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〔 雪 side 〕
原田さんがお風呂に入ってる間 、 僕は雅さんに電話をかけることにした 。 太郎くんは僕の膝の上に座って 、 ゴロゴロと喉を鳴らしてる 。
スマホを持つ手が震える 。
電話することなんて初めてじゃないのに 、 すごく緊張してるみたいだ 。
何度も見た 、 雅さんの名前 。
「 お願い 、 繋がって 。 」
今の時間なら家で寛いてるはず 。
発信音が鳴り続ける 。
無機質な電子音に 、 緊張から冷や汗が背中を伝った 。
『 ーただいま 、 電話に出ることが出来ません 。 留守番サービスに接続します 。 』
聞き慣れない女の人のアナウンス 。
普段は仕事中でも時間を作って必ず出てくれるはず 。
言いようのない不安が 、 また大きくなる 。
家出した日から二日も経ってるし 、 僕のことなんて忘れたのかもしれない 。 それとも 、 仕事が忙しいだけなのだろうか 。
「 …… 太郎くん 、 僕はどうすれば良いのかな 。 」
僕の膝に前足を置いて見上げる太郎くんは 、 小首を傾げて小さく鳴いた 。
分からない 、 と答えたみたいに 。
いつ電話が掛かってきても対応できるように 、 スマホはズボンのポケットに突っ込んでおく 。
少し心細くなってその場に座り込んでいると 、 明るい声が僕を呼んだ 。
「 彼氏さん 、 出なかったの?メールと着信の数を見ると飛びついて電話に出そうだけど 。 」
お風呂上がりでリビングに顔を出した原田さんは 、 太郎くんの頭をぐりぐりと撫でてから首にタオルをかけて僕の顔を覗き込んだ 。
太郎くんを撫でた優しい手つきで 、 そのまま僕の頭も撫でる 。
「 こらこら 、 泣きそうにならないの 。 大丈夫だよ 、 お風呂入ってるだけだって 。 だから 、 雪くんも入っておいで?」
お兄ちゃんってこんな感じなのかもしれない 。
雅さんに撫でられる感覚とは違うけど 、 少し心地いい 。 言葉も優しいから 、 泣きそうになった僕の心は少しだけ和らいだ 。
原田さんの洋服を借りて 、 お風呂に入ることにした 。
「 シャンプーとかは好きに使ってね 。 入浴剤とかもあるから 、 気に入ったのがあれば入れて 。 」
「 何から何まですみません … 。 」
「 気にしない気にしない 。 ほら 、 早く行っておいで 。 」
グダる僕の背中を押して 、 脱衣場へと連れ込まれる 。
ドアが閉まると 、 太郎くんと原田さんの声が聞こえた 。
今日の夜ご飯について話してるらしい 。
原田さんが一方的に話しかけて 、 太郎くんがミャーミャーと鳴くだけ 。
相手にされてるのかされてないのか 、 2人の関係性はよく分からない 。
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