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〔 雪 side 〕
ふわふわと意識が浮上していく 。
どこか懐かしいような匂いと 、 低く甘い声 。
ボヤっとした視界で捉えたのは 、 真っ白な天井と真っ白に光る蛍光灯 。
目がチカチカして 、 何だか生きているみたい 。
ー生きて 、 る?
掌には冷たいシーツの感覚 、 身体を預けるのは硬くもなく柔らかくもないベッド 。 身につけている洋服は病院着だろうか 。
とうしてこんな所にいるのだろう 。
雅さんに捨てられてどうしようもなかった僕は 、 身を投げた筈なのに 。
「 あ 、 起きたね 。 身体は大丈夫かい? 」
一つ一つの記憶を丁寧に思い出していた僕は 、 視界の中にヌッと現れたイケメンに声も上げず驚いた 。
「 !!! 」
「 ごめんごめん 、 驚かせちゃったね 。 」
短髪黒髪で笑うと笑窪ができる目の前の人が 、 人懐っこい笑顔を浮かべて僕を見下ろす 。
いかにも好青年って感じで 、 清潔感に溢れてる 。
目が合うとキュッと瞳を細めて笑ってくれた 。
動物に例えるならゴールデンレトリバー 。
「 …… 大丈夫 、 です 。 あの 、 貴方は? 」
現状を理解出来ていない僕は 、 目の前のイケメンさんに声を掛けた 。
僕の質問に再び微笑み 、 イケメンさんはベッド横のパイプ椅子に腰掛けて身を乗り出す 。
この人 、 人との距離感が近いんだろうな 。
「 俺は原田詩音(はらだ しおん) 、 道端で凍え死にそうだった君を保護した大学生だよ 。 」
そう言った原田さんは 、 学生証を取り出して僕に見せてくれた 。
ちゃんと信用させてくれるなんて 、 すごく良い人なんだろうな 。 でも 、 その優しさは僕にとって毒なんだよ 。
だって今の僕は死にたくて仕方ないんだもん 。
「 ありがとう … ございます 。 」
全く思ってもない言葉を声に出すって 、 しんどいな 。
特に相手が優しさな人だから 、 良心が傷む 。
「 はは 、 思ってなさそ〜 。 」
分かるなら言わないでよ 。
案外 、 この人は意地悪かもしれない 。
愛想の良い笑顔を振りまく人も苦手だけど 、 意地悪に人を揶揄う人も苦手 。
助けて貰った有り難さを感じない僕は 、 ふいっと窓の外に目を向けた 。
「 雪くんは二日間も眠ってたんだよ 。 今はお昼時だね 、 お腹は空いてる? 」
「 いえ … 」
グイグイ話しかけて来る原田さんは 、 少し子供っぽい 。
笑った時の目元が雅さんに似ている 。
帰って来てるのかな 。
今日が三日目だし 、 そろそろ空港に着いてるかも 。
「 あ 、 そうだ 。 昨日のお昼頃に君の携帯が鳴ってたよ 。 雅さん 、 って書いてあったけど … 友人? 」
「 …… え? 」
「 そのままにしといたから 、 履歴が残ってるはず 。 」
はい 、 と手渡された携帯 。
その待受画面に表示されているのは 、 雅さんの寝顔と何件にも溜まった通知 。
全部 、 あの人からだ 。
『 雪 、 どこに居るんだ 』
『 着信 雅さん 』
『 雪 』
『 会いたい 』
『 着信 雅さん 3件 』
『 帰って来てくれないか 』
『 雪 』
『 着信 雅さん 2件 』
ズラリと並んだ雅さんの言葉は 、 僕を心配しているようにも見える 。
ーどうして?
「 すごい着信の量だな〜 、 もしかして彼氏さん?連絡してあげなよ 、 心配してるんじゃないの? 」
原田さんの言葉に何も言えないまま 、 雅さんの文字を指でなぞった 。
嫌われて出て行けと言われたんだ 、 今更戻れるわけがないよ 。
もう僕の居場所は無いんだから 。
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