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学校一の陰キャが学校一の不良に「諸事情あって」ベタ惚れされた話
第8話 熱
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「あの、大丈夫ですか!?」
そうだ、男たちに囲まれていた恐らく同じ学校の生徒。
声が聞こえたのがきっかけでここに来たけど、今はなんの動きもないということは気絶でもさせられたのかもしれない。
慌てて駆け寄ろうとして、ピタリと足を止める。
「うっ。何だこの匂い……」
さっきまでは恐怖心のせいで気づかなかったけど、なんだか甘い香りが充満している。
少し香る程度なら良い香りなのだろうけど、つけすぎた香水のように鼻の奥にまとわりついて頭がクラクラとする。
まさか……怪しい薬?なら急いで外に出ないと。
そう思って、ようやく倒れて動かないその生徒の顔を見る。
「………………え」
想像していたよりも艶のある金髪。生々しい傷はあるものの白く陶器のような白い肌に、影を落とす長いまつ毛。
倒れていたその人は、間違いない。
あの天宮 優だった。
「あ……まみ、や?」
「うぅ……くそ、あいつら……」
どうやら大人しくなっていたものの意識はあったようで、天宮はうわ言のように呟いた。
頬は紅潮し、額には軽く汗も流れている。どう見ても普通ではない。
「あの、大丈夫?とりあえず、ここを出よう……」
とにかくこの変な匂いのする建物から出なければ。刺激しないようそっと肩を抱き、なんとかその場に座らせる。
喧嘩で負け無しという割には細身で、なんだか罪悪感のようなものが込み上げる。
「……う、ぁ?」
そこでようやく、天宮がきつく閉じていた目を開けた。そして、あの時殺意を込めていた蒼い瞳をこちらに向ける。
「……」
暫しの沈黙。そして。
「……お前が、俺を助けてくれたの?」
「へ?あ、まあ……」
普段からは考えられないような柔らかく甘い、溶けるような声。
そして向けられる、熱のこもった眼差し。
……あれ?天宮ってこんなキャラだったっけ?
「……ありがとう。佐山……」
「え、俺の名前……」
「知ってるよ。だって……」
肩に回した俺の手に、天宮の手が触れる。
熱い。
そして触れられた瞬間、熱が伝染したように俺の体にもどっと熱が回る。
天宮は少しだけ言いづらそうに目線を下げてから、もう一度こちらを見た。
その表情はまるで、まるで────
「俺、お前のこと好きだから」
恋する乙女の、ような。
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