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お世話になります
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〔 雪 side 〕
担当医さんには帰っていいと言われた 。
酷い怪我をしたわけでもないし 、 点滴が取れたので当たり前だけど 。
医療費や入院費は原田さんが払った 。
僕が払うと言ったら 、
「 借金でもするつもりなの?これぐらい大丈夫だよ 、 可愛い雪くんの為なら痛くも痒くもないし 。 」
と軽く言われてしまった 。
たしかにお金も家も無いから払えないのは当たり前だけど 、 素直に引き下がれなかった 。 とりあえず領収書と原田さんの電話番号だけ教えて貰い 、 後日きちんと返すことに 。
ー実家に行くしかないな 。
父親に頼めば少しだけでも借りれるかもしれない 。
母親が居ると面倒だけど 、 他人に迷惑かける訳にもいかないんだ 。
今日からは 、 一人で生きていかないと 。
「 ねぇ雪くん 、 俺のバイト先で働かない? 」
荷物を纏めながら今後どうするか 、 と悩んでいた僕に原田さんはまた人懐っこい笑顔で問いかけてきた 。
ー原田さんの 、 バイト先?
「 履歴書とか要らないし 、 割と給料もいい方だよ 。 家は俺の家に来なよ 、 部屋が一つ余ってるんだよね 。 どう?店長 、 いい人だよ 。 」
話を聞けば 、 小さな喫茶店を経営している店長さんと原田さんは昔からの知り合いで 、 お世話になったお返しに人手の足りないお店で働いているらしい 。
原田さんが働いていても人手は不十分で 、 頭を悩ませているんだとか 。
「 雪くんが来てくれれば店長も俺も嬉しいし 、 雪くんは働けてお金も手に入る 。 一石二鳥じゃない? 」
「 でも 、 働いたことなんかないですし邪魔にしかならないんじゃ …… 」
「 大丈夫だよ 、 未経験でも 。 俺も初バイトで迷惑かけたけど 、 今じゃ社員みたいにバリバリ働いてるからさ 。 」
週三だけでも働いてみようよ 、 と念を押されると頷く事しか出来なかった 。
働くことに興味を持ったし 、 このままフラフラし続ける訳にもいかないのだ 。 社会人として自立しなきゃ 。
雅さんには後で電話しよう 。
少しだけでも良いから 、 声が聞きたいな 。
「 えっと … お世話になります? 」
「 なんで疑問形?こちらこそ 、 お世話になります 。 今日から宜しくね 、 雪くん 。 」
「 はい … 原田さん 。 」
お世話になった担当医さんと看護師さんにお礼をして 、 原田さんが乗ってきた車で一緒に家へ向かった 。
白くて丸い 、 小さな自動車は可愛かった 。
原田さんが住むのはセキリュティも安全なマンションで 、 一階に住んでるらしい 。
お邪魔すると玄関には小さな猫ちゃんが居て 、 原田さんの足元でにゃぁと可愛いく鳴いた 。
名前は 「 太郎 」 と言うみたい 。
小さくて白い子猫 。
まだ僕のことを警戒しているみたいで 、 原田さんの後ろを着いて行きながらチラチラと後ろを振り向く 。
「 雪くんの部屋はここね 。 何か足りないものがあれば遠慮なく言って 。 」
「 ありがとうございます … 。 」
ベッドとクローゼット 、 小さなテレビまで備わった部屋はとても綺麗で開放感がある 。
狭くもなく広くもない 、 僕には心地いい広さ 。
ドアの前で突っ立っていると 、 原田さんは僕の背中を押してリビングの方へと案内してくれた 。
太郎くんも小さくにゃあと鳴く 。
「 ここがリビング 、 あっちがキッチン 。 ここが俺の寝室だよ 、 寂しくなったらいつでもおいで 。 」
「 僕 、 そんなに子供じゃありません 。 」
「 はは 、 そっかそっか 。 これは太郎の秘密基地 、 この中で一緒に遊ぶと喜ぶよ 。 」
大きなテントみたいなものに太郎くんと原田さんが入って 、 猫じゃらしで遊び始めた 。
それを外から見守る僕 。
雅さんの隣とは違う居心地の良さに 、 僕は少なからず安心している 。
何とか上手くやっていけそう 。
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