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〔 雪 side 〕
全て 、 包み隠さず話した 。
生まれた時から両親に虐待されていた事 、 父親に身体を開いていた事 、 大学では虐められている事 、 今日が誕生日である事 、 居場所がない事 。
僕が話している間 、 雅さんは何も言わずに話を聞いて 、 うんうんって頷いてくれた 。
話し終えた僕の心はスッキリ 。
「 なるほど 。 よく我慢していたね 、 こんなのは二十歳の子供が背負える事じゃない 。 話してくれてありがとう 。 」
いつでも僕の欲しい言葉をくれるこの人に 、 僕の方こそ感謝したいのに 。 何でだろう 、 言葉が出ない 。
頬を滑る涙に気付いたのは 、 雅さんの表情が泣きそうに歪んだから 。
何でそんな顔するのって頬を撫でようとしたら 、 その手に水滴が落ちて 。 嗚呼 、 泣いていたのは僕かって 。
喋れなかったのは 、 泣いていたからなんだなって気付いた 。
「 いっぱい泣いて 、 いっぱい寝なさい 。 少しは心も楽になるから 。 」
僕の隣に腰掛けた雅さんに抱き締められて 、 背中を撫でられる 。 あ 、 いい匂い 。
求めていたのは 、 この温もりだったんだ 。
誰かに認められて 、 誰かに抱き締められたかった 。
こんな風に 。
僕が眠るまで 、 雅さんはずっと抱き締めてくれていた 。
「 やっと捕まえたよ 、 雪 。 」
耳元に囁かれたその言葉の意味を 、 知る日が来るのだろうか 。
起きてまず目に入ったのは 、 綺麗な寝顔 。
幼さの残ったその顔に見惚れて 、 暫く動けなかった 。
カーテンの隙間から覗く朝日に照らされた黒髪に指を通すと 、 身動ぎせずに瞼を開けた雅さん 。
「 ぁ … おはよう 、 ございます 。 」
少し恥ずかしさは残るけど 、 昨日の失態を挽回するようにしっかりと挨拶をする 。 声は震えたけど 。
「 おはよ 、 雪くん 。 」
そんな僕にふっと笑って 、 掠れた声で呟いた 。 寝起きの破壊力って凄い 。
同じベッドに寝てたのかな 、 と一人で部屋を見回していると雅さんは起き上がって扉の方へ向かう 。
「 おいで 、 朝ご飯にしよう 。 」
僕に手を差し伸べると 、 まだ眠そうな顔で笑顔を浮かべた 。 後ろ髪に寝癖が付いていて 、 少しギャップ萌え 。
その手を握って後ろを歩き 、 リビングに向かえば昨日と同じ風景 。
ソファで待つように言われればちょこんと座り 、 雅さんのエプロン姿をぼ〜っと見つめた 。
かっこいいな 、 料理も出来て優しくて 。
彼女なんて一人や二人だけじゃないだろうな 。
なんか 、 嫌だな 。
この気持ちの名前 、 知ってるよ 。
知ってるけど 、 知らないフリした方が良いってことも 。
「 ご飯できたよ 、 簡単なものだけど 。 」
今はこの人に甘えていよう 。
心の中でひっそりと呟き 、 雅さんの元へ向かった 。
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