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~空夜side~
各学年団体競技を終え、色ごとの点数差は拮抗してきた。
「次の競技なんだっけ。」
「騎馬戦じゃない?」
「おっ!昴流でるやん。ほらほら、前行って見よ!!」
「えっ?!」
京の手を引いて、待機席の前のほうに行く。
「っていうか、航くんも俊哉くんも出るんだよね?空夜くんはどっち応援するの?」
「そりゃ俊哉くんだよ!同じクラスだし。」
「まあそっか。」
「2人とも下だよね。上乗るのかしけんだっけ。」
「そうそう。かしけん緊張してたよね。」
クスクス笑う京の言う通り、兼は競技前待機所に行く少し前まで、どうしようどうしようとワタワタしていた。
「お、始まるね。」
騎馬戦の出場者が入場してきて、まずは女子の騎馬戦が始まる。
「いやぁ、これまずいね。」
「青色負けてるね。」
4色あるが、女子の騎馬戦は青色が最下位。
「男子が1位取らないと、赤との点数差きつくなりそう。」
「確かに……」
「昴流たちがんばれよー。」
騎馬が組まれ、男子の騎馬戦が始まる。
「おぉぉぉぉぉ!行け行け!!」
「あ、いい感じ!!」
B組は3年生の青と赤が戦っているところに入り込み、兼が赤の騎手の死角からハチマキをとった。
「おお!あれも取れそう。」
続いて黄色と赤が戦っているところに入り込み、黄色を取る。そのまま赤と組みあいになった。
「がんばれ!!取れるぞ!!」
「うわぁ、騎馬がきつそう!!村田くんのほうが崩れそう……」
騎馬が押し合いになっていて、一番前にいる嘉人がかなり押されている。その結果バランスが崩れて倒されそうだ。
「あ、取った!!」
兼がハチマキを取り、そこで昴流のほうに体重を移動させてなんとか持ちこたえる。
しかし後ろから赤の騎馬が迫っている。
「あっ、野田くんたちのところじゃない?」
ちょうど組みあいになった赤の騎馬は2Aものだった。
「押せ押せ!勝てる!!」
互角の戦い、時間は残りわずかのはずだ。
「あ!!」
兼の後ろから、別のクラスの騎馬が迫り、ハチマキを取られる。
その場で騎馬を崩したところで、終了の合図がなった。
「あー!惜しい!!」
「でも青かなり残ってない?」
京の言う通り、パッと見た感じでは青が一番多いようだ。
集計があって、結果発表。
「ただいまの試合、1位は青組。」
「やったー!!」
「よかった!!」
「なんか昴流たちめちゃくちゃ悔しそうだけど、よくやったよね!」
「うんうん!先輩たちの手伝いいったところとか、完璧だったもんね!」
待っているクラスメイトたちのほうが興奮している。
出場者たちが退場し、こちらに戻ってきた。
(あれ?)
隣はA組の待機場所。ふとそちらに目をやった。
「航!ケガしてる!!」
誰も何も言わないので、心配になって思わず声を掛けにいった。
「えっ?あぁ!大丈夫だよ、ちょっと擦りむいただけだし。」
「よくないよ!血出てるし。一回洗いに行こう?」
ケガをしている足は砂で少し汚れている。
「歩くのは痛くない?」
「平気だよ。」
「じゃあ行こう。俺夏目先生に絆創膏だけもらってくる。」
救護所には先ほど、熱中症気味になってしまった生徒が運ばれていた。洗ってみてひどくなければ、夏目の手を煩わせることもないだろう。
「あ、ありがとう。」
航と2人で待機所を離れる。
水道で砂を洗い流すと、傷はそれほど深くなかった。
「救護所近いから俺も行くよ。」
「大丈夫?」
「うん。心配してくれてありがとう。」
航はどこか嬉しそうな顔をしていた。
「夏目先生。」
「うん?どうかした?」
「さっきの騎馬戦で、野田くんが足を擦りむいてしまって……少し血が出てるので、絆創膏をもらいたいんですけど……」
「1回見せてもらおうかな。」
夏目がそう言ったので、少し離れたところに座っていた航を呼ぶ。
「うん、そうだね……ガーゼがいるほどの範囲じゃないかな。」
「夏目先生!!」
「うーん、ごめんね、消毒だけするね。血が止まらなかったらまた後で来てくれる?」
「わかりました。」
すぐ呼ばれてしまった夏目が申し訳なさそうにそういって、消毒してくれる。そのあとで大きめの絆創膏をくれた。
「貼ろうか?」
苦戦している航の様子を見て、空夜はそう声をかけた。
「ごめん、お願いしていい?」
「うん。」
航から絆創膏を受けとり、丁寧に貼る。
「できたよ。」
「ありがとう。」
顔をあげると、航と目が合う。
鈍感な空夜にだってわかるくらい、その瞳には好意が宿っていた。
「くーちゃん?」
固まっていると、航が不思議そうに首を傾げた。
「あ、えっと、もどろっか。」
「?うん。」
だれかに好かれるというのは、こんなにむずむずするものなんだろうか。
この不思議な感じをどうしたらいいのかわからなくて、空夜はうつむいた。
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