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〔 雅 side 〕
帰ってきた瞬間 、 既に違和感ばかりだった 。
半年以上もこの家を見てきて 、 雪を見てきたからこそ思うこと 。
いつもの雪ではない 。
いつもの 、 二人の家じゃない 。
玄関からリビングへ通じる廊下には 、 昨日の洗濯物 。 部屋の扉は全て空きっぱなしで 、 トイレやお風呂は電気が付いている 。
綺麗好きな雪が 、 これを放置するわけがない 。
そもそも 、 こんなに散らかす奴じゃない 。
リビングへ入ると 、 目を疑う光景だった 。
ドサッ 。
手に持っていた鞄や 、 一緒に食べるためのケーキの箱が 、 床に落ちる 。
散らかりっぱなしの服 、 割れた食器 、 ぐちゃぐちゃになった食事 。 俺の家だろうかと疑いたくなるほどの 、 酷い部屋 。
そして散らかった部屋の真ん中には 、 膝を抱えた雪 。
怯えたように身体を震わせて 、 両手は耳を塞いでいる 。
「 …… 雪? 」
初めて見た姿に 、 戸惑いが隠せないでいた 。
俺が知っている雪は泣き虫だけど努力家で 、 花も咲くような笑顔を見せていつでも元気な男だ 。
人一倍 、 愛情に飢えているけれど人間が大好きで 、 気が気じゃなくなるほどに優しい 。
目の前の恋人は 、 違った 。
弱さでできた塊みたいなもので 、 ずっと怯えている 。
「 雪 、 どうしたんだ 。 何があった 、 怪我は? 」
割れた食器を踏まないようにしながら少しずつ近づいていく 。 刺激を与えないように 。
俺が声を掛けると 、 震えていた身体はピタリと止まった 。
そして 、 ゆっくり顔を上げていく 。
「 …… み 、 びさ … 。 」
唇を 、 強く噛んだのだろう 。
赤紫に変色した噛み跡から 、 血が滲んでいる 。
涙が枯れるまで泣いたのかもしれない 。
腫れぼったい瞼と 、 泣き跡が痛々しい 。
俺が 、 ここまで雪を追い込んだのか 。
何より大切にしたいと願った 。
誰より愛してあげたいと思った 。
なのに 、 自暴自棄になるまで追い詰めたんだ 。
転ぶことすら傷を作るから嫌と言っていたのに 、 自分から傷を作る子になってしまった 。
虚ろな瞳を見ていたくなくて 、 壊れ物を扱うかのように抱きしめた 。
「 痛かったよな 、 ごめんな 。 ちゃんと 、 手当しよう 。 傷が残ったら大変だ 。 」
「 ………… このまま 、 」
「 大丈夫 。 大丈夫だから 、 それ以上は言うな 。 」
雪を傷つけたくない 。
これ以上 、 自分を追い詰めたらダメだ 。
ポロポロ涙を流し始めた雪を抱っこして 、 綺麗に掃除された寝室に向かった 。
汚れた服を着替えさせるついでに 、 火傷跡に塗り薬を塗ってから包帯を巻いて 、 唇には表面だけでもと絆創膏を貼った 。
その間 、 雪はジッとしていた 。
「 飯は?朝からなんか食べた? 」
「 ………… 。 」
「 その顔は食べてないな 。 なんか食べれるか? 」
「 ……………… 。 」
「 分かった 、 リビング片付けたら一緒に寝ような 。 」
食べたとしてもすぐに吐いてしまうかもしれない 。
僅かに歪んだ雪の顔が 、 そう言っていた 。
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