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~京side~
「あのさ、俺たちって、親友……ってやつかな?」
昴流の口から紡がれた言葉に、なんと答えたらいいのか分からなかった。
会話は普通にできたと思う。
きっと、返す言葉も間違っていなかった。
表情だって強ばっていなかったはず。
けれど、気がついてしまった。
自分が、思っている以上に昴流のことが好きなこと。
恋をしてしまっていること。
少なくとも今、昴流には恋愛感情がないこと。
「ただいまー。」
「おー、おかえり。サンキュな。」
どうしようかと思っていたタイミングで、空夜たちが帰ってきてくれた。
次いで料理も運ばれてきて、もう先程の話に戻ることは無い。
ほっとした一方で、思った以上に膨らんでいる恋心をどう処理したらいいのかわからない。
空夜に相談するにも間には俊哉がいるし、隣に昴流がいる時点でどうしようもない。
(あとで聞いてもらおうかな……)
京にとって恋愛は未知のもので、まだ自分ひとりで処理したり抱えるには大きすぎた。
*
~空夜side~
(うーん?今の一瞬でなんかあった?)
チラチラと京の様子を伺う昴流と、少しだけ先程より落ち込んだ様子の京。
なんだか変な感じだ。
しかし空夜と俊哉が席を外していたのは本当にちょっとだったし、喧嘩などをしていたような雰囲気はなかった。
(俺の気のせいか……?いやでも……昴流はおかしい。)
昴流は明らかに京を気にしすぎというか、見すぎだ。
(いや待てよ、この視線に気がついてない京くんもやっぱり普通じゃないな。)
昴流の方から聞き出すのは無理そうだが、なんとか京の方から話を聞き出したい。
「俺トイレ行ってきていい?」
「あっ、俺も行きたい。」
京がトイレを切り出したタイミングで、ここぞとばかりの空夜も口を挟んだ。
「行ってら。」
「おー。」
2人は来ないようで、好都合。
ちらりと京の様子を伺えば、やはり何かあったらしい。
「なんかあった?」
「ごめん……わかりやすかった?」
「いや……なんか、昴流が京くんのこと見すぎというか、変な感じしたからさ。なのに京くんはその視線に気がついてないみたいだったから。」
トイレを済ませて、外で少し話す。
「大したことじゃないんだけどね……昴流くんから、親友だよねって言われて……」
「……あいつそんなこと言ったの?」
「あ、いや、悪い意味じゃないと思うよ。というか、あの表情と言い方は、いい意味だったと思う。でも俺、なんか、思ったより昴流くんのこと好きみたいで……ちょっとだけ、胸がズキってして……」
ということは、昴流はその京の変化を感じ取って、気にしている、というところか。
(まさか京くんが顔に出すとは思えないし、言うわけもないしな。)
昴流は人の表情の変化に敏感だ。
きっとそれで、少しの違和感で気がついてしまったのだろう。
「特別って言われたのは嬉しかったんだけど……これって、恋愛対象にはなってないんだなって思ったら……どんなに同性愛が増えても、認められても、昴流くんは異性が好きかもしれないんだなって思って……昴流くんは気にしない、とは言ってたけど、同性は友人でしかいられないのかもしれないんだって、気がついた。」
「まぁ、確かに昴流は誰かと付き合ったりとかないから、気にしないってだけで好きにならない可能性はないとも言えないけど……」
「思ったよりショック受けてる自分がいて、それにびっくりしてる。そんなに好きになってたんだなって……」
京にとっては初恋。
なにもかも初めての感情だ。
(嫉妬とかが無いのが驚きだけどな。)
亜美香への嫉妬があってもおかしくないのだが、そういうのは感じられない。
「……まあさ、振られたわけでもないんだし、今は恋愛対象になってないってだけで、脈ナシってわけではないと思うんだよね。」
昴流の場合、今までにない友人に嬉しくなっていて、恋愛なんて考えていないだけだ。
「アピール、とまでは行かなくても、恋愛対象にしてもらえるようにチャレンジしよ?多分、昴流は考えたことないだけだし。」
もし、昴流が亜美香の方がいいとか、別の人を好きになってしまったというなら仕方ないが、何もしないで諦めるのももったいない。
それに、やれることはやってみて、それで振られるなら諦めもつく。
「そう、だね。まだ俺は何も行動に移してないし、やれることはやってみるよ。」
「うん、頑張ろ!」
京の表情は元に戻っていて、もう大丈夫そうだった。
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