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〔 雪 side 〕
どうやって家に帰ったのか 、 よく覚えていない 。
気付いたらリビングの真ん中に崩れ落ちるように座っていた 。
雅さんが帰ってくるまでにここを出て行かなければ 、 何を言われるか分からない 。
これ以上 、 嫌われたくない 。
荷物を纏めたいのに足に力が入らず 、 ただ壁を眺めるだけ 。
「 これから 、 どうしよう … 」
家も無ければお金も無い 、 仕事も無ければ頼れる人もいない 。 ここを出て行ってどう生活すれば良いだろう 。
… いや 、 生活なんか必要ないじゃないか 。
何も持たずに身を投げ出す 。
雅さんに捨てられた後の結末はこれしかない 。
ここから歩いて行こう 。
お金も車も持っていない僕にはこれしかないんだから 。
雅さんに貰った合鍵を片手に 、 申し訳程度のメモを残した 。
『
出張 お疲れ様です
体調には 気を付けてくださいね
今まで ありがとうございました
これからもずっと 大好きです
雪
』
ボールペンで書いたから文字が涙で滲んだけど 、 何度も同じことを書くのは辛すぎてそのままにした 。
大好き 、 なんて書かない方が良かったかも 。
最後にもう入ることもない寝室やリビングを眺めて 、 お別れをした 。
「 …… さよなら 、 雅さん 。 」
お世話になったこの家に深々とお辞儀をして 、 ドアノブに手を掛ける 。
震えていることには気付かないフリをする事にした 。
合鍵で鍵を閉めて 、 ポストへ入れる 。
本当に帰ってくることは無いんだ 。
涙が僕の視界を奪う 。
さっきまで雅さんの声が聞けて幸せだったのにな 。
薄着のままで来ちゃったから寒くて仕方ない 。
でも戻ることは出来ないし 、 どうせ生きていく事は無いんだから必要ないよね 。
腕を組んで幸せそうなカップルとすれ違う度 、 酷い目眩を覚えた 。
あれから何時間経っただろう 。
半年前に雅さんと出会った場所に辿り着くと 、 かじかんだ手で溢れる涙を拭った 。
辛い事の方が多かったけど 、 幸せな思い出を作ってくれた雅さんが大好きだった 。
雅さんを幸せにするのは僕であって欲しかったけどそれも叶わないから 、 せめて貴方との思い出の中で消えさせてください 。
来世は可愛い女の子に生まれて 、 結婚して子供も産んで 、 幸せな家庭を築きたいな 。
それが雅さんであればそれ以上の幸せはないよね 。
人の邪魔にならないよう道の端っこに座って 、 震える身体を自分で抱き締めた 。
ガタガタと鳴る歯を食いしばり 、 意識が失うその時を待つ 。
雅さん 、 今頃何してるかな 。
ちゃんと美味しいご飯食べて 、 ふかふかのお布団で寝てる?
ねぇ 、 雅さん 。
大好きだよ 。
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