アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
厚い壁
-
〔 雪 side 〕
部屋に閉じこもって丸一日が経った 。
ベッドもエアコンもない部屋では地面に寝転がるしかなくて 、 身体を震わせながら朝を待つことしかできなかった 。
あれから松田さんと三浦さんは山崎さんに帰るよう伝えて 、 少しの間だけ雅さんと話していたようだ 。
扉越しから話しているような声はしたけど 、 内容までは聞こえなかった 。
どうすれば良いのか分からずに窓を見つめていたら 、 すぐに朝が来た 。
時間が経つのが 、 早いようで遅い 。
「 …… 雪 、 」
廊下から聞こえる 、 雅さんの優しい声 。
その優しさを信じていいのかも 、 今は分からない 。
扉の方に視線を向けると 、 自然と目に入る赤黒く変色した手の甲 。 汚い 、 汚い 。
こんな手で 、 こんな肌で 、 触っちゃいけない 。
息を殺す 。
起きていると悟られないように 、 心配をかけないように 。
「 行ってくる 。 帰ったら 、 話がしたい 。 」
足音が遠のいて 、 扉の閉まる音がする 。
出勤の時間なんだ 。
雅さん 、 朝ごはんは食べたのかな 。
お腹すいてないかな 。
こんな時にも雅さんの事ばかりで 、 悔しい 。
でも 、 話ってなんだろう 。
もしかして 、 別れ話?怖いな 、 聞きたくない 。
のそのそと起き上がって 、 殺風景の部屋を見渡した 。
僕にも一人の時間があるだろうからって渡された部屋だったけど 、 使ったことはなかった 。
一人の時間より雅さんといる時間が何より大事だったから 。
足は床が冷たいおかげで手よりは腫れてない 。
昨日よりもしっかり歩けそうだ 。
部屋から出てリビングへ向かうと 、 綺麗に整頓されていた 。
空き缶もお皿もなくて 、 そこにあるのはいつもの部屋 。 掃除した後のような 、 違和感が残る感じ 。
きっと 、 三浦さんや松田さんが片付けてくれたんだ 。
片付けは雅さんが一番できない事だから 。
「 ………… 、 」
情けない 。
火傷なんかで 、 嫉妬なんかで 、 こんなに取り乱して 。
悔しい 。 悔しい 、 悔しい 、 悔しい 。
強くなれない自分が 、 疑いの目ばかり向けてしまう自分が 。 恥ずかしくて仕方ない 。
どうすればいいのか分からない 。
自分が何をしたいのかも 、 全く分からない 。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
32 / 41