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〔 雅 side 〕
明日からよろしくと母さんに伝えて実家を出た 。
両親は泊まっていけとうるさかったが 、 雪の疲労を考えると家に帰るのが一番だ 。
明日から慣れない環境で生活をすることになる 。
あまり気を張る時間が多すぎてもストレスになるだけなのだ 。
雪も早く帰りたそうにそわそわしていた 。
しかし 、 思ったより両親と打ち解けていたことが意外だった 。
俺としては嬉しいかぎりだが 、 無理をしていないだろうか 。 少し心配だ 。
「 雪 、 無理してないか? 」
「 え?? 」
「 いきなり連れてきて 、 明日から母さんが来るなんて急すぎただろ 。 それに …… 、 」
「 大丈夫 、 です 。 嬉しかったから … 。 」
心から笑う雪 。
その笑顔があまりにも綺麗で 、 運転中だというのに見惚れてしまった 。 ほんとに危ない 。
俺が見てやれない分 、 母さんが雪のことを甘やかしてくれるだろう 。 俺に話せないことも話せるかもしれないし 、 少しでも楽しいと思ってもらえればそれで構わないと思っている 。
週末は二人で過ごせるし 、 嫉妬はしないようにしないとな 。
しかし一つだけ譲れないものがある 。
父親だ 。
普段あまり喋らない父さんが雪に対してはぺちゃくちゃと話していたのだ 。 そんな父さんに雪もニコニコ笑っているし 、 取り残されたように感じて怖くなった 。
なんて言ったら笑われるだろうけど 。
頼むから父さんにはあまり懐きすぎるなよ〜なんて思いながら 、 雪の頭をくしゃっと撫でた 。
「 ??? 」
なぁに?と首を傾げる雪が可愛いくて堪らない 。
帰り道の途中で生活用品店に来た 。
母さんが来るなら食器を増やさなければならない 。 家に置いてある皿と一緒のものをカゴに入れていく 。
ふと隣を見ると 、 色違いのマグカップを手に取る雪がいた 。
「 雪 、 それ欲しいのか? 」
「 あ … えっと 、 お揃いしたくて …… 。 」
黒と紺色のマグカップ 。
俺は黒で 、 雪は紺色を使うんだろう 。
そっと元の場所に戻す雪の腕を掴んで 、 むりやりカゴに入れた 。 素直に言ってくれたことが嬉しくて 、 俺の方が欲しくてたまらなくなる 。
「 お揃い 、 しよう 。 食器も揃えるか? 」
「 い 、 いいの? 」
「 ほら 、 欲しいもの持っておいで 。 」
ポンッと背中を押して促すと 、 食器コーナーをぱたぱたと小走りで回る雪 。
あれがいいこれがいいと選ぶ雪の表情はすごく明るくて 、 見ているこっちも笑顔になってしまう 。
可愛いな 、 ほんと 。
こんなことならもっと早く言えば良かった 。
俺たちのお揃いは薬指に光る指輪だけだ 。
必ず付けてくれるそれは今も雪の指で光っている 。 外している所は見たことがない 。
「 雅さん … 、 」
「 ん?いっぱい選んだなぁ 、 しかもマグカップと一緒の色にしたんだな 。 」
「 黒は雅さん 、 紺色は僕 。 」
一つ一つ指をさして教えてくれる 。
箸やスプーン 、 スープ皿やコースターまでお揃いにしたらしい 。
重くなったカゴを持って 、 レジへ向かう 。
その間 、 雪はずっとカゴの中を見ていた 。
どんだけ嬉しいんだよ 。
キラキラした瞳に思わず苦笑してしまう 。
新聞紙に食器を包みながら 、 横でそわそわしている雪に目を向けた 。
ちっぽけな幸せだと笑われても 、 俺にはこれ以上ないほど幸せなんだよ 。
雪のためなら世界を救うヒーローにでもなってやる 。
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