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学校一の陰キャが学校一の不良に「諸事情あって」ベタ惚れされた話
第26話 夢じゃない
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「はぁ……」
今日何度目かのため息をつく。
翌日、何事も無かったかのように学校が始まり、そしてあっという間に3限目を迎えた。
昨日のことが、未だに夢か何かだと思える。けど多分、現実なのだ。確証はないけど。
とは言っても、今日は天宮に会えていない。元々学校に来たり授業を受けたりすることがほとんどないらしいから、当然と言えば当然だけど。
なんとなく昨日のようにすぐに話しかけにきたりするのかと思っていたから、少し拍子抜けしてしまった。
いや別に、期待とかしているわけじゃないけど……。
「はぁ……」
「お前……ため息つきすぎなんだよ。ちょっとは自重しろ」
後ろから沢田のイラついたような声がする。
危ない危ない。昨日の今日ということもあり特に目立った事はされていないけど、あまり刺激してまたいつもの日常に早々逆戻りは嫌だ。
なんとか口を抑える。
「……やっぱ、天宮となんかあったワケ?」
「……」
そう問いかける沢田の口調は、からかったりいじったりする時のものとはどこか違っていた。
まるでそう、誰かを心配するような────
「そりゃあもう、色々あったよな?春くん」
不意に、すぐ傍から声が聞こえた。
すぐ傍というのはつまりは窓の外のことで、慌てて廊下の方を見れば案の定天宮が立っていた。
「あ……天宮」
沢田は驚きのあまり固まってしまっている。その驚きがここに天宮がいることへのものなのか、何やらふわふわした彼の態度に対するものなのかは分からない。
「えぇっと……優ちゃん?どうしたの?今授業中なんだけど……」
「今学校来たんだ、春くんに挨拶しとこうと思って」
「あ〜ははは……」
今来たって、もう3限目なんだけど……やっぱり俺に惚れても不良は不良のようだ。その根本自体は変わっていないというのは、そこまで薬が奥深くまで作用しているわけじゃないと安心するべきなのだろうか。
「とりあえず今授業中だから、また後でな?」
横目で様子を確認すれば、授業をしていた数学教師は固まってしまっている。一般生徒には厳しく言うくせに天宮のような不良には何も言えない典型的な教師だから仕方ないだろう。
クラスメイトも昨日の今日ということもあり天宮の態度含め驚きは少ないものの、やはりまだ慣れないようで言葉を失っている。
「え〜、俺もここで授業受ける」
その一言に、誰かがひっと声を漏らした。
同じ空間で授業を受けるとかそれこそ何されるか分からない、恐怖も募るわけだ。
「そ、それは無理かな……」
やんわり断ると、天宮はむすっと頬を膨らませた。それからクラスを見渡して、
「なんで?別に他の人たちも……文句、ないよなあ?」
「ひいいいっ!!」
忘れていた殺気のこもった表情。俺に向けられることがもうほとんどなくて忘れてたけど彼はこういう奴だった。
どう考えても文句はあるのだけど、その言葉で黙らせたようだ。
いや、でもほんとにここで授業受けられたらまずい。授業どころじゃない。数学教師ももう半泣きだ。
「優ちゃん!その……そうだ!お昼ご飯一緒に食べない!?」
「……」
なんとかこの場を収めようと、ついそんなことを口走ってしまった。
天宮は目をぱちぱちと瞬かせて、それからぱぁっと笑顔になった。
「ほ……ほんとに!?良いの!?」
「も、勿論。ただし、ちゃんと自分の教室で授業受けてくれたらな!」
「分かった!じゃあまた後で!」
口から勝手に出た言葉だけどあっさりうまくいったようだ。元々俺は一緒に食べてる人なんていないし、ひとまずはこれでいいだろう。
大人しく手を振っていると、
「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待てよ!」
「え!?」
そう声を荒らげたのは、今の今まで大人しくしていた沢田だった。
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