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学校一の陰キャが学校一の不良に「諸事情あって」ベタ惚れされた話
第22話 もしかしなくても
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「あの、これは……?」
尋ねると、天宮は視線をさまよわせた。
その態度に少し嫌な予感がしたけど、とりあえず話を聞く。
「……昨日、俺を助けた時。置いていったやつ」
「え?あ……」
言われてから改めて中身を確認する。
どうやら、これは俺が咄嗟のことであの場に置いてきてしまった買い物袋らしい。そう言われると、確かに中身も同じだ。
いや、なんかちょっと違うような……?
「卵、割れてて他の日用品も汚れてたから。同じようなもん買い直した。行った店が違うから違うもんもあるけど」
「…………天宮が?買い直してくれたの?」
「それ置いてったの、俺を助けたせいだろ?だから……」
「…………」
照れたようにぽりぽりと頬をかく姿は、なんだか本当に恋する乙女のようで。
今朝は感じなかった昨日のあの昂りが、熱が、蘇ってくるような気がした。
……ダメだ。落ち着け。
あれはただの一時の感情に過ぎなくて、そんなはずはない。
天宮が……可愛い、とか。うん。
相手は学校一の不良であることを忘れてはならない。
……けどそれとこれとは別。だからといって、この気持ちを無下にするようなことはできない。
「…………ありがとう」
「……!」
心からの、お礼を告げる。
まだ出会ってまもないから当然ではあるけど、初めて天宮の前で自然と笑えた気がした。
天宮はそんな俺を見てぱっと下を向くと、何やらブツブツ呟き始めた。
「駄目だ……もう、我慢できない」
「え……」
とん、と天宮が俺の胸板に手を置く。
熱い。触れられた部分から熱が広がっていく感覚がする。
待てよ?これ、まずくない?もしかしなくても……。
「うわ、ちょ、天宮!?」
気づいた時には遅かった。軽く力を込められて、油断していた俺はされるがままにその場に尻餅をついた。
すでに周りには誰もいなかったのでそこは問題ないけど、結構痛い。
っていやいや、今はそんなこと考えてる場合じゃない。どうするのこれ?
俺の事を半分押し倒した天宮は、ぎゅっと胸元の制服を握りしめたまま動かない。
「あの…………天宮」
呼びかけると、ようやくゆっくりと顔を上げた。
その目は潤んでいて、頬は紅潮していて……
────ああ、やっぱり治っていなかったみたいだ。
「優くんって呼んで……春くん」
天宮はそう言うと、そっと俺の唇にキスをした。
……キス、ヲ、シタ?
「?%&##%?%?#*+:-:!?」
突然のことに声にならない声が出る。
今、俺キスされた!?生まれてこの方彼女なんていた事もなくて、手すらまともに繋いだことのないこの俺が、あの天宮に!?
「な……ななななななななななななな…………」
「俺、この気持ちを偽物って言われて……諦めようとしたんだ。けど、やっぱり無理……好きだよ、春くん」
何も言えずにいると、天宮はそう言って照れくさそうに笑った。
ああ……どうしよう。
その笑顔を見て、不覚にも俺は……
心から可愛いなあ、なんて。思ってしまったのであった。
「…………」
「…………春くん?春くん!?」
そこから、俺の意識は暗闇に包まれた。
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