそう言うので前を見ると、確かに列がかなり進んでいた。
「OK、グループ作っとく。」
俊哉が作ってくれたグループは【すきとく】。
「……?何だこのグループ名。」
「昴流、京、俊哉、空夜の頭文字。」
「なるほど。」
(……全然なるほどじゃないけどな……?)
なぜそんなグループ名にしたのかよくわからないが、昴流は納得したし、京も何も言わないので、空夜も突っ込むことをやめた。
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